訪問診療クリニックを開業するにはまず、コンセプトや立地、規模などと併せて、施設の種別を決めることが大切です。なぜなら、在宅診療を行う診療所には複数の種類があり、それぞれに明確な施設基準が存在します。クリニックの理念やコンセプトを実現するためにはどの施設がふさわしいか、どの施設なら堅実な収益モデルを描くことができるか、詳細に検討する必要があります。本記事では、医療法人あい友会理事長の野末睦医師が、クリニックの特徴や方向性を決める際に把握しておくべき、各施設基準とその要件について詳しく解説します。

訪問診療クリニックの種別

施設基準、機能強化型にするか、病床ありにするか

在宅医療をメインで行うクリニックの場合、診療報酬をきちんと頂いていくためには下記の「在宅療養支援診療所(3)」の基準を満たす必要があります。

【在宅療養支援診療所(3)の施設基準】

以下の要件のいずれにも該当し、緊急時の連絡体制及び24時間往診できる体制等を確保していること。

 当該診療所において、24時間連絡を受ける保険医又は看護職員をあらかじめ指定するとともに、当該担当者及び当該担当者と直接連絡がとれる連絡先電話番号等、緊急時の注意事項等について、事前に患者又はその看護を行う家族に対して説明の上、文書により提供していること。なお、曜日、時間帯ごとに担当者が異なる場合には、それぞれ曜日、時間帯ごとの担当者及び当該担当者と直接連絡がとれる連絡先電話番号等を文書上に明示すること。

 当該診療所において、又は別の保険医療機関の保険医との連携により、患家の求めに応じて、24時間往診が可能な体制を確保し、往診担当医の氏名、担当日等を文書により患家に提供していること。

 当該診療所において、又は別の保険医療機関若しくは訪問看護ステーションの看護師等との連携により、患家の求めに応じて、当該診療所の保険医の指示に基づき、24時間訪問看護の提供が可能な体制を確保し、訪問看護の担当者の氏名、担当日等を文書により患家に提供していること。

 当該診療所において、又は別の保険医療機関との連携により、緊急時に居宅において療養を行っている患者が入院できる病床を常に確保し、受入医療機関の名称等をあらかじめ地方厚生(支)局長に届け出ていること。

 他の保険医療機関又は訪問看護ステーションと連携する場合には、連携する保険医療機関又は訪問看護ステーションにおいて緊急時に円滑な対応ができるよう、あらかじめ患家の同意を得て、当該患者の病状、治療計画、直近の診療内容等緊急の対応に必要な診療情報を連携保険医療機関等に文書(電子媒体を含む。)により随時提供していること。

 患者に関する診療記録管理を行うにつき必要な体制が整備されていること。

 当該地域において、他の保健医療サービス及び福祉サービスとの連携調整を担当する者と連携していること。

 年に1回、在宅看取り数等を別添2(※)の様式11の3を用いて、地方厚生(支)局長に報告していること。

引用元:Taro-03特掲診療料施設基準|厚労省ウェブサイト掲載

https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken15/dl/6-2-1.pdf

(※)別添2

https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken15/dl/6-2-2.pdf

とはいえ、この基準に関しては、厚生局の指示通りに準備を行い、書類を整えればあまり難しいものではありません。

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一段上の「機能強化型の在宅療養支援診療所」とは

在宅療養支援診療所よりも一段上の施設基準に機能強化型の在宅療養支援診療所があります。



機能強化型在宅療養支援診療所・在宅療養支援病院の施設基準出所:令和4年度診療報酬改定の概要 在宅|厚生労働省保険局医療課
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000920430.pdf

機能強化型の重要な要件として、在宅医療を担当する常勤医師が3人以上必要です。

自院に医師が3人以上いる場合は、機能強化型のなかでも単独型と呼ばれる「在宅療養支援診療所(1)」を。医師が2人以下の場合は、連携型と呼ばれる、連携医療機関内の医師が3人以上になることで要件を満たせる「在宅療養支援診療所(2)」を取得することをおすすめします。