
クレーム処理の場面では、対応の仕方ひとつで信頼を得ることも失うこともあります。とくにやってしまいがちな“ある対応”が、相手の怒りを悪化させてしまうことも…プレゼンス・コンサルタントの丸山ゆ利絵氏の著書『一流のエグゼクティブが実践する 初対面から信頼関係を築く 第一印象の磨き方』(日本実業出版社)より、詳しく解説します。
クレームなどネガティブな初対面のポイント
通常の出会いではなく、クレーム処理の担当となって、先方と初めて会うケースがあるかもしれません。その場合は悪い印象からのスタートで、信頼を得ることは無理そうですが、取り組み方しだいでは、あらためて信頼を得る道は残されています。
最初に確認しておきたいのは、現担当者にクレームの原因がないことはわかっていても、もし相手がすでに怒りや嫌悪などネガティブな感情を抱えていれば、そのホコ先はやはり現担当者だということです。この段階で最もダメな行為は、言い訳や弁解です。
たとえば、前任者も悪意はなかった、たまたまだった、などの説明は相手のネガティブな感情の解消には何ら役に立たず、かえって火に油を注ぐ行為です。それは責任を感じていないことを相手に伝える行為だからです。
また、前任者や自分がいる企業のいたずらな批判も厳禁です。その企業の一員という立場で来ながら、その企業や仲間に対する批判をするのは、立場を理解しない無責任さを感じさせるからです。
まず集中すべきは、ネガティブ感情の緩和です。そのため、真摯な姿勢で真剣に謝罪すること、それが言葉だけでなく態度でも伝わるようにすることです。言葉以外でも謝罪の気持ちが伝わるようにしないと、信頼は簡単に取り戻せません。
そのうえで、「私がこれから担当させていただきます」と明確に自分がその問題に責任を持つことを宣言することです。問題の解決までどう進めていきたいかを、相手のコンセンサスを得ながら一緒に考える姿勢を見せてください。寄り添い、共感する姿勢が、相手に安心や解決までの希望を感じさせます。
同時に重要となるのはヒアリングです。引き継いだ伝聞の報告ではなく、事実を冷静に把握しておくことです。そうでなければ解決策は提示できません。
私の体験ですが、このようにすると、相手は手ごたえを感じ、かえって強い信頼を寄せてもらえることが往々にしてあります。
クレームには責任感を示し真摯に対応することでかえって信頼される
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相手を一瞬でつかみ、ずっと働きかけられる人が持つもの
第一印象で相手をつかみ、また長期間、人に対して働きかけることができる資質は、明るさと明確さです。これはリーダーの資質とも言えます。「明るさ」と「明確さ」はぱっと見てよく見えるだけでなく、説得力や影響力の一部であり、何かにつけ頼りにされたり、慕われたりする要素でもあります。
人が人を惹きつけるのは、健康そうに見える姿勢や豊かな表情など、生物としての本能が健全さや健康さを感じる要素と前述しましたが、それら同様に私たちの本能を惹きつけるのが、明るさと明確さです。
ただし、「明るさ」とは、前向きで未来への方向性を感じさせる力です。はしゃいでいてにぎやかという意味ではありません。たとえば、八方塞がりな案件に「どうしたってダメだ」とあきらめるのではなく、「どうやったら少しでもプラスの方向へ持っていけるか」「何か代わりの方法はないか」と打開する可能性にフォーカスできるようなマインドの人です。
もうひとつの「明確さ」とは、自分の考えや状況をしっかりと理解し、それを相手に伝えられる力です。この自己理解のプロセスは、初対面での印象にも、長期的な信頼関係の維持にも欠かせません。自分自身を理解できていないと、自信を持つことが難しく、言動が不安定になり、結果として責任感も薄れてしまいます。そうした不安定さは信頼を得にくいものです。
一方、明確に自分の意見や状況を言い表せる人は、誠実さや未来への方向性を感じさせます。たとえば状況が不確かであっても、自分の中の確信を探りやすく、「今日はお答えしかねますが、2、3日中に答えを出します」といった明らかな物言いができるのです。このようなところが相手に安心感と信頼を与えます。
明るさと明確さがある方向へ自分の言動を動かしてください。第一印象だけでなく長い期間においても信頼を得やすくなります。
明るさと明確さがある方向へ自分の言動を動かす