止まらないIRSへの干渉…
トランプ政権のIRSへの干渉はまだ続きます。イーロン・マスク氏率いる政府効率化省はIRSの根幹となるIntegrated Data Retrieval System(IDRS)へのアクセスを求めており、財務省を含む多くの議員によって反対されています。
IDRSにはマスク氏の競争相手となる法人の情報も含まれており、政治的利用の可能性や、海外のハッカーによる個人情報の漏洩リスクが懸念されています。IDRSは非常に機密性の高いデータベースであり、アクセスできる職員も限られています。
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IRSへの干渉は「悪手」であることを歴史が示している
IRSを政治的に利用しようとした政権は、今回が初めてではありません。1970年代初頭のニクソン大統領(Richard Milhous Nixon)は、政敵の確定申告書を探し出し、攻撃の材料としようとしました。一方で、自分や友人たちの確定申告書は税務署が守ると発言しました。そのために自身に忠実な人物だけを税務署長に据えようとしてきましたが、そのようなモラルに欠けた人物はおらず、何人もの税務署長が彼によって解任されました。
最終的には1973年、ニクソン自身が標的となり、IRS内部から確定申告書が流出。476,431ドルもの税金が未納であることが発覚し、政治的ダメージを受けることになります。そして翌年1974年のウォーターゲート事件を経て失脚しました。
この事件を機に、1976年以降は行政府が確定申告書へのアクセスをコントロールできなくなりました(1924年以降、確定申告書はパブリックレコードとして扱われていました)。
このような歴史的背景を経て、機密に扱われてきた確定申告書に手を伸ばすトランプ政権。アメリカメディアでは政治生命にかかわるのではないかと懸念する声が上がっています。
税理士法人奥村会計事務所 代表
奥村眞吾