
「人手不足で採用基準は年々緩くなっている。今までなら入社してこなかった人材が大量に入ってくるようになりました」こう嘆くのは大手企業の教育担当者。’25年3月卒業の大学生の就職内定率は92.6%。超売り手市場のなか、今年も大量の新社会人が誕生する。若手社員のトンデモ言動に困惑する声が聞かれるようになって久しいが、若手育成の難度は上がるばかりで、今やお手上げ状態の企業も珍しくない。コミュニケーションの齟齬は本当に世代の違いなのか、採用した企業が悪いのか。組織や周囲に“害”を及ぼしてしまう新社“害”人の実態に迫った!
若害の定義
①「お客さま」体質で業務遂行
②無責任な迷惑行為を多発
③仕事の価値は自分が基準
◆“退職後”に揉めるパターンが急増
従業員本人に代わって会社に退職の意思を伝えるサービス「退職代行」。利用者は右肩上がりながら、「メイン層の20~30代に“若害”が増えていて、我々も手を焼いています……」と明かすのは退職代行「OITOMA」オペレーター長の田嶋翔太氏だ。
「最近多いのは、“退職後”に揉めるパターンです。工場勤務の男性は退職が了承されたのに、社外秘の資料を3か月以上も返却しなかったため、僕と企業担当者のやりとりが50回以上に。別の営業職の女性は、交通費引っ越し前の遠い住所にした虚偽申請で受け取っていたことが退職後にわかって……。
このレベルまでくると、最初は退職代行に不信感を持っていた企業でも、最後は『お互い大変ですね』と同情しだすことが多いです」
◆退職代行に弁護士案件を相談するケースも
退職代行のメディア露出が増えたことが影響し、本来の「会社に退職を申し出にくい」という理由ではなく、「会社に言えないことがある」といったトラブル相談的な依頼も目立ち始めたという。
「メールで退職代行を依頼してきた20代男性は、『店の設備を一部壊して“ちょっと”隠している。責任を問われたくないので、退職代行さんが引き受けてくれますか?』と。こうした『一部』や『ちょっと』という言葉を使う利用希望者を、我々は要注意人物と思っています。
大概が、失態を勝手に矮小化して伝えているので、実際は店に大損害を与えている場合が多い。もし代行を引き受けてしまったら、後に会社側から『この損害は誰が引き受けるのか?』と大ごとに発展するのは目に見えていますから、さすがに弁護士への相談を案内しました」
◆親身になって相談に乗った結果…
若い女性から「懲戒解雇されそうだから助けてほしい」と懇願され、騙されそうになったこともあったとか。
「ブラックな企業のなかには、退職を申し出たのに懲戒解雇扱いされる事例もあります。だから親身になって話を聞いたんすが、結果的にはトップオブトップの若害でした。シフト制のアルバイト業務だったそうで、彼女は自分のシフトを増やすことで給料を上げようと考えた。
で、ほかのバイト同士を仲違いさせようと偽のトーク画面を使って画策したり、社内に悪評を垂れ流したりしていて、それがめくれて懲戒解雇になる寸前だったと……。懲戒解雇に不服申し立てするというのは、もはや弁護士案件だったため、穏便にお断りした形です」
◆退職代行を“逃げ道”と捉える若者たち
平気でこんな相談をしてくる若害は増え続けているそうで、退職代行側も「またか……」と頭を抱える日々。
「退職代行が、退職時にトラブったときのセーフティネットとして認識されてきたのはありがたいです。ただその半面、『退職代行に頼れば社内トラブルまで解決する』と勘違いして丸投げしてくる若害利用者にはやはり悩まされます」
退職代行を“救い”ではなく“逃げ道”と捉える浅はかな若害も存在するのだ。
【退職代行OITOMA 田嶋翔太氏】
H4が運営する退職代行サービスOITOMAでオペレーター長を務める。OITOMAのYouTubeでは実在したモンスター退職者などを紹介
取材・文/週刊SPA!編集部
※3月25日発売の週刊SPA!特集「[若害]の激ヤバ実態」より
―[[若害]の激ヤバ実態]―