この金額なら失敗しても諦めがつく…初めての先物取引の結果は

そして陽介さんは、Aさんが勧める銘柄に100万円ずつ、合計300万円を投資することに。300万円にした理由は、「2,000万円の貯金のうち、300万円程度なら失敗しても諦めがつく」と考えたからです。

選んだ銘柄は「日経225先物」と「NYダウ先物」、「東証REIT指数先物」の3つ。Aさんが言うように、すべて買いで入ることにしました。

こうして、陽介さんは「先物取引」の世界に足を踏み入れることとなったのです。

もう30万円も増えた!

陽介さんが先物取引を始めたちょうどその頃、世界の株式市場は新型コロナウイルスによるパンデミックの影響から立ち直り、右肩上がりの相場が続いていました。陽介さんが購入した日経225、ダウ、東証REIT指数はいずれも順調に値上がりし、気づけば含み益は30万円に。

(こんなにも簡単に増えるのか……)

陽介さんは、驚きを隠せません。スマートフォンの取引画面を何度も確認し、嬉しくなった陽介さんはAさんに報告しました。

陽介さん「A! 聞いてくれよ。もう30万円も増えた!」

Aさん「おう、よかったな! でも30万円か。俺は150万円の利確だよ」

陽介さん「150万円!?」

Aさん「谷口、お前は投資額が少なすぎるんだよ。先物取引の魅力はレバレッジを効かせて自己資金以上の取引ができるところだぞ。もっと大きく張れば利益もうんと増える」

その日の夜、陽介さんが先物取引について調べていると、あるネット記事が目に入りました。内容は「先物取引で億り人になった」という人物のインタビューのようです。

先物取引は自己資金よりも大きな金額で取引ができるため、利益が大きくなりやすい。ハイリターンはハイリスクでしか得られませんから

(たまたまじゃないのか……?)

他にもいくつか記事を読んでみましたが、億り人になった人の共通点は「リスクを取ったこと」のようでした。

(もっと投資額を上げれば、老後の生活がさらに豊かになるかも)

そんな考えが陽介さんの頭をよぎります。まだ慎重な気持ちは残っているものの、陽介さんのなかで「投資額を増やす」という選択肢が現実味を帯びてきました。

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「安泰の老後を手に入れるため」だったはずが…

その後、含み益が順調に増え、先物取引の魅力を少しずつ実感し始めた陽介さん。スマートフォンで相場のニュースを確認すると、どのメディアも「景気回復が続く」「株式市場はさらなる上昇を期待」などと楽観的な見通しを伝えています。

陽介さん「なあ、投資額を増やそうか悩んでるんだけど、どう思う?」

慎重な陽介さんがこう尋ねると、Aさんは即答しました。

Aさん「そりゃ増やすべきだろう。まだまだ市場は上がる。お互い安泰の老後を手に入れようや」

Aさんに背中を押され、陽介さんはついに決断。

陽介さん「よし、いっちょやってみるか!」

相場の上昇を信じて疑っていない陽介さんは、思い切って1,000万円を追加投資。運用する銘柄についても再考し、3銘柄のうちパフォーマンスがよく、相性もいいと感じていた「日経225先物」に絞ることにしました。

日経平均は4万円を突破!陽介さんの頭のなかは…

陽介さんが投資額を増やした2024年2月、日経225(日経平均株価)は3万6,000円前後で推移していました。その後も相場は上下動を繰り返しながらじわじわと上昇を続け、3万8,000円を超えます。

(このまま順調にいけば、かなりの利益になりそうだ……)

もはや最初に抱いていた慎重な気持ちは、どこかに行ってしまったようです。

そして3月、日経平均株価はついに史上最高値を突破。日経平均が4万円に達するのは、1989年以来です。ニュースでは連日「史上最高値更新」「日本経済は新たなステージへ」などと報じられ、世間も投資家たちも沸き立ちます。

陽介さんの利益も順調に膨らみ、含み益は500万円に到達しました。

(このまま行けば、まだまだ上がるぞ!)

一部の専門家は「日経平均株価が5万円まで上昇する」と強気の予想。陽介さんもすっかりその予測を信じ、今後のさらなる利益に胸を躍らせていました。

相場は調整局面もあったものの、再び上昇。7月には4万2,000円に達し、陽介さんの利益もついに800万円に到達しました。いまや、陽介さんの頭のなかには不安など一切ありません。

(まだまだ上がる、もっと増やせる!)