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石破茂首相は7日、アメリカのトランプ大統領とホワイトハウスで会談した。トランプ氏が日本に関税を課す可能性に言及する一方、石破氏は一貫してトランプ氏に追従的な態度を示し、トランプ氏を「誠実で力強い」と持ち上げた。米専門家はニューヨーク・タイムズ紙の記事で、海外首脳陣が取りがちな「愚かな試み」だと指摘している。
◆トランプ氏を「誠実で力強い」と持ち上げる
米ワシントンポスト紙(2月7日)によると、トランプ大統領は、対象国は指定せず、「相互的な関税を導入する」と述べ、「来週初めに正式発表する」と明らかにした。また、バイデン前政権が安全保障上の理由から認めなかった日本製鉄による米国製鉄の買収について、トランプ氏は引き続き完全買収に反対の立場を示している。ただし、出資による部分的な投資については容認する考えを示した。
これに対し石破氏は、一貫して柔和なトーンを維持した。ニューヨーク・タイムズ紙(2月7日)は、石破首相がトランプ大統領を「テレビでは恐ろしく見えたが、実際にお会いすると誠実で力強い方だった」と持ち上げたと報じている。石破氏は発言について「世界平和のため」であり「追従ではない」と説明した。
一連の石破氏の対応にトランプ氏は笑顔を見せている。記者から関税問題に関する質問が寄せられた際、「仮定の質問にはお答えしかねる……」とかわした石破氏の慎重な回答を「とても良い」と評価する一幕も見られた。
◆お世辞戦略は「愚かな試み」との指摘
英BBC(2月9日)は、日本の今後の対米戦略について分析している。同局は神田外語大学のジェフリー・ホール講師の見解として、「日本は可能な限りトランプ氏との対立を避け、『イエスと言う友人』になるだろう」との見方を伝えている。対立を避け、経済協力を重視する姿勢を維持するとの見方だ。
一方で元米外交官のエリザベス・シャケルフォード氏は、ニューヨーク・タイムズ紙の取材に対し、「トランプ氏は自分に都合が良い時だけ人を利用する。追従は愚かな試みだ」と指摘する。
記事によると各国首脳も過去にトランプ大統領への歩み寄りを示しているが、いずれも期待通りの成果を上げていない。カナダのトルドー首相は関税を課され、フランスのマクロン大統領は北大西洋条約機構(NATO)の方針を巡って対立し、イスラエルのネタニヤフ首相は2020年の大統領選でバイデン氏の勝利を祝福したことで関係が冷え込んだ。
記事は石破氏に限らず現在も海外首脳陣が、トランプ氏に取り入るため「お世辞の技術を駆使」していると指摘する。
◆ゴルフ外交を展開できず
お世辞戦略は、失敗が許されない石破氏の厳しい立場を物語る。BBCは、少数与党という不安定な立場にある石破氏にとって、今回のアメリカ訪問での外交的成果が政権運営上も重要だったと指摘している。
別の要因としてワシントン・ポスト紙は、石破氏の個人的な弱みを分析している。安倍元首相が外交手腕とゴルフを通じてトランプ氏と良好な関係を築いていたのに対し、石破氏にはそうした個人的な関係構築の手段が限られているとの指摘だ。
各論での衝突を避け、初の会談をまずは和やかなムードで終わらせた石破氏。トランプ氏との今後の関係の在り方が注目される。