「レバレッジ」の“落とし穴”
レバレッジとは、少ない資金で大きな取引ができる仕組みのことをいいます。
たとえば、通常の株式投資では100万円の資金があれば100万円分の株しか買えません。しかし、先物取引では証拠金(担保となる資金)を差し入れることで、実際の資金の10倍以上の取引ができることもあります。つまり、10万円の証拠金で100万円分の取引ができるため、少ない資金でも大きな利益を狙うことが可能です。
ただし、レバレッジを活用することで利益が増えやすくなる一方、損失も大きくなる可能性があります。
今回の陽介さんのケースでは、相場が好調なときは800万円の含み益が出たものの、急落時には1,000万円の損失が発生しました。このように相場の変動が激しい先物取引では、予想が外れると大きな損失を被る可能性があります。
先物取引は短期間で大きな利益を狙える反面、損失も非常に大きくなるリスクの高い取引です。そのため、基本的には金融知識が豊富で、リスク管理ができる投資経験者向けの取引といえます。
陽介さんのように、投資経験の浅い方がいきなりレバレッジのかかった商品に手を出すと、短期間で大きな損失を出してしまう危険があります。
繰り返しになりますが、投資の経験が浅い方は、まずはNISA(少額投資非課税制度)などの税制優遇措置を活用しながら、「長期・分散・積立」を基本に資産運用を行うことが重要です。
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陽介さんと同僚Aさんの“末路”
わずか半年で1,000万円もの資産を失った陽介さん。あれほど順調だった日々が一瞬で崩れ去るとは思いもしませんでした。
悔しい……でも、自分が悪いから誰も責められない。
暗澹たる思いを抱える陽介さんは、ふとAさんのことが気になり様子を探ってみることに。すると、驚きの事実が判明しました。Aさんもまた「追証(追加保証金)」を求められ、財産の大半を失っていたのです。
(アイツ、最初は500万円儲けたって言っていたのに。結局俺と同じか、それ以上にやられてるじゃないか)
さらに、Aさんの家では先物取引での大損がバレ、離婚話まで出ているとのこと。陽介さんの胸がきつく締めつけられます。なぜなら陽介さんも、妻には内緒で始めた投資。まさか、半年で1,000万円も溶かしてしまうとは……。
悔しい……やってしまった。妻になんて説明すればいいんだろう……。
自宅へ向かう足取りは重く、いままで感じたことのない後悔と不安が押し寄せていました――。
辻本 剛士
神戸・辻本FP合同会社
代表