かつて日本で「長者番付」として広く知られた「高額納税者公示制度」は、2005年に廃止されました。それから20年が経過した今、制度の背景や影響を振り返りながら、特に著作権が相続財産としてどのように扱われているのでしょうか。本連載では、高額納税者公示制度廃止の背景や改正著作権法について、国際税務の専門家が解説します。

高額納税者公示制度があったころ

高額納税者を国民に広く公示する「高額納税者公示制度」は、一般に「長者番付」と呼ばれ、1947年から2005年までの間、芸能人やスポーツ選手、作家など、職業別にテレビや新聞報道で広く取り上げられ話題となりました。

所得税の公示要件は、1983年分以降は税額1,000万円超とされ、それ以前の1970年分からは所得1,000万円超でした。国税庁の資料によれば、1970年分の対象人員は77,970人で、納税人員比では1.7%でしたが、変更前の1982年分ではその比率が6.7%まで上昇しています。所得から税額に要件を変更したことで、税額要件に変更後の1983年分では、対象人員が65,000人で納税人員比0.9%になりました。

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制度廃止の背景

日本では、個人の権利や利益を守ることを目的とした「個人情報の保護に関する法律」が2003年5月に制定され、2005年4月に施行されました。それ以前から、高額納税者公示制度に対する批判や制度廃止を求める声が数多くありました。

寄付を持ちかけられたり、さまざまな勧誘被害に遭うことを恐れ、当初の申告で公示対象にならない税額で申告し、公示の対象期間が経過したあとに修正申告をする高額納税者も出てきました。

また、かつての高額納税者公示制度における所得税の公示期間は5月16日から31日まででしたが、税務署にはコピーサービスがないため、ダイレクトメールの業者らは、多数のアルバイトを派遣し、期間内に公示の台帳の筆写をしていました。なかには台帳ごと持ち去ろうとする者もいたことから、台帳は鎖でつながれていました。