
税務調査に入られる確率は、年間で、法人は約1.8%、個人は約0.8%です(令和6年11月の国税庁統計データ参照)。とはいえ、税務調査とはまったく無縁な人がいる一方で、なぜか頻繁に調査の対象となる人も確かに存在します。両者にはいったいどのような差があるのか、税務調査に入られやすい人と入られにくい人の違いについて、詳しくみていきましょう。税理士法人松本の代表税理士である松本崇宏氏が解説します。
税務調査の対象に選ばれる確率
法人や個人事業主に限らず、誰でも税務調査の対象になる可能性があります。税務調査が年間にどれぐらいの確率で行われているのかを見てみましょう。
●法人は年間で100社に1.8社
●個人事業主は年間で100人に0.8人
■法人…「年間で100社に1.8社」
法人の場合は、令和6年10月時での申告件数が約317万件です。令和6年11月の国税庁統計データから、法人に対する実地での税務調査件数が約5.9万件であることを考えると、法人の税務調査の確率は年間約1.8%(5.9万件÷317万件)となります。
■個人事業主…「年間で100人に0.8人」
個人事業主の場合は、令和6年5月時での申告件数(事業所得及び不動産所得のみ)が約530万件ですので、令和6年11月の国税庁統計データから、個人に対する実地での税務調査件数が4.7万件であることを考えると、個人の税務調査の確率は年間約0.8%(4.7万件÷530万件)となります。
「個人事業主なら税務調査の心配はなさそうだ」と感じるかもしれませんが、ゼロではありません。いつ誰に税務調査が入るかわからないため、油断は禁物です。
確率でみると税務調査の対象になる可能性は低く、なかには「20年以上も税務調査に入られていない」という事業主もいます。一方で、頻繁に税務調査の対象になる事業主がいるのも事実です。
では、税務調査に“入られやすい人”と“そうでない人”の違いはどこにあるのでしょうか。次ページ以降に税務調査に入られやすい事業主の特徴をまとめました。
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税務調査に入られやすい事業主の特徴
脱税が疑われる業種
税務調査は、税申告・納税が正しく行われているかを判断するのが目的です。意図的であるか否かは関係なく、間違いがあれば追徴課税されます。
税務署側としては、すべての法人や個人事業主に対し税務調査を行うわけにはいきません。だからこそ、脱税が疑われる業種を絞っているようです。
以下のような特徴がある場合で申告漏れが指摘されており、今後も税務署が注視していくと予想されます。
売上が多い
単純に業績がよく、売上が多い法人や個人事業主は税務調査の対象になりやすいといえます。売上が多いと、経費の過大計上や申告漏れなどのミスが多くなりやすいのが理由です。
急激に売上が増加したという場合も、税務署が実態を把握するために税務調査が行われる可能性があります。
税務署としては、規模の大きな法人を調査したほうが効率がいいというわけです。
現金商売をしている
キャッシュレス決済が一般的になってきましたが、まだまだ現金商売をしているという小売業なども少なくありません。銀行口座を介したお金のやり取りがあればお金の流れが掴みやすいですが、現金だと売上の改ざんをしやすい状況となります。
帳簿は正しく記載しておく必要があり、「レシートを渡さない」「領収書を渡さない」という商売をしていると管理のずさんさから不正を疑われやすくなります。
経費が不自然に多い
経費が多くなると所得を抑えられるため、経費を不自然に多く計上していると税務調査の対象になってしまうかもしれません。事業にかかった経費は当然計上すべきですが、プライベートな支払いを経費に加えていないでしょうか。
同業種や同規模の事業者と比較した際、不自然なほどに経費が多いと脱税を疑われてしまう可能性があります。
売上が1,000万円以下である
年間売上1,000万円は、消費税の課税事業者となるボーダーラインとなります。
正しく計算をして売上が1,000万円以下であれば問題ありません。しかし、毎年1,000万円ギリギリというような事業者は、税務署から「意図的に売上を少なく見せているのではないか」と疑われてしまう可能性が高まります。
もっとも、税務調査が入ったとしても、適切に帳簿をつけていて疑いが晴れれば追徴課税の対象にはなりません。