急速な人手不足の進行や、働く人のキャリア形成志向の高まりから、転職者希望者が急増している。給与引き上げの流れもあいまって「転職による年収アップ」を目論む人も多いようだ。
管理職を対象にしたある調査によると、転職を「検討したことがある」「今後検討したい」と答えた人は6割を超え、転職したい理由に「年収を上げたい」と答えた人も52.9%と過半数を占めたという。
転職後の仕事に「満足している」は4人に3人
この調査は、人材紹介会社のJACリクルートメントが、課長・マネージャー以上の管理職1044人を対象に行ったもの。転職したい理由のトップだった「年収を上げたい」の52.9%は、「新たなチャレンジをしたい」(30.5%)や「より裁量をもって働きたい」(24.2%)を大きく引き離している。
回答者のうち実際に転職した人も44.4%を占め、転職後の仕事は「大変満足している」(25.9%)と「やや満足している」(51.2%)を加えると、4人に3人超は満足している結果だ。転職後は42.3%が「年収が上がった」と答えている。
この結果について、転職エージェントに勤めるAさんは「転職後に年収が上がった人の割合は約4割というのは、だいたい相場通り」だという。
「厚生労働省の最新調査でも他の転職サイトの調査でも、確か同じくらいだったと思います。これは多いということもできるでしょうが、残りの6割は転職しても年収が据え置かれるか、または下がっているということですから、楽観視しすぎない方がいいです」
また「平均4割」だけでなく、年代によって傾向が異なることにも注意が必要だという。
「20代では半数くらいが、転職による年収アップできますが、年代を経るごとに割合は下がっていき、50代になると3割弱に減ります。40代になると管理職スキルや専門スキルが評価されるので、それ以外の人は難しい。もちろん、人によって年収アップの優先順位が変わりますから、良し悪しは一概にいえないんですけどね」
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「儲かってる会社じゃないと原資がない」
なお、Aさんによれば、年収アップする可能性のある転職には、あらかじめいくつかの前提条件があるという。
「よく『4つの視点』といわれる会社選びのポイントがあって、ようするに高い年収を支払う力のある会社を選ぶ必要があるわけです。それをどうやって探すかですが、1つ目は当たり前ですが『儲かっている会社』です。儲かっていない会社に転職してしまったら、いくら頑張っても給与は上がりませんよ、原資がないんだから」
もちろん「儲かっている会社」への入社はハードルが高い傾向にある。しかしAさんによると「ビジネスモデル次第で楽に儲けている会社も世の中にはある」ので、「そういうところにうまくはまると、楽に年収アップを図ることができます」ということだ。
2つ目は「成長市場の会社」に転職することだ。
「むしろ『衰退市場』の会社には絶対に入らないこと、と言った方がいいのかもしれません。同じ仕事をしているのに年々収入が下がっていく、なんてことが起こるわけですから。挽回しようとしても『事業に投資するカネなんてない』となれば、もう悪循環です。いち早く脱出すべきということになります」
3つ目は「評価制度や給与制度がきちんとしている会社」に転職すること。
「上司の気分任せの会社はやめた方がいいだけでなく、そもそも『仕事を頑張ったら給与が上がる』とか『会社が儲かったら社員に還元する』とか、そういう会社であることも含まれますね。いくら儲けても社員に支払うつもりのない社長の会社なら、給与は上がらないです。
制度以外の狙い目としては、人柄のいい経営者のスタートアップに創業初期メンバーとして入ること。相場以上の給与がもらえることもあります。経営者の中には『頑張ってくれた人に大いに報いて、みんなで幸せになりたい』という奇特な人もいるのです(笑)」