否決の原因
田川さんは仮審査を申し込んだときに、担当の行員にほかに借入金はないかと聞かれました。田川さんは、クレジットカードの返済や車のローンもありましたが、クレジットカードの返済は関係ないと思い、現在、車のローンが月に5万円あることを行員に告げたそうです。実際、現在使用しているクレジットカードにおける毎月の支払いの返済額そのものは住宅ローンの返済比率に影響しません。この点では田川さんに問題はありませんでした。一方で、クレジットカードの利用で分割払いやリボ払いがある場合、返済額に加算する必要があるため注意が必要です。
問題はないと思っていた田川さんは、行員にローンを断られた原因を尋ねましたが教えてもらうことはできませんでした。それならばと仲介していた不動産業者にしつこく食い下がったところ、遠回しなことをいわれたのです。
「リボ払いはなくてもですね……」
不動産業者の指摘によって思い当たることが…
不動産業者の指摘によって、田川さんはクレジットカードに関して別の心当たりを思いつきました。それはこれまでに何度か口座の残高不足でクレジットカードの引き落としがうまくできず、請求書が送られてきたあとに支払いをしていたことです。それは給与の振込口座とは別に、振込請求のために指定していた口座からの引き落としでした。請求書の期限内には支払いをしていたため、大した問題ではないと高を括っていましたが……。
うっかり支払いが遅れただけでも信用情報は傷つく
田川さんが懸念していたとおり、今回の審査に落ちた原因はクレジットカードの残高不足が影響したものと推測されます。
住宅ローンの審査では、勤めている企業や年収、勤続年数、年齢などが重視される傾向にあるとはいえ、それだけではありません。信用情報に事故情報が登録されることを俗に「ブラックリストに載る」といいます。ブラックリストに載るのは、延滞や返済不能になった場合と考える人は多いと思います。しかし、その認識は甘いです。
今回の田川さんのケースのように、支払い能力がありながらうっかり残高不足になっただけでも影響は出ます。借入金をするということは滞りなく返済ができるかどうかという側面も確認されるのです。単なるうっかりだから問題ないだろうとは思わず、期限内に支払いを行うよう気をつける必要があります。
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うっかり事故は一生残るのか?
この事故情報はずっと影響するのかというと、そうではなく、5年が過ぎれば情報は削除されます。今回の場合は、ほかに問題がなさそうだったので、支払いが数回遅れたことが信用情報に事故情報として登録されていたと思われます。
信用情報に事故情報が登録されているか確認することも可能で、日本信用情報機構(JICC)※に開示請求をすることができます。スマートフォンで申請することが可能で、スマートフォンが利用できない方は郵送での手続きとなり、1,000円~1,300円の手数料が必要となります。
最近ではキャッシュレス決済が当たり前のようになってきて、利用する頻度も増えていると思います。自分の使った額を把握するように、クレジットカード会社のホームページやアプリなどを確認して、残高不足にならないように心がけることも大切です。
引落額が確定したときにメールでお知らせをするというサービスを行っているところも多いと思いますので、通知がきたときにも金額を把握する癖をつけておきたいですね。
吉野 裕一
FP事務所MoneySmith
代表