住宅ローンは長期的な返済計画と見直しが必須

住宅ローンを組む際には、長期的な視点が欠かせません。老後の資金不足や返済が滞るリスクを避けるために、現在の収入だけで判断せずに、その後の収入の変化、定年後の収入や生活、将来起こり得るリスクなどを想定し、ゆとりのある返済計画の見通しを持っておくことが大切です。

特に、坂本さんのように収入が増えていく前提でローンを組むことには要注意。夢のマイホームということもあり、住みたい家を優先すると予算をオーバーしがちです。「収入は増えていくし何とかなるはず」と借入額を増やすと、後々の収入の変化で返済が厳しくなるリスクは一層高まります。

ローンを返し続けていく中で、収入や生活スタイルも変化します。役職定年でも継続雇用でもない、想定外の収入減があるかもしれません。そのため、必要に応じて購入時の返済計画を見直し、改めてシミュレーションすることも必要です。

また、家を購入するタイミングでは理想の家に意識が向きがちですが、家族として大事にしたいのは「住まい」だけではありません。教育費を優先する家庭もあれば、日々の暮らしや趣味・旅行など、どれが優先度が高いかは各家庭によって異なります。収入は限られており、老後のための貯蓄も必要になります。

すべてを理想通りに叶えるのは難しいので、何を優先するかを決めて、住まいと暮らしにかけるお金のバランスを取ることが大事です。

長期的視点や家計のバランスなどを考慮して自分で返済計画を考えるのが難しい場合は、ファイナンシャルプランナーなどプロに相談するのも1つの方法です。

(広告の後にも続きます)

坂本さんの最終決断…長期的な計画で安心の住まいと暮らしを手に入れる

マンションを手放すことも検討した坂本さんですが、今後の収支がどうなるかを知るために、FPの元へ相談に行きました。

マンションを売却して住宅ローンの負担がなくなったとしても、売却後の賃貸住まいでかかり続ける家賃を考えると、老後の収支が厳しいことに変わりはありません。さらに高齢になった際に借りられなくなるリスクもあることから、マイホームに住み続ける選択をしました。

そのため、まずは妻が家計の足しになるようパートでできる仕事を探し始め、年金受給開始までは月8万円の収入を得ることを目指します。また、月約23万円かかっていた生活費も2割程度減らせるよう見直しを行い、月々の収支がプラスになるよう改善します。

65歳で完全にリタイアするつもりでいた坂本さんですが、健康で働けるうちは仕事を続け、例えば月8万円程度の収入、妻は月6万円程度の収入が得られれば、夫婦の年金月25万円を合わせて約40万円の収入を想定することができます。

貯蓄を切り崩していた状況から、貯めていけるようになるため、70歳時点で残りの住宅ローンを完済、リタイアすることを目標にしました。

専門家に相談し、ライフプランを作成して見通しが持てたことで、坂本さん一家は安心してマイホームで生活を続けることができています。

今回のケースでは、マイホームで平和な老後を迎えるはずが、長期的な視点を持たずにその時々の暮らしを優先してきたことで、苦しい思いをすることになってしまいました。

「住宅を買ったら終わり」ではなく、「買ったあとも無理なく返し続けていけるか」の見通しを持つため、住宅ローンの返済計画は長期的な視点で考え、安心できる住まいと暮らしを手に入れましょう。

伊藤 寛子
ファイナンシャル・プランナー