
自分の弱点を隠し通すよりも、伝え方を工夫すればむしろ信頼を得るチャンスに繋がります。本記事では、プレゼンス・コンサルタントの丸山ゆ利絵氏が著書『一流のエグゼクティブが実践する 初対面から信頼関係を築く 第一印象の磨き方』(日本実業出版社)から、ビジネスの場で「信頼される人」が実践する、上手な距離感の保ち方について詳しく解説します。
弱点・苦手な部分を上手に伝える
自分の弱点、苦手な部分はできるだけ隠したいと思う人もいるかもしれませんが、うまく先に伝えておくと、むしろ信頼を得やすくなるものです。なぜなら、お互いにうまく協調するために歩み寄るきっかけになるからです。ただし、伝え方を間違うとネガティブな印象を与えてしまいますので、上手な伝え方を知っておいてください。
伝えるときには、「これが苦手です」とただ言うのではなく、自分でできる努力をする意志があることが伝わることが大事です。たとえば、自分が得意なことも一緒に伝えるといいでしょう。「私は全体的なプロジェクト管理はかなり得意で、とくに方々との調整をよく任されます。しかし、作業を割り振るなどの細かい作業はどうしても苦手なところがあります」といった具合です。
加えて、前向きなフレームを意識して話をすると、相手の理解も得られやすくなります。苦手な部分の情報共有がもたらすメリットも話しておくのです。先の例であれば、細かい部分について相手のよりいっそうの注意やサポートをお願いできれば、ミスを少なくできたり、役割分担が明確にできたりして、全体をさらにスムーズに進められるでしょう。そんな提案ができれば、相手も聞いてよかったと思うはずです。
また、自分の弱点、苦手な部分によって今後相手が感じる可能性がある心配や不満について先んじて話をしておくのも効果的です。たとえば、「これから進めていく中で、私からの連絡が具体性や細かさに欠けているとお感じになったら、ご遠慮なく教えてください」「こうしたほうがいいと思われることはどんどんアドバイスをお願いします」などです。先にこのように伝えておけば、相手もいたずらにフラストレーションを感じることなく、意見や提案をしてくれるでしょう。
あとは態度や話し方に気をつけるだけです。卑屈な様子や弁解がましい言い方は相手を不安にするだけです。明朗な態度や話し方で素直に伝えてください。
弱点・苦手な部分は前向きなフレームで伝える
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事前準備を怠らない
最初のアポイントメントが決まったなら、事前準備として相手先のことをまず調べましょう。いまや中小合わせてほとんどの企業が公式サイトを持っています。
本社住所、従業員数、支社、沿革などがあっという間にわかります。代表的な幹部の名前を検索すると、インタビュー記事などもあれこれ出ていることや、SNSでも公式アカウントを設けて最新情報を発信していることが多く、新しい話題も含めて情報収集には事欠きません。相手も「しっかり調べてくれたんだな」と感じると、親近感や信頼感を覚えます。
逆に最低限のチェックはしないと「事前に調べてもいないんだ」と、ビジネスパーソンとしての能力を疑われます。また、よそよそしい感情を持たれ、信頼もほど遠くなるでしょう。「こちらに関心がない」と思われれば、相手もあなたへの関心を持つ気がなくなるからです。人は相手と同じような距離をとろうと思うものです。
とはいえ、「あれも見ました。これも見ました」と過度の「知ってる」アピールをすると、相手はいきなり距離を詰められたように感じ、かえって煙たがられます。「見やすいサイトなので、勉強させていただきました」という態度がちょうどいいでしょう。
このような事前準備が必要なのは、相手への関心を伝えるアピールになるためだけではありません。相手先の現状や課題の理解、話題や提案の準備にも役立つからです。
第一印象の観点からさらに言うと、そのような情報からは企業文化や価値観のようなものが伝わってきます。たとえば、フォーマルで形式を重んじる雰囲気かオープンでフラットな雰囲気かなどがわかるのです。相手の雰囲気によって、好まれる距離感やていねいさは違います。そこを考えることによって、どのような服装、話し方が適切かをある程度戦略的に選べるでしょう。
ビジネスとしても印象形成の意味でも事前準備を怠りなく
丸山 ゆ利絵
アテインメンツ合同会社代表
プレゼンス・コンサルタント