国産小麦100%のパン屋を開こうと思ったきっかけは?

学校を卒業後、家から一番近い街のパン屋で働いていましたが、パン屋さんになりたいとかもなく、ただただ仕事としてこなしている感じでした。

担当も限られていたのでパン作りが面白いという情熱もなく、パン屋ってこんなものかと思っていたときに、ものすごいパン好きの後輩にパン屋巡りに連れ出され、「えっ、仕事以外でもパン食べるの?」と思いながら当時大阪で超人気のお店に行ったら「なにこれ、同じパンとは思えない!」とその美味しさに衝撃を受けました。

それが国産小麦を使ったパンだったのです。

『国産小麦の美味しさを届けたい、日本の食を支える一助になりたい』という想いが溢れて自分のお店を開くまでになりました。

この出会いがなかったらパン屋さんになっていなかったので後輩には感謝ですね。

衝撃を受けたパン屋の門を叩き、そこ以外のお店と合わせて10年ほどの修業期間を経て現在の場所にお店を開きました。

「ひとぱん工房」という店名の由来

私の名前が「仁美(ひとみ)」なので「ひと」という文字を使おうとは思いましたが、開業にあたって色々な人と出会い「人(ひと)と人とのつながり」の大切さを感じたり、「一(ひと)つ一つ丁寧に仕事をしよう」などの思いを込めました。

粉選びのポイント

国産小麦を使うことは絶対条件で、いろいろ食べ比べてみて好きな味だったのが「南のめぐみ」でした。

スペシャルではなく日常のパンを作りたかったので、あえて個性を出さず合わせるものを選ばず、毎日飽きずに食べられる味の粉を選びました。

ドイツ産だったライ麦を国産ライ麦ハンコックに変更したところ、お店のスタッフさん達が「ライ麦って美味しいんですね」と好反応。

まず香りが爽やかで、噛みしめたときの味わい深さや飽きがこない感じがいいですね。

全粒粉も、石臼挽きで粉の風味を損なわず、ポストハーベスト不使用のアグリシステムさんの「本別町地粉」に移行するところです。

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小麦畑ツアー参加後に変化したことは?

国産小麦を使うことで「日本の食に貢献できていればいいなあ」というぼんやりとした意識だったものが「貢献できる!」という確信に変わりました。

あの場にいた全国から集まったシェフ達、その後に参加したリジェネラティブベーカリー勉強会で出会ったシェフ達の日本のこれからの食に対する想いに触れ、

“知らないでは何も始まらない、お客様に知ってもらうために伝えていくしかない!”とYouTubeやSNSで国産小麦やライ麦を使う意義など、より熱量を持って発信しています。

何かを変えていくって誰かすごい人だけがやり遂げるものではないと思うんです。

農家さんの努力を私たちパン屋がパンという形にしてお客様が口にする、というバトンリレー。

パンの消費が増えれば農家さんも生産量を増やせるようになって、よりよい流通が築ける社会に繋がっていくと思います。