長年、会社を支え、経営に尽力してきた社長にとって、退職は単なる区切りではなく、新たな人生へのステップです。その際、老後の安定を支える退職金をどのように考えるべきでしょうか。本連載は、税理士兼行政書士の清野宏之氏と社会保険労務士の萩原京二氏の共著『社長の資産を増やす本』(サンクチュアリ出版)から一部抜粋・編集した内容をお届け。本記事では、社長の退職金に関する日本社会の現状と、適切な退職金を受け取るための具体的な方法について解説します。

社長が退職金をもらうことを「当たり前」に

会社に勤めている人たちのほとんどは、退職金は普通にもらえるものと考えているように感じます。

もっとも、退職金の有無や額を考えて就職先を決める人はそういないでしょう。ただ、定年が近くなってくると、退職金の額は気になるかもしれませんね。

よほど会社の業績が悪くない限り、定年が近くなるにつれて、「退職金は、いくらもらえるのかな……と考えるものです。

ほかに退職金の額を考える機会は、マイホームを購入するタイミングで将来の繰り上げ返済のシミュレーションを行うときでしょうか。

老後の生活を考えて、「年金暮らしになる前に、住宅ローンを全額返済しよう」と退職金をあてにする人は多いはずです。時期の早い・遅いはあるにしても、会社勤めをしている人のほとんどは退職金の額などに関心を持っているのではないでしょうか。

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日本と欧米の社長の“退職金の考え方”にも違いがある

一方で多くの社長は「退職金を多くもらおう」といった意識をそもそも持っていないように感じます。

総じて日本人は、欧米人と比べてガツガツ感をあまり持っていないと言われがちです。アメリカやヨーロッパの経営者は「自分がこれだけ儲けて、会社を大きくしたのだから、報酬を多くもらって当然だ」と考える傾向があり、多額の退職金を要求することが多く見られます。

ところが日本の社長は、「もらえるものなら、もらいたい……かな」といったスタンスの方が多いのです。

リスクを冒して創業し、30〜40年といった人生の大半を会社にささげ、社員の生活を守り、世の中に貢献してきた社長なら、相応の報酬をもらって然るべきです。お金をもらうことに対する心理的なブロックを外し、ご自身の働きに報いるだけの報酬を「退職金」という形で受け取るべきだとわたしは常々感じています。

「そう言われたら、退職金はできるだけ多くもらいたいかな」となるのではなく、さらに一歩進んで、「もっと退職金をもらいたい」と社長から言ってもいいのではないでしょうか。

「もらわなくてもいい」でも「もらえるならもらいたい」でもなく、「これだけがんばったのだから、これくらいはほしい」と考えていいのです。