土でできた土壁は、経年とともにポロポロと剥がれたり崩れたりしてしまいます。

もし床に土が落ちていることがよくあるのなら、早めにリフォームを検討したほうがよいでしょう。

そこで本記事では、土壁のリフォーム方法と費用相場、注意点を説明します。

土壁の魅力もお伝えしますので、ぜひ最後まで目を通してみてください。

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1.土壁のメリット|自然素材を練り上げてできる様々な効果

土壁といえば“古い家”というイメージを抱きがちですが、土と水、藁、砂などの自然素材を練り合わせてできているからこそ得られる、さまざまなメリットがあります。

実際に珪藻土や漆喰などの人気をきっかけに、リフォームだけではなく注文住宅でも土壁を取り入れる方が増えています。

具体的にどのようなメリットがあるのか、以下に見ていきましょう。

1-1.調湿効果がある

土壁は、表面に小さな穴がたくさん開いている多孔質の素材です。

その穴を通して水分を吸収・放出する性質があり、湿度が高いときには水分を吸収し、乾燥しているときには水分を放出して湿度を調整してくれます。

加湿器や除湿機ほどの調湿効果を得るのは難しいですが、雨の日や梅雨時期のジメジメとした蒸し暑さは感じにくくなり、快適に暮らせるでしょう。

1-2.耐火性が高い

土や砂は不燃性物質のため、それらを材料にした土壁も必然的に耐火性が高くなります。

万が一火災が発生したときには延焼を防ぎ、燃えてしまったとしても有害な化学物質を放出する心配がない点がメリットです。

さらに土壁は「熱しにくく冷めにくい」という蓄熱性も備えているので、室温を安定させる効果もあります。ただし、数値としては断熱材で代表的なグラスウールの10分の1程度。断熱性を考慮するのなら、断熱材の充填も必要です。

1-3.有害物質やにおいを吸収してくれる

土壁が吸収・放出するのは、水分だけではありません。

室内のにおいやタバコの煙、ホルムアルデヒドのような汚染物質も吸収し、ろ過して放出します。におい対策としてはもちろん、アレルギー対策としても有効です。

においを吸着する力は表面の穴が多いほど強いので、消臭効果を求める方は珪藻土、漆喰、聚楽(じゅらく)などを選ぶとよいでしょう。

(参考)土壁だけで機能性は十分?

このように、土壁はさまざまな機能性を備えています。

しかし前述のように断熱性は断熱材と比べて低いので、できればリフォーム時に断熱施工も行うことをおすすめします。

ただし和室の壁は、洋室の壁のように下地を剝がし、そこに断熱材を入れればいいわけではありません。柱や梁が見えている『真壁』の場合は、断熱材を充填するためには柱を壁の中に隠す『大壁』へのリフォームが必要になります。

出典:https://www.reform-guide.jp/topics/washitsu-reform/

壁の解体をともなう大がかりな工事になるため、「それなら洋室にしたい」と考える方も多いでしょう。

次章でそれぞれの費用を説明しますので、どの方法が適しているのかを考えてみてください。

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2.土壁のリフォーム方法と費用相場

土壁のリフォーム方法は、大きく分けて3つあります。

まずは費用、デザイン性、素材の属性を一覧で見てみましょう。

塗り壁
クロス
ペンキ

費用感

(6畳あたり)

工期

デザイン性

素材の属性



12~19万円


8~16万円


6~10万円


2~4日


1~2日


2~4日
低~中
自然素材 合成素材 合成素材

以上の点を踏まえて、それぞれの素材の特徴からどれが自分の理想に近いのかを考えてみてください。

2-1.塗り壁でリフォーム


 

出典:http://chikyu-no-cocolo.cocolog-nifty.com/http://kyoeihomes.com/

再び土壁へと塗り替えれば、土壁特有の風合いや質感、部屋のテイストなどを損ねずにリフォームできます。さらに左官職人が手作業でていねいに仕上げるため、模様や陰影をつけてデザイン性を出せるのも魅力。

ただし人手や技術力が必要になる分、費用も高額になります。

また、同じ塗り壁でも素材によって手触りや性能が若干異なるので、サンプルやショールームなどで実際に触れて体感してみるのがおすすめです。

塗り壁によるリフォームは、6畳の和室で12〜19万円が相場になります。

詳しい内訳を見積もり例で見てみましょう。

施工面積
単価(㎡あたり)
金額(円)

養生費

土壁撤去費

シーラー塗布

珪藻土塗り(材工費)

足場代(損料)

清掃費

資材運搬費及び諸経費

合計(税別)

10㎡ 540 5,400
25㎡ 1,200 30,000
25㎡ 200 5,000
25㎡ 3,500 87,500
10㎡ 440 4,400
10㎡ 690 6,900
一式 11,136
150,336

内訳を見てわかるように、塗り壁から塗り壁へのリフォームであっても、既存の土壁の撤去や下地処理、室内の保護など、さまざまな費用がかかります。

さらにシーラー(下地)と素材を塗ったあとの工程でそれぞれ乾燥時間が必要になるため、工期は2〜4日が目安です。

2-2.クロスでリフォーム

「費用をできるだけ抑えたい」「いろいろなデザインの中から選びたい」という方には、クロスがおすすめです。デザインラインナップはもちろん、調湿、消臭、脱臭、防カビ、抗菌などの機能性に優れた壁紙も多くあります。

壁紙を貼るときの6畳あたりの費用目安は8〜16万円、工期は1〜2日と短いので、手軽にリフォームできるのも魅力です。

見積もり例を見てみましょう。

施工面積
単価(㎡あたり)
金額(円)

養生費

ベニヤ板張り(材工費)

クロス貼り(材工費)

足場代(損料)

清掃費

資材運搬費及び諸経費

合計(税別)

10㎡ 540 5,400
25㎡ 1,620 40,500
25㎡ 1,600 40,000
10㎡ 440 4,400
10㎡ 690 6,900
一式 9,720
106,920

土壁からクロスへのリフォームは、壁の上からただクロスを貼ればいいわけではありません。結露によるカビの発生やクロスの浮きを防ぐために、既存壁とクロス間に合板を挟むなどの下処理が必要です。

しかし中にはこれらの工程を行わない会社もあるため、土壁のリフォーム知識がある業者に依頼して、適切な下処理をしてもらいましょう。

クロス(壁紙)の張替え単価|リフォーム費用が変わる要素と安く抑えるコツ

1-3.ペンキでリフォーム

「とにかく費用を抑えたい」「自分でDIYしてみたい」という方は、ペンキを塗る選択肢もあります。費用は6畳あたり6〜10万円と、これまで紹介した方法の中でもっとも安価です。塗り壁と同様にシーラーとペンキの塗布後にそれぞれ乾燥時間が必要なので、工期は2〜4日ほどかかります。

見積もり例を見てみましょう。

施工面積
単価(㎡あたり)
金額(円)

養生費

土壁撤去費用

シーラー塗布

ペンキ塗り

足場代(損料)

清掃費

資材運搬費及び諸経費

合計(税別)

10㎡ 540 5,400
25㎡ 1,200 30,000
25㎡ 200 5,000
25㎡ 1,100 27,500
10㎡ 440 4,400
10㎡ 690 6,900
一式 6,732
85,932

ペンキを塗る場合も、塗り壁と同様に土壁を剥がして下地を整える処理が必要です。

土壁の状態がよければシーラーで土壁を固定してからペンキを塗ることもありますが、壁表面の穴は塞がれてしまうため、調湿性能や消臭性能はなくなります。

2-4.洋室の壁にリフォーム

前述のように日本家屋には、柱や梁が見えている『真壁』と、壁の中に隠れている『大壁』があります。昔ながらの和室には真壁が多いので、「クロスを貼りたいけど柱が見えるとデザインに合わない」ということも。

そのようなときには、壁だけ、または和室全体を洋室にリフォームするのがおすすめです。

リフォーム内容
費用目安
大壁にしてクロスを貼る 20万円~
天井下地を作り直してクロスを貼る 10万円~
和室を洋室化する 25万円〜40万前後

真壁を大壁にするためには壁を解体してから下地を作り直すため、費用目安は20万円〜が目安。構造材の補修が必要になれば、追加費用もかかります。

とても大がかりな工事になるため、工期は1〜2週間ほどが目安となります。

しかし、真壁のリフォームは壁の状態によって費用と工期が大きく変わるため、明確な相場というものがありません。

予算や時期を考えるよりも先に、リフォーム会社への相談をおすすめします。

また、真壁になっている和室の多くは天井の梁も見えているため、室内に統一感を出すためには、壁だけではなく天井も作り直したほうがよいでしょう。

場合によっては、和室の壁、床、天井をすべて交換して、洋室化したほうがいいことも。費用は25〜40万円ほどが相場です。

予算や仕上がりイメージなどから、どの方法がもっとも理想に近いのかを考えてみてください。

和室壁のリフォーム方法について詳しく説明した記事がありますので、ぜひこちらも参考にしてください。

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