PMIを成功に導くために

日本電産の永守重信社長が「M&Aは契約の時点で2合目、残りの8合分は企業文化を擦り合わせるPMI」と言うように※、M&Aは交渉して終わりではなく、その後の時間のほうが長い。

※2012年8月10日付日本経済新聞より

M&Aによって譲受企業の企業価値が向上するということは、すなわち、引き受けた譲渡企業の企業価値も同時に上がっていることを意味する。譲渡企業の業績は落ちているが譲受企業の業績が上がっている状況というのは、当初予定していたシナジーが上手く出ていないということである。

シナジーを生み出すためには、譲受企業のみの努力でどうにかなるものではなく、譲渡企業側も積極的に関わることが求められる。譲渡企業は譲受企業の戦略を見極め、PMIフェーズで実際にアクションを起こすことで、自社の企業価値を向上させる。

大手企業のグループに入ることや自社をサポートしてくれる譲受企業が現れたからといって、決して安泰ではない。PMIを成功に導くためには、自社を最もよく知る譲渡企業の幹部や従業員が、譲受企業と連携していくことが求められる。

受け身ではなく、「譲受企業のリソースを活用して、自社をさらに成長させていこう」という、前向きかつ野心的なマインドをもってPMIに臨むことが重要だといえるだろう。

丹尾 渉

株式会社タナベコンサルティング

執行役員