雑誌『天然生活』(扶桑社)で連載中の、モデル・俳優・エッセイストの菊池亜希子さんによる人気連載「ありが10(とう)ふく、みせて!」が一冊にまとまりました。15人のゲストを招き、偏愛アイテムについて深掘りするというもの。どんな思いで話を聞き、菊池さんにどんな変化をもたらしたのでしょうか?

1.ファッションが、その人の信念を知る術になる

背筋がシャンと伸びる。守られて安心できる。テンションを上げてくれる。洋服は、ただ「身にまとう」だけにもかかわらず、着る人の心にまでさまざまな効果をもたらしてくれます。だから「ありがとう」と思える。ゲストにとってそう感じるアイテムについて根掘り葉掘り取材したのが、菊池亜希子さんの新刊『菊池亜希子の ありが10(とう)ふく、みせて!』です。

菊池さんが会いたいゲストを招き、ゲストによる10のアイテムを見せてもらいながら、一つひとつにまつわるお話を聞いていきます。読み進めていくと、単なるファッションの話にとどまりません。その人の考え方や感じ方、何を大切にして、どんなふうに過ごしているのかまで、どんどん広がっていきます。

「常々おしゃれだなと思っている方に、シンプルにおしゃれの話を聞きたいと考えて始めた連載でした。プライベートなメモをするみたいな気持ち。それが話してみると予想以上に深い話になっていったんです。おしゃれとは、自分にとって『必要なものは何か』が如実に表れるもので、その人の生き方に結びついていく。じゃあ私は?って問いかけられている気持ちになっていきました」

登場するのは、アーティストや俳優、服飾デザイナーや料理研究家、モデルやスタイリストなど、錚々たるメンツ。フリルのあるアイテムやバンドTシャツ、眺めるためのバッグなど、それぞれに個性を感じさせるものが登場します。どこが好きで、どれほど大切に思っているか、どんな思い出があるか……と、対談では一人ひとり異なる考え方が引き出されていきます。ときに彼女たち自身が身につけ、ときに菊池さんにも着せながら。

「みなさん、それぞれに向き合い方が違って、ポリシーがあるんです。説得力がありつつも、決して肩肘張ったものではない。ご自身の内側から湧いてきている熱い信念を聞いていると、おしゃれとは、そういうマインドそのものなんだろうなと思えてきました。それに、好きなものの話をしていると一気に距離が近くなっていくので、それもうれしい出来事でした」と、振り返ります。

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2.自分から湧き出る「好き」を、もっと大切に

そんな対談を通して、菊池さん自身にはどんな影響があったのでしょうか?

「自分のクローゼットで過ごす時間が増えました。今そばにある洋服や、今まで出合ってきたブランドとの関係を再確認する心境になったんです。もともと持っていたものの新たな魅力を見つけられたし、それまで似合わないかもしれないとしまい込んでいたものをひっぱり出してきて、気軽に身につけられるようにもなりました。自分だけの『好き』という気持ちを大事にして、おしゃれを楽しんでいけばいいんだ、と思えたからかもしれません」

いろいろな人の信念を目の当たりにして、菊池さんは自身の「好き」を再確認し、改めてクローゼットの中にあるものへの「ありがとう」という気持ちが強まったのでしょう。

「いろいろな情報や価値観を耳や目にすると、ときどき『好き』という思いに自信が持てなくなることがあって。でも、対談させていただいたことで、自分の中から湧き出る『好き』があれば十分なんだ、と思えました。他人の基準じゃなく、自分がずっと一緒にいたいと思えるくらいの『好き』なら、たとえはみ出ていてもそれでいい。愛し方を改めて教えていただいたと思っています」

着るだけで気持ちを奮い立たせられること。影響を受けてきたカルチャーと結びついていること。身につけずとも目にするだけで幸せになれること。そんなゲストの思いを菊池さんがしっかり受け止め、共感したり感心したりしながらていねいに広げていく話は、読み応えたっぷりです。おしゃれの話だけれど、それだけじゃない。そこには「ありが10」というキーワードに導かれた物語が広がっています。