
人生の大きな節目である「定年」。「第二の人生」がスタートするタイミングですが、年収1,100万円で都内に暮らすエリートサラリーマンのAさんは、約30年の社会人生活を振り返り、ひどく後悔。FPに相談したところ、「年金受給開始」を待たずに最悪の未来が待っていることが判明しました。事例をもとに、資産形成のコツと注意点についてみていきましょう。
年収1,100万円で住まい都内戸建だが…“勝ち組”男性が抱える後悔
1965(昭和40)年生まれのAさんは、今秋60歳で定年を迎えます。
Aさんは大手メーカーで部長職を務めており、年収は約1,100万円です。5歳年下の妻Bさんとひとり息子Cさん(24歳)と3人で、都内にある戸建て住宅に暮らしています。Cさんはこの春大学院修士課程を修了して就職。もうすぐ家を出ていくというところです。
一見すると典型的な「成功者」のAさんですが、彼には定年を目前に深く後悔していることがありました。
バブルまっただ中の時代に就職
Aさんが新卒で現在の会社に就職した1988年ころ、日本は「バブル景気」の絶頂期でした。Aさんのもともとの性格に加えて、会社の上司たちの“派手な生活”に影響された結果、「稼げるうちに稼いでおけば老後はなんとかなる」と楽観的に考えるようになりました。
入社3年で年収約500万円のAさんは、貯蓄よりも「いまを楽しむ」ことを優先。車や時計、ゴルフといった趣味に惜しみなくお金をつぎ込みます。ギャンブルも趣味のひとつだったAさんは、頻繁に韓国へ行き、カジノに興じる日々を過ごしていたそうです。
その後、Bさんと結婚して30歳で戸建て住宅を購入。35年フルローンで月々の返済額は20万円を超えていました。
子どもができてからも貯蓄習慣は身につかず、生活水準を下げることなく子どもの教育資金やリフォーム、住宅ローンの繰上げ返済などに消えていく日々。そのため、収入は増えていたものの口座に留まるお金はほとんどありませんでした。
その後、金融機関から勧められて株式投資に手を出したAさん。しかし、2008年のリーマンショックで株価が急落し、慌てて売却したものの300万円の損失に。「投資は怖い」と、それからは投資に手を出していません。
40代半ばで部長に昇進し、年収が1,000万円を超えたあともお金は貯まらず、反対に生活水準は上がる一方でした。
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ねんきん定期便の内容に驚くも、まだ楽観的なAさんだったが…
45歳の時、封筒で届いた「ねんきん定期便」を確認したAさん。65歳からの年金受給見込額があまりに低く焦ったそうですが、先輩から聞いた退職金額が十分な額だったことから「まあ、なんとかなるだろう」と漠然と考えていました。もちろん、老後資金の準備などしているはずがありません。
そしていつの間にか59歳となり、定年目前に。周囲と老後のお金や暮らしについて話すなかで、ようやく危機感を抱き始めました。
住宅ローンは完済しているものの、息子の結婚資金、自宅のリフォーム費用、さらには両親の介護など、今後起こりうるライフイベントを考えると、わずかな貯蓄と退職金だけではこころもとありません。
これまで長いあいだ目を背けてきた「老後生活」を直視するタイミングが来たのです。
しかし、なにもせぬままこの歳になって、いまさらできる対策などあるのか? 途方に暮れたAさんは、夫婦でファイナンシャルプランナーのもとに相談に訪れました。