「マイニャンバー制度」群馬・大泉町の試みが“愛猫家”に話題沸騰 「これほど注目されるとは…」担当者が“導入の裏側”を明かす

昨年10月、群馬県が動物愛護に関する条例(群馬県動物の愛護及び管理に関する条例)を改正し、飼い猫の屋内飼育が努力義務化された。

これを受けて、群馬県大泉町では今年の猫の日(2月22日)から飼い猫の情報を町に登録する「マイニャンバー制度」を導入した。

導入が発表されると、その可愛らしい響きや「マイナンバー」にかけた語呂の良さで、猫好きの間で大きな話題となったが、導入の裏にどのような“狙い”や目的があったのだろうか。

“推し活ブーム”意識した缶バッジ交付

「大泉町では、飼い猫の放し飼いや野良猫によるフン尿被害などに関する苦情が一定数寄せられ、対応に苦慮していました。

県の条例が改正されたことに伴い、対策のひとつとして、飼い猫の屋内飼育を推進し、飼い猫の飼育環境と町民の生活環境の向上を一挙に図るための取り組みとして『愛猫の登録制度』、通称『マイニャンバー制度』を創設しました」

大泉町環境整備課の並木守係長は、町で「マイニャンバー制度」が導入されることになった経緯をこう話す。

創設にあたっては、「町民の目にとまりやすく、かつ気軽に登録していただけるよう」(同)なるべく簡素でソフトな制度設計をコンセプトに、実際に猫を飼育する人もいる課内でいろいろなアイデアを出し合ったという。

そのアイデアから「登録の証しとして愛猫の写真を使用した缶バッジの交付」「バッジの愛称は『マイニャンバッジ』」「実施日は2月22日(猫の日)」「『愛猫へのお約束』宣言書への賛同・署名」などが採用された。

「昨今の“推し活ブーム”の中で、缶バッジが流行しているという情報もあったことから、申請者に登録した証しとして、愛猫の写真を加工した缶バッジ『マイニャンバッジ』を交付することにしました」(並木係長)

「終生にわたって愛することを宣言します」

マイニャンバー制度の申請書は、「『愛猫のお約束』宣言書」とセットになっている。

実際に町に提出する「マイニャンバー制度申請書」(左)と「『愛猫へのお約束』宣言」(大泉町ホームページより )

“役所に提出する公的書類”の体裁を崩さない「申請書」と、猫のイラストが入った「宣言書」のコントラストがほほえましい。

宣言書には〈私は、愛猫___に対して、次のことを約束し、終生にわたって愛することを宣言します。〉と、まるで結婚式の「誓いの言葉」のような文言まで入っており、申請書でも飼い猫は「愛猫」と表記されている。

申請書へは、「愛猫の名前」や性別・年齢、避妊や去勢手術の有無、毛の色や長さなどの情報を記入するほか、愛猫の画像も添付する。

登録された情報は「個人情報になり、厳重に管理し、目的外の使用はしません」と前置きしつつ、並木係長は“活用方法”を説明する。

「登録済みの猫が迷子になった時などに連絡をいただければ、登録してある情報や画像を活用し、町のホームページなどで迷子猫の情報を迅速に公開できると考えています。

また、たとえば避妊手術のお知らせなど、必要な情報を必要な飼い主さんに直接お知らせしていくことも想定しています」

申請数100件超えに担当者も驚き

大泉町が町長の定例記者会見で制度導入を発表した1月、NHKや全国紙が相次いで取り上げ、インターネット上でも大きな話題となった。

並木係長は「これほど注目されることになるとはみじんも考えておらず、ただただ驚きと戸惑いしかありませんでした」と振り返る。

そして、2月22日(土曜日)午前8時30分からオンラインでの受付を開始。

2月末の時点で、オンライン・窓口合計で登録された猫の数が100件を超え、申請者の実人数においても60人を超えたという。

「当初イメージしていた数を大きく上回る」と語るほど幸先の良いスタートを切ったマイニャンバー制度。並木係長は改めて制度への期待を語る。

「飼い猫の屋内飼育を推進し、責任を持って愛猫を飼う意識を広めることで、飼い主と飼い猫の幸福度や動物愛護意識が高まるとともに、猫を飼う人、飼わない人の双方にとって住みよい町となることを期待しています」

群馬県「動物愛護」条例改正の中身

昨年改正された群馬県の「群馬県動物の愛護及び管理に関する条例」では、前述の通り飼い猫の屋内飼養が努力義務化されたほか、犬のしつけ(社会化)を促す努力義務も盛り込まれた。

さらに、ペットの多頭飼育問題の解消等に向け、適正な頭数の飼養・保管に関する努力義務も新たに設けられている。

飼い主のいない猫(野良猫)を地域住民が世話するいわゆる「地域猫活動」の取り組み内容も明文化され、各地域での取り組みの円滑化が期待される。

※前橋市・高崎市は条例の適用外(一部を除く)で、各市の条例が適用されている。