
花見シーズンが到来した。東京の桜(ソメイヨシノ)も予想日通りに開花宣言され、見ごろは29日とみられる。全国でも南から桜前線が北上しており、これから列島が徐々に桜色に染まり始める。
関西大学名誉教授の宮本勝弘氏は、2025年の「お花見の経済効果」を約1兆3878億117万円と試算。内訳は、交通費や飲食費などの直接効果に加え、直接効果の原材料の売り上げ増加額などの一次波及効果、生産者小売り収入といった二次波及効果などを合わせた数字となっている。
春は訪日需要も最高潮へ
数字も示すように、花見はほとんどの日本人が楽しむといっていい春の一大イベント。外国人観光客にもその人気は絶大だ。
毎月、訪日外客数を発表する日本政府観光局(JNTO)は「春の桜シーズンは訪日需要が高まる」としており、毎年桜目当てで多くのインバウンド客が春の日本を訪れる。
JNTOが19日に発表した2025年2月の訪日外国人旅行者数の推計値は325万8100人。2月として初めて300万人越えを達成した。コロナ禍の落ち込みから2年を経て人流は完全に復調し、桜シーズンの3、4月はさらなる伸びが見込まれている。
それだけに、見ごろを迎える時期には、各地の花見スポットに内外から見物客が殺到することが予測される。昨今はオーバーツーリズムも問題となっており、日本文化を十分に理解していない外国人のマナー違反を起因としたトラブルも散見される。
お花見の最低限のマナー
例年、多くの花見客でにぎわう東京・目黒区の目黒川沿い。川沿いという特殊性があるものの、同区区長の青木英二氏が「マナーについてのお願い」として呼び掛けているのは以下の3点だ。
(1)ごみのポイ捨ては絶対にやめて
(2)大声を出さない
(3)一方通行で立ち止まらない
どれも当たり前のことだが、花見でテンションが上がり、お酒なども入ると自制がきかなくなることもある。ほかの客もいることを十分に認識し、ルールを守ったうえで満喫することが求められる。
違法リスクのある花見のNG行為
上記はあくまで “マナー” “お願い”のため罰則はないが、状況によっては花見に関する行為で法律により罰せられるリスクもある。
たとえば、花見の場所取り。ネットで検索すると、たくさんの業者がリストアップされ、数千円程度で代行してくれる。だが、地域によっては迷惑防止条例などで罰則が科せられるケースもある。
自身で場所取りをする場合でも、管理者の規程を逸脱したり、必要以上に広範にシートを敷いたりすれば、不法占拠などの違法行為となり得る。

上野公園ではシートを敷いての宴会自粛を推奨している(弁護士JPニュース編集部)
また、カラースプレーを使って敷地に線を引くなどした場合は、器物損壊罪に問われる可能性もある。
花見のマナー違反として広く知られる、枝を切ってサクラの花を持ち帰る行為は器物損壊罪にあたる。

花見を楽しむ前にNG行為に注意を
上野公園で桜の枝を切断すると処罰対象も
国や自治体が設置している都市公園の場合は、都市公園法による処罰も想定される。毎年多くの外国人観光客が訪れる東京・台東区の上野公園は東京都建設局が管轄する都市公園。従って、もしも桜の木を傷つければ、都市公園法第11条第2号、「竹木を伐採し、又は植物を採取すること」に該当。処罰対象となり、10万円以下の過料を取られることも考えられる。
同公園はその規模や知名度から来園者も多く、トラブルが多発していた過去もあり、花見マナー浸透へ各種取り組みを強化。「桜の枝に触らないで看板」の作成や英語通訳案内所の設置などでインバウンドに対応する。さらに、園内の一部エリアを通行規制し、シートを敷布しての宴会自粛を推奨するなど、内外の訪問者が花見を満喫できるよう尽力している。

混雑緩和に通行規制を取り入れている上野公園(弁護士JPニュース編集部)
開花宣言が出る直前の週末に現地を訪問したが、すでに多くの外国人観光客でにぎわい、訪問客の3割近くを占めていた。満開が予想される今後1週間前後は内外の花見客がさらに押し寄せることが確実だろう。
日本の春の風物詩、お花見。昨今は訪日外国人が増大し、人気スポットはどこも観光客であふれかえっている。物理的にどうしても混雑、混乱が避けづらい状況になりがちだが、だからこそ誰もが気持ちよく楽しめるよう、個々のマナーへの意識が強く求められる。