
「お金」や「制度」の使い方に関する知識があるかないかで、負担の軽減度合いは大きく変わります。介護ジャーナリストの太田差惠子氏と芸人の安藤なつ氏による共著『知っトク介護 弱った親と自分を守るお金とおトクなサービス超入門 第2版』(KADOKAWA)より、介護を考えるうえで知っておきたいサポートや、注意しなければならない点について詳しく解説します。
〈登場人物紹介〉
●安藤なつ…介護歴約20年。現場のことはある程度わかるけれど、制度やお金のことについて詳しく知りたい。
●太田差惠子…取材歴30年以上の「介護とお金」に詳しい介護ジャーナリスト。費用を抑えるための介護制度や、プロの手の借り方について解説。
「日常生活自立支援事業」のサポートを利用する
CHECK!
□お金の管理だけでなく日常の困った! を助けてくれるサービス
□社会福祉協議会の窓口で手続き。相談してから申し込む
安藤:たとえば、通帳の管理や公共料金の支払いなど普段のお金の管理が難しくなってきた場合、どうしたらいいですか? ホームヘルパーには頼めませんよね。
太田:そうですね。特に遠方に暮らしているとサポートが難しく悩むところだと思います。そんな方に使って欲しいサービスがあります。
安藤:どんなサービスですか? 具体的に教えてください!
太田:「日常生活自立支援事業」というもので、日常的なお金の管理だけでなく、生活の困りごともサポートしてくれます。「生活支援員」が定期的に親の自宅へ訪問して、福祉サービスの利用の仕方の説明や介護サービスの利用申し込み代行から苦情の相談、郵便物の内容の確認、行政の手続きなど、あらゆるサポートを受けられます。
安藤:それは心強い! たとえば軽い認知症の人でも大丈夫ですか?
太田:はい、もともと認知症などで判断能力が十分ではない方へのサービスなんです。ただし、この事業はご本人との「契約」により行うため、契約内容を理解できる一定の判断能力が必要です。また、通帳や実印など大事な書類を貸金庫で預かるサービスもありますよ。
安藤:どこで申し込んだらいいのでしょうか?
太田:「社会福祉協議会」が対応してくれます。窓口へ連絡すると、専門の職員が自宅へ訪問します。親が困っていることを相談すると、内容に合わせた支援計画を作成してくれ、その内容に納得がいけば、契約してサービスを利用する流れです。手続きは、親自身の署名が必要ですので、親がご自身で契約します。子どもは、窓口への連絡やどんなサービスがあるのか一緒に聞いてあげるのもいいかもしれませんね。
安藤:利用料金はどのくらいかかるのですか?
太田:東京都の場合は、1回(1時間まで)1,500円。通帳を預けてお金を管理してもらうサービスの場合は、1回3,000円です。どちらも1時間を超えると30分ごとに600円の追加料金がかかります。また、通帳や実印を貸金庫で預かる場合は、1ヵ月あたり1,000円です。どんなサービスを利用するかを決める相談は無料ですので、困りごとはどんどん相談してみてください。
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母が1人残されたら年金はいくら?
□厚生年金を受給している親が亡くなったら、遺された親は遺族年金を受給できる場合が多い
□国民年金のみを受給している親が亡くなっても、遺族年金は給付されない
安藤:もし、母親が専業主婦で国民年金だった場合、父親が亡くなっても年金で暮らしていけるのでしょうか。
太田:親世代は母親が年下であることが多く、女性のほうが長寿ですから、父親が先に亡くなるケースが多いですね。両親は2人分の年金で暮らしていますが、1人になったからといって生活費が半分になるわけではありませんから、多くの人が生活は厳しくなるでしょう。
安藤:遺族年金がもらえると聞きました。
太田:父親が加入していた年金によって異なります。厚生年金に加入していた場合は遺族厚生年金が支給されますが、国民年金に加入の親なら、遺族基礎年金は支払われません。自営業者などで国民年金だったケースでは、母親は自分の国民年金だけで暮らすことになります。
安藤:それはキビシイ! 厚生年金の場合も、父親がもらっていた全額をもらえるわけではないんですよね。
太田:そうですね。厚生年金部分の4分の3ですから、父親が亡くなった後、母親が1人になると受給額は6割程度になる人が多いようです。
安藤:え~、でも4分の3だったらもう少しもらえるのではありませんか。
太田:誤解が多い点なので図表2をもとに、詳しくお話ししますね。
父親は厚生年金に加入していましたが、その内訳を見るとすべての人が加入している国民年金(老齢基礎年金)と厚生年金(老齢厚生年金)部分に分けられます。遺族年金の対象になるのは厚生年金部分のみ。
ですから、受給額は父親の厚生年金約9万円の4分の3=約6.75万円と自分の国民年金=約6.5万円の合計で約13.25万円となるのです。
安藤:この金額だと施設へ入るのは難しいですね。
太田:ただ、父親と死別して再婚していなければ「寡婦」となって、申告をすれば寡婦控除を受けることができ、住民税非課税世帯になる可能性が高いです。そうすると医療費と介護費がぐっと安くなりますから、手続きができているかを確認してみてください。
安藤 なつ
メイプル超合金
ヘルパー2級(介護職員初任者研修)
太田 差惠子
介護・暮らしジャーナリスト