食楽web
●日本全国を仕事で飛び回るBEAMS JAPANの名物ディレクター・鈴木修司さん。尊敬してやまない『男はつらいよ』の寅さんのように、年の1/3は旅の空という鈴木さんが、旅先で見つけた「フーテンの寅みやげ」をご紹介します。
こんにちは。ビームスジャパンの鈴木修司です。食楽webでの連載も7回目となりますが、今回は、私の郷里である三重県の松阪、そしてお隣の伊勢エリアをとり上げたいと思います。
伊勢・松阪エリアで推したいフーテンの寅土産は、ズバリ「焼き海苔」。三重県は縦長のかたちをしていますが、それに寄り添うように広がる伊勢湾から上がる海産物が豊富。色々と美味しい海の幸がある中で、とくにオススメなのが“伊勢湾の海苔”なのです。
個人的に、三度の飯より好きというより、三度の飯に絶対に欠かせないのが“焼き海苔”です。自宅でご飯を食べる際に海苔がないと不安を覚えるほど。全国津々浦々、海苔の名産地はたくさんありますが、三重の海苔はほかに引けを取りません。
鼻に抜ける風味、しっかりとした食感、健康的で黒々とした見た目、三拍子そろっています。お土産物屋さんでも地元スーパーでも簡単に手に入りますが、旅先で見かけたらぜひとも手に取ってみてください。絶対に後悔はさせませんよ。
鈴木修司(すずきしゅうじ)/BEAMS JAPANクリエイティブディレクター。三重県松阪市生まれ。年間120日近くを旅に費やし、日本各地の様々な場所で魅力的なモノ・ヒト・コトを発掘中
さて、前置きはこれくらいにして、いざ三重県松阪市と伊勢市の食と文化を深堀りしていきましょう。
伊勢のうなぎと名居酒屋を堪能
新幹線から望む富士山はいつ眺めても良いもの。東京から伊勢までは乗り継ぎがスムーズにいけば3時間半もかからずに到着できる
見どころ満載の三重県ですが、“空港のない県”としても知られています。空からのアクセスができない分、陸路で移動しやすいのが三重県の特徴。
東京からの移動手段としては新幹線と近鉄電車(特急)を乗り継ぐ必要がありますが、関西からは交通至便。大阪・名古屋はもちろん、意外に知られていませんが、京都や神戸とも電車(近鉄とJR)と高速道路の両方で繋がっています。
電車の車窓から伊勢湾沿いに拡がる平野をのんびりと眺めながらの旅路はなかなかの風情です。
伊勢市駅から一足出れば、そこはすでに外宮(伊勢神宮)参道
伊勢と言えば、何をおいても伊勢神宮――通称「神宮」へのお参りが欠かせません。周知の通り、内宮と外宮を中心に数多くの神社が市内に点在しています。年間を通して神宮に関わる行事も多く、伊勢の街そのものが聖地といった雰囲気。
参拝を済ませたら、お待ちかねの腹ごしらえです。
伊勢のうなぎは格別の旨さ
『喜多や』のうなぎ丼
実は三重県は“鰻どころ”。県庁所在地の津をはじめ、松阪や伊勢にも鰻の名店が数多くあります。松阪生まれの私にとっても鰻は特別で、勝負飯のひとつ。スタミナがつくのはもちろん、気持ちまで上がります。
この日は、伊勢市にある鰻の名店『喜多や』さんへ伺いました。お店の雰囲気もさることながら、この地域でも珍しいタレをまぶし込んだご飯は感動レベルの旨さ。見た目よりもあっさりしているので、ペロリと完食できると思います。
●DATA
喜多や
住:三重県伊勢市本町10-13
TEL:0596-28-3064
営:11:00〜17:00(16:00LO)
休:木曜(祝日の場合は営業)
伊勢の老舗居酒屋『一月家』で一献
店内に裏返しにかけられた暖簾が、また良い酒の肴
夕食は、私が若い頃から通っている『一月家(いちげつや)』さんへ。大正3年創業、伊勢を代表する名居酒屋です。夕方前に入店したのですが、さすが人気店ですでに満席に近い状態でした。
敬愛する居酒屋探訪家の“太田和彦”さんが“日本三大居酒屋湯豆腐”と認める一月家の名物「湯豆腐」
店の名物料理は「湯豆腐」とサメの肉を干した「さめたれ」。それ以外のオススメは「しび刺身」と「ふくだめ」。聞きなれない名前の料理ばかりだと思いますが、一体どんな料理なのかは行ってのお楽しみにしてください。
サメの肉を干して作る伊勢地方の名物「さめたれ」は地酒と相性抜群
ちなみに、近年は地元の人だけでなく、他府県からも『一月家』を目当てに多くのお客さんが詰めかけているようです。ご主人によると、最近はお客さんが多過ぎて暖簾を外に掲げる余裕もなく日々営業しているとのこと。
とはいえ、伊勢ならではの逸品料理と旨い地酒が味わえて、しかも常連客とご主人が織りなす独特の空気感がたまらなく良いので、繁盛するのも納得です。常に混雑していますが、伊勢にお越しの際はぜひ訪れてみてください。
●DATA
一月家(いちげつや)
住:三重県伊勢市曽祢2-4-4
TEL:0596-24-3446
営:14:00〜22:00
休:水曜
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松阪といえば焼肉が抜群に旨いグルメタウン
『一升びん』の焼肉。個人的には松阪で肉を食すなら“焼肉”一択です
伊勢をたっぷり堪能したら、ぜひ足をのばしてほしいのがお隣の松阪エリアです。自分の出身地なので多少はひいき目もあるかもしれませんが、江戸時代に栄えた商人の街ということもあって文化度が非常に高い地域であり、伊勢に負けず劣らず食のレベルも高いです。
さて、松阪で何を食べるか。全国的な知名度を誇る高級ブランド「松阪牛」を筆頭に、松阪にはウマい肉を食べさせる店が山ほどあります。その中でも、私のイチオシの店は、幼い頃から通っている焼肉の名店『一升びん』さん。
焼肉以外の肉料理もオススメ。「ハツ刺し」と「センマイ」は新鮮そのもの
松阪の焼肉は、赤身も霜降りも内臓系のお肉も、また鶏肉まで、基本的には甘辛い味噌ダレで事前に味付けされているのが一般的。地元では“焼肉”と言わず、総じて“ホルモン”と呼びます。
そのホルモンですが、白米もビールも進み過ぎる、それはそれは危険なレベルの美味しさ。私にとっては食べ慣れた故郷の味ですが、今だに定期的に食べたくなり、焼肉を目的に里帰りすることもあるほどです。
●DATA
一升びん 本店
住:三重県松阪市南町232-3
TEL:050-5589-7514
営:11:00〜21:30(21:00LO)
休:無休
おまけ
松阪の名店『庄市』の人気メニュー「金目鯛の煮付け」[食楽web]
ちなみに、松阪では肉はもちろん、伊勢湾から上がる新鮮な海の幸もぜひ食べてほしいところ。伊勢や松阪の地酒には、間違いなく魚が合いますよ。
●著者プロフィール

鈴木修司(すずきしゅうじ)|BEAMS JAPANクリエイティブディレクター
1976年、三重県松阪市生まれ。年間120日近くを旅に費やし、日本各地の様々な場所で魅力的なモノ・ヒト・コトを発掘。大学などで講師を務めることも。著書に『銘品のススメ』、監修書籍に『都道府県おでかけ図鑑』などがある。