定年退職後、静かな生活を楽しもうと思った矢先、予期しない出来事が続き、家族との関係に悩みを抱えるシニア世代が増えています。特に、二世帯住宅をはじめとした我が子の家族との同居にはトラブルもつきもののようで……。本記事ではAさんの事例とともに、同居の高齢親が感じる孤独について、社会保険労務士法人エニシアFP代表の三藤桂子氏が解説します。

母に先立たれ父1人では心配だから…

66歳のAさんは定年退職後、夫婦でゆっくり温泉旅行にでも行こうと考えていた矢先、妻が心不全で死去。突然の別れに寂しさを感じていたところ、一人娘からお父さん1人では心配だからと二世帯住宅を提案され、Aさんは嬉しく思い、了承します。

もともとAさんの住宅はのちに娘夫婦にと考えていたため、亡き妻と頑張って夫婦2人には広めの住宅となっていました。リフォームすれば、二世帯住宅として十分な家だったのです。娘夫婦は30代。自身がそうだったように子育てや教育費で大変な時期だろうからと、リフォーム代1,800万円はAさんが退職金も含めた貯蓄から出したためローンもなく、娘夫婦も大喜びです。娘夫婦は共働きでしたが、いままで都内で家賃20万円を支払っていたのです。

娘は、「お互いにWin-Winだね」と新生活をスタートしました。娘夫婦には子どもが1人。小学校入学を機に引っ越してきました。小学校入学時は帰宅時間も早く、共働き夫婦の娘には負担が大きいです。Aさんは、再雇用で週3日程度働いていましたが、娘から懇願され、娘の負担を考慮し、孫の送迎等のため、半日勤務の雇用契約に変更しました。

「お父さんありがとう」「おじいちゃんありがとう」といわれるとほほえましく思い、Aさんは「よかったよかった」と初めのうちは幸せを感じていました。

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「旅行にいってくるね」毎週末1人ぼっち

同居を始めて3ヵ月すると、子どもたちは夏休みに。毎日家にいるため、仕事に行けません。会社に相談し有休を使いながら、仕事を辞めることなく続けていたある日、仕事から帰宅すると、娘から置手紙が……。

「これから、夏休み休暇をとって旅行にいってきます」

やれやれ、慣れない子育てと仕事の両立で疲れていたから、少しゆっくり休もうと思ったものの、旅行に行くのなら誘ってくれてもいいのにと少し寂しい気持ちになりました。久々の1人。1日目はゆっくりできたと安堵していたものの、2日目は静かすぎて寂しいものだなと思うように。

夏休み旅行は、始まりに過ぎませんでした。その後は、週末になると旅行に行くようになった娘夫婦。どうやら、家賃分が浮いた分、遊びに出かける回数が増えたようです。高齢者には楽しくない、疲れるからとAさんは置いてけぼりです。