ピアノの練習やゲーム、映画鑑賞を思い切り楽しみたいけれど、音で周囲に迷惑をかけないか気になる…そんな心配をお持ちではないですか?
リフォームで防音室をつくれば、気兼ねなく楽器の練習ができたり趣味を楽しめるだけでなく、家族にも快適な環境で過ごしてもらうことができるというメリットも。
この記事では、どんな工事が必要か、費用はどのくらいかなど、防音室リフォームに関する基礎知識や施工内容、施工事例をご紹介します。
ぜひ、音を気にせず楽しめる理想の空間づくりの参考にしてください。
1.防音室リフォームの方法と費用相場
防音室へリフォームするには、大きく3つの方法があります。
ひとつずつ詳しく解説していきます。
①部屋の中に組み立て式の防音室を設置する
防音室を手軽につくりたい方や費用を抑えながらも防音効果の高い防音室をつくりたい方には、市販されているユニットタイプの防音室を設置する方法がおすすめです。
大がかりな工事は不要、組み立て式で既存の住宅の室内に置くことができます。部屋に防音のブースを備え付けるイメージです。
比較的費用が抑えられ、また移設が可能なので引っ越す際に持って行けるというメリットがあります。
一方で、既製品のため広さや形の調整ができない、遮音性能のコントロールができないなどがデメリットです。
組み立て式の防音室には、JISが定めた防音性能が保証されている「普通防音室」と保証されていない「簡易防音室」の2種類があります。
サイズは0.8畳から4.3畳まであり、部屋の広さや使用用途によって選ぶことができます。それぞれの、サイズに応じた金額の目安は以下の通りです。
8〜33万円 | 55〜170万円 | 95〜265万円 | 140〜300万円 |
組立サービスなし | 4.3万円〜 | 6.7〜20万円 |
この他に、運送料(およそ5万円~、地域により異なる)がかかります。また、防音室の広さによっては別途エアコン工事などが必要な場合もあるので、組み立ての際には確認をしてみてください。
普通防音室は基本的には業者による組み立てになり、簡易防音室は自分で組み立てることになります。いずれも半日〜1日で終わることがほとんどですので、比較的簡単に導入できると考えてよいでしょう。
②部屋全体(壁・窓・床・天井・ドア)を防音室に変える
本格的な防音室で趣味の楽器を思いっきり演奏したい、自宅で映画館のような臨場感を楽しみたいという方には、部屋全体を防音室にリフォームする方法がおすすめです。
この方法では、壁・窓・床・天井・ドアなどの部屋全体を防音仕様に変える工事を行います。
また、同じく一室全体を防音室にする方法として、部屋の中にもう一つの部屋をつくる 「ボックスインボックス」という方法もあります。
この方法は、振動が他の部屋に伝わらないよう、もとの部屋から浮かせた状態で内側に新しい部屋をつくり、防振材を用いて防音するしくみです。

ボックスインボックス工法のイメージ
この工法はコンサートホールなどでも採用されており、高い防音性を実現できるのが特徴です。
ただし、仕上がりの広さは狭くなり、ボックスインボックスで6畳の部屋にグランドピアノ用の防音室をつくった場合、その内寸は約4畳大になります。
今回は、6畳1室を防音室としてリフォームする場合の費用と工事のポイントを、ピアノ、ドラム、ホームシアターの用途別に解説します。
(1)ピアノを弾くための防音室
ピアノの練習や演奏を気兼ねなく行うための防音室の費用目安は、以下の通りです。
180~400万円 |
戸建てならD-60以上 マンションならD-75以上 |
ピアノを気兼ねなく弾くための防音室リフォームでは、音が室外に漏れないように壁や天井をグラスウールや石膏ボードなどの防音材を用いて厚くしたり、扉や窓なども防音仕様にする必要があります。
また、ペダルを踏む際の振動を軽減するために、床材には防音ゴムがついているものを使用しましょう。
(2)ドラムを演奏するための防音室
ドラム演奏を気兼ねなく行うために必要な防音室のリフォーム費用の目安は以下の通りです。
ドラム演奏は他の楽器に比べて発する振動や衝撃音が大きいため、より防音性能を高める必要があり、その分費用が高くなります。
200~550万円 |
D-65~70 |
ドラムは残響が少なく音がクリアに聞こえる環境が理想です。そのためには、壁や天井には高性能な遮音材や吸音パネルを多層的に入れる必要があります。
他にも、ドラムを叩くとピアノ以上に床や壁が振動するので、壁や床には防振施工も必要となるでしょう。
ただし、ドラム用の防音室リフォームでは、設置したい場所によっては、耐荷重や仕上りの天井高などに制限があり、そもそも設置が難しいケースもあるため注意が必要です。
また、マンションではわずかな音漏れであっても近隣からの苦情につながる恐れがあるため、こちらで紹介した内容以上の防音性能が求められる場合があります。
(3)ホームシアターのための防音室
ホームシアターのための防音室リフォームの費用目安は、以下の通りです。
150~300万円 |
D-60~70 |
ホームシアター用の防音室リフォームでは、壁や床、天井、ドアや窓などを防音仕様に施工します。
他にも、ホームシアター用のスピーカーやプロジェクター、スクリーン、電源配線なども考慮に入れる必要があるでしょう。
より快適に映画鑑賞を楽しめる空間にするには、音の響きを保つ環境を作ることも大切です。
外への音漏れ対策で吸音に力を入れすぎると、室内の音の響きがなくなり、映画特有の臨場感やダイナミックな音を感じられなくなることも。
自分の理想の音や鑑賞空間を実現するためにも、ホームシアター用の防音室リフォームでは音響も考慮しておきましょう。
③増築して防音室をつくる
戸建て住宅にお住まいで、既存の部屋とは別に用途に応じた防音室をつくりたいとお考えの方には、増築でつくる防音室がおすすめです。
増築して防音室をつくった場合の用途・広さ別の費用相場は、以下のとおりです。
250万円~ | 260万円~ | 280万円~ |
不可 | 350万円~ | 380万円~ |
210万円~ | 220万円~ | 240万円~ |
増築であれば、構造体自体に用途に応じた適切な遮音性を持たせることができ、音漏れや外部からの騒音を高い確率で防ぐことができます。
専用の出入り口や空調設備についても新たに備えることができるので、快適で便利な防音室を実現することができるでしょう。
ただし、増築するだけの敷地が確保できるかどうか、建築基準法や自治体の規制に沿って計画できるかどうかなど、注意しなければならない点も多くあります。
詳しくは以下の記事で解説しているので、防音室の増築を考えている方はぜひご覧ください。
防音室を増築する時の注意点は?防音リフォームとの違いや費用も解説
本格的な防音室までは考えていないけれど、今よりも音漏れを軽減したいとお悩みの場合には、部分的に防音工事を行う方法もあります。詳細は以下の記事をご覧ください。
目的別!防音工事・リフォームの費用を分かりやすく解説|見積もり付
(広告の後にも続きます)
2.防音室に大切なのは「遮音」と「吸音」
防音は、「遮音」と「吸音」の2つの方法に分けることができます。

「遮音」は音を跳ね返して遮ること、「吸音」は音が吸収されることを指し、「吸音」は音の響き(音響)に大きく影響します。
①目的に応じた「遮音性能」を考える
防音リフォームでまず考えるのは、遮音のための工事です。
遮る音は、空気を伝わって聞こえる音と固体の振動により伝わる音の2種類があります。
どのくらいの遮音性能が必要かは、防音室の用途によって変わりますが、一般的に以下の指標を参考に遮音性能を判断することが多いです。
表を見て、希望する防音室を実現するにはどこまでの性能が必要か確認してみましょう。
かすかに聞こえる | 通常では聞こえない |
小さく聞こえる | ほとんど聞こえない |
かなり聞こえる | かすかに聞こえる |
曲がはっきりわかる | 小さく聞こえる |
ほとんど聞こえない | かすかに聞こえるが遠くから聞こえる感じ |
小さく聞こえる | 聞こえるが意識することはあまりない |
聞こえる | 小さく聞こえる |
発生音が気になる | 聞こえる |
発生音がかなり気になる | よく聞こえる |
※L値は厚さ150mmのコンクリート床を基準に推定された値です。建物の構造や条件によって、値にバラツキが生じる可能性があります。
②「吸音」を考慮して音響を楽しめる空間にする
音の響きをより楽しむためには、「吸音」もしっかりと考えて工事をしましょう。
防音室に施した吸音材は、音の反射を防いでくれますが、音が吸収され過ぎると、楽器の音や鑑賞する映画の音声に響きがなくなり、伸びやかな音やダイナミックな音が感じられなくなることもあります。
それを防ぐためにも、部屋の大きさに合わせて吸音性の材料と非吸音性の材料とをバランスよく配置し、演奏する楽器の種類や用途に合わせた音響が確保できるプランを計画しましょう。
とはいえ、このバランスを見極めるには防音と音に特化した知識が必要となり、自分で考えるのは簡単ではありません。
そのため、高性能な音響を考慮した防音室リフォームの場合は、実績があり且つ音響に関する知見の深い会社に依頼するのが良いでしょう。