
2025年3月20日から二十四節気は「春分」に
二十四節気の中でも季節の変化を表す重要な節目で、春の中心となる節気です。
昼と夜の長さがほぼ等しくなる日であることから、「分」という字が充てられていますが、「暑さ寒さも彼岸まで」の言葉にもあるように、寒暖の分かれ目とも取れるときです。
春分の季節感
彼岸は節分や土用なども含まれる、二十四節気以外の季節の目安となる「雑節」のひとつです。
春分の日の前後3日間が彼岸にあたり、初日が「彼岸の入り」、春分の日が「中日(ちゅうにち)」、最終日が「彼岸明け」となります。
仏教では彼岸(冥界)が西、此岸(現世)が東にあるとされ、太陽が真東から昇って真西に沈む春分と秋分は、彼岸と此岸が最も通じやすくなると考えられていることから、この7日間にお彼岸のお墓参りの習慣があります。
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「矢車菊」
□切り花出回り時期:3月~5月
□香り:あり(一部品種)
□学名:Centaurea cyanus
□分類:キク科ヤグルマギク属(ケンタウレア属)
□別名:ヤグルマソウ、コーンフラワー、セントーレア
□英名:Cornflower(麦畑の花)、Bluebottle(青い壺)、Boutonierre flower(ブートニアの花)、 Hurtsickle(鎌痛め)、Cyani flower(浅葱色の花)
□原産地: ヨーロッパ東南部
ヨーロッパ諸国で小麦畑に咲く花として、古くから親しまれています。ここでは矢車菊にまつわる、さまざまな文化をご紹介します。
名前の由来
「ヤグルマソウ」ともいわれますが、ヤグルマソウはユキノシタ科の全く別の植物なので、混乱を避けるため、現在ではヤグルマギクの名前が一般的です。
日本名の「矢車菊」は、鯉のぼりの先端などに付けられる矢車の形に花が似ていることに由来しています。
海外では多数の名前がありますが、よく使われるのが「コーンフラワー(Cornflower)」で、これは小麦畑によく生えているという意味で名付けられました。他にも、つぼみの形に見立てた「ブルーボトル(Bluebottle)」や、青系の花の総称「ブルーボネット(Bluebonnet)」などとも呼ばれています。
古代エジプト
古代エジプトで矢車菊は豊穣と生命の象徴として扱われ、宮殿などの床や壁の模様、アクセサリーのデザインとして取り入れられていました。
ツタンカーメンのお墓でも矢車菊や青い睡蓮が入ったリースや花束が発見されていますが、こうした植物は死者の蘇りを助けるための副葬品として入れられたと考えられています。
ギリシア神話と学名
リンネが命名した、「ケンタウレア(Centaurea)」の種名には諸説ありますが、ギリシア神話に登場する半人半獣族ケンタウロスのひとり、ケイロンに由来するという説があります。ケイロンはギリシア神話の神々から学んだ、音楽、医学、予言などの技を英雄たちに指導した賢者で、教え子のヘラクレスが誤って放った矢で傷つき、矢車草の花でその傷を治療したというストーリーが伝わっています。
属名の「シアヌス(cyanus)」 は、女神フローラが恋したシアヌスという男がヤグルマギクの畑で死んでいるのを見つけ、その名を花の名前にしたという神話に由来しているとも、ギリシア語の「kyanos」(深い青)に由来しているともいわれています。
ヴィーナスの誕生とプリマヴェーラ
ボッティチェッリの代表作『ヴィーナスの誕生』と『プリマヴェーラ』にも矢車菊が描かれています。『ヴィーナスの誕生』では、ヴィーナスにマントを差し出している季節と時間の女神ホーラーが着ているドレスの模様として矢車菊が描かれています。
また、『プリマヴェーラ』ではニンフのクローリス(後の花と春を司る女神フローラ)の口から花々が溢れるように描かれていて、その一つが矢車菊ともいわれています。
ブートニア
矢車菊はスーツのボタンホールに挿すブートニア(ブートニエール)としても使用される花のひとつです。これは富、繁栄、幸運、友情などを表すとされ、イギリスのチャールズ3世もしばしば、この花を胸元に挿しています。
カイゼルの花
ドイツ皇帝の紋章は青い矢車菊ですが、これは初代ドイツ皇帝ヴィルヘルム1世(1797-1888)の母である王妃ルイーゼがナポレオン軍に追われた際、子どもである王子(後のヴィルヘルム1世)たちをあやすために麦畑の中でヤグルマギクの冠を作ったことに由来するといわれています。こうしたことから矢車菊は「皇帝(カイゼル)の花」と呼ばれ、ドイツでは国花同様の花とされています。