1月には日枝氏が退任を拒否したとの報道も

日枝氏は今回の事案については、「関与していない」(1月27日会見での嘉納修治会長〈当時〉)とされるが、港浩一前社長の登用やフジの企業風土を作ったことなどへの責任を問う声などが社内外から上がっていた。だが1月、日枝氏はフジの遠藤龍之介副会長が退任を迫った際、拒否したという関係者の声も報道された。

もともと、問題発覚時の取締役の多くが退任することは織り込み済みだった。1月27日にはフジの港社長、嘉納会長が辞任。遠藤副会長も日本民間放送連盟会長としての記者会見で、「報告書が出たら」経営責任を取って速やかに辞任することを表明していた。

しかし、報告書公表予定の3月末が近づくと、経営幹部たちの言葉は変化していく。「人事と第三者委の順番はさほど重要ではない」「年度末で収め、4月は新体制で迎えたい」。人事が先行することで、「第三者委の前に刷新感が出せる」という意見も出始める。

27日の人事発表後、清水氏は「第三者委の調査と経営刷新は別の観点だ」と報道陣に説明した。

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問題発覚時の取締役はすべて退任

これで問題発覚時のフジ取締役はすべて退任することになる。中堅幹部の一人は、「すでに会社としては、経営陣に問題があったことは認めている。その上で、現在できることは全てやろうということだろう」とみる。

2月の末から、日枝氏は骨折で入院。直接やりとりをする人はごく限られる状況だったが、水面下では、日枝氏の退任へ向け調整が続いていた。当初は固かった日枝氏の態度も次第に軟化したとみられる。ある幹部は「世間の空気は読める人だ」と話す。

金光氏は報道陣から日枝氏について問われ、「(経営刷新の必要性は)早い段階から理解してくれた」「人事は任せてくれた」と話した。清水氏も「今回の人事はまったく(日枝氏の)影響を受けていない」と強調した。

社内では日枝氏の影響力はそがれるという見方が広がる。人事を受けて、ある幹部はもらした。「とにかく、日枝氏の退任が間に合ってよかった。見え方がまったく違う。これで一区切りだ」

(シニアエディター 関口一喜)