台北を縦に流れる淡水河に沿って伸びるサイクリングロード。台湾は右側通行なので、日本の逆、と意識しながら走ります。
海を目指して3時間の自転車旅。
ペダルを漕ぐ足が重い。あといくつ橋を渡れば海が見えるのだろう。台湾初日になんでこんなことしてるんだっけ、と2時間前の自分を思い返す。
はじめての海外出張となった今回の特集。カメラマンさんより1日早く台北に着いた僕は、翌日から控えている取材の下見を兼ねて、シェアサイクルで街を散策することに。
台湾でシェアサイクルといえば、「YouBike」。街のいたるところにポートが設置されています。アプリでポートの場所や貸出可能な台数を見ることができて、レンタル後は別のポートで自由に返却可能。会員登録には台湾の電話番号が必要ですが、持っていなくてもクレジットカードさえあれば気軽に利用できるのが旅行者に嬉しい。
ホテルに荷物を預け、すぐ近くのポートからサイクリングスタート。本誌でコーヒーのおいしい店を紹介してくれた、陳吟雯(ツェン・インウェン)さんが営むカフェ『TWATUTIA COFFEE & Co.建国北路店』で朝の一杯をいただいたり、本誌で包子の店を教えてくれた、食品ブランドディレクターの顧瑋(グー・ウェイ)さんがおすすめする素食(ベジタリアン)の店『永青素食點心坊』でもちもちの野菜餃子を食べたりと、ここまでは完璧。
後日伺った際に注文したシナモンロールも、スパイシーな香りとバターの甘みが絶妙のバランスでとてもおいしかったのでぜひ。
野菜蒸し餃子95元。しいたけや雪菜がたっぷり詰まっていて、甘めの醤油ダレと相性抜群。
早朝のフライトに寝ぼけていた身体がすっかり目覚め、出発前に友人から「川沿いの道が気持ちいい」と聞いていた、淡水河へ。堤防をくぐると、広々としたサイクリングロード。青空の下、優雅に流れる淡水河の景色を眺めながら、のんびりと自転車を漕ぎます。まだ最高。
車やバイクの喧騒から離れ、ゆったりとした時間が流れていました。
初の仕事での海外に緊張していた心がほぐれ、ふと、このまま北に進み続けたら海にたどり着けるのではないかと。Google mapで調べてみると、港町の八里(ルビ入れます)まで約1時間。行けるところまで行ってみようと、ペダルを踏む足に力を込めました。ここが運命の分かれ道!
全然3時間かかったし、調子に乗って地図に乗っていない道を走ったら迷子になったりして、後で確認したら18kmも走ってました。翌日合流したコーディネーターさんに今回のルートを伝えたときの、信じられないという顔が忘れられません。
それでも、段々と変わっていく街の雰囲気をグラデーションで体感できたり、なんでもない景色に心を動かされたり、結果的には自分だけの大切な思い出に。以下、旅の参考にはならないかもですが、道のりを写真にてダイジェストでお届けします。
雲の合間から差し込む光が美しくて、思わず撮影。周りには誰もおらず、この風景をひとりじめできたような気持ちに。
淡水河を横断する大きな赤い橋「關渡大橋」。自転車で橋の上を渡る爽快感は格別でした。
南国のムードが漂う「八里左岸公園」。夕日の名所として知られているそう。
淡水河の河口。向こう岸の港町・淡水とつなぐ渡し船も運行していました。
ローカルな飲食店やお土産の店などが集まり、観光客で賑わう「渡船頭老街」。
「渡船頭老街」名物である、『許家花枝(ルビ入れます)』のイカフライ。揚げたてサクサクの衣に包まれた身は、驚くほどやわらか。
なんとかたどり着いたゴールの八里左岸公園。幸い近くにポートがあったので、そこに自転車を返却。これほど乗り捨てのできるシェアサイクルでよかったと思った瞬間はありません。バスと電車でホテルに帰宅し、その夜はぐっすりと眠れました。
台北、台中、台南とローカルの案内人に教わった全164のスポットが登場する、盛りだくさんの台湾特集。自転車に乗って、街の空気を肌で感じながら巡ってみてはいかがでしょうか。
(本誌編集部/出口晴臣)
Editor 出口 晴臣

『&Premium』編集部。本誌とデジタルを担当。HIPHOP、サウナ、カレーが好きです。最近興味があるのは、登山、多肉植物、自転車。

Trip to Taiwan / 台湾でしたいこと。&Premium No. 136
ほんのりと熱気を帯びた台湾の街に降り立つと、風情ある街並みの向こうに見える都会的な高層ビル、家々が連なる静かな路地、走り抜けるオートバイの大群、賑やかな市場や屋台……。さまざまなルーツを持つ人々が培ってきた伝統と、昔ながらの日常の風景や自然、そして次々と生まれる新しいカルチャーを共存させている懐の深さが、台湾の街の魅力です。今号の特集では、気取らない〝ふだんの台湾〞を感じる旅を案内します。台北と台南では、ローカルのみなさんに教えてもらった、早朝の街の楽しみ方やとっておきの食堂、個性的な書店やカフェ、茶芸館や日用品店など、14のテーマで巡る旅を。また、台中の街歩きや、温泉や離島を訪ねる2泊3日の旅プランなども加え、紹介するのは164のスポット。〝いま〞の台湾を感じる旅に、出かけませんか。
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