クレジットカードで決済した直後、事業者保管用の明細にペンでサインを書く。この行動は、2025年4月からは「過去の光景」になってしまう。
日本では3月31日を最後に「クレカのサイン認証」が廃止される。今後の認証方式は4桁のPIN入力とタッチ決済のみになる。大きな転換になりそうだ。
が、経済産業省や日本クレジット協会がこのような決定に踏み切る前から、我々はサイン認証を使わなくなっている。それはいつからだろうか? そのあたりについても振り返ってみよう。
サインよりPIN入力のほうが手っ取り早い!
サイン認証はかつて、その動作自体が一種のトレンドだった。
現金ではなくクレカで支払いをする――つまり、クレカを持っているというのは、それ相応の収入と貯金がある証拠だった。
しかし、現代では金持ちではなくてもクレカを所持している。成人年齢が引き下げられたこともあり、いまや18歳でもクレカを持つようになった。
そうなると、「明細にサインを書く」という行為自体が「煩わしいもの」と見なされる風潮になっていく。
確かにペンで自分の名前を書くよりも、決済端末のテンキーで暗証番号を入力したほうがラク、そして何より見た目にもスマート。そのため、ここ数年でサイン認証はPIN認証に後継の座を譲っている。
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2022年から周知・啓蒙活動
サイン認証の廃止とは、正確に記せば、サインをすることでPIN入力を省くことができる「PINバイパス」が完全廃止されるということである。
経済産業省と日本クレジット協会が取りまとめた「クレジットカード・セキュリティガイドライン【3.0版】」(2022年3月公表)には、こう記載されている。
(3)サイン取得の任意化、PINバイパスの廃止、NoCVMの見直しについて
(1)加盟店によるサイン取得の任意化 ・我が国クレジットカード市場では長年にわたり、本人確認としてサインの果たす役割の重要性に鑑み、カード会員に対してはカード券面上のサインパネルへの自署の徹底を、加盟店に対してはそのサイン照合の徹底について業界を挙げて啓発し取組んできた経緯がある。
(中略)
・一方で、カード会員自ら決済端末にカードを挿抜する、あるいはかざす決済オペレーションが浸透しつつあることにより、従来、加盟店がカード会員から一時的にカードを預かりサイン照合を行ってきた商慣習がその変更を迫られている。また、国際ブランドのルールでは、サインを取得するか否かは加盟店による裁量に委ねられており(任意化)、世界的には既に、サインが従来果たしてきた本人確認としての有効性は低下している。
上記に鑑み、本人確認方法としての「サイン」の取得は2025年3月を目途に加盟店の任意と し、取得しないことを推奨する。なお、「サイン」を取得する場合においても売上票に記載されたサインとの同一性確認は必須とはしない。 このため、2022年4月以降、加盟店及びカード会社による(サインの任意化について)段階的な周知・啓発活動を実施する。
(クレジットカード・セキュリティガイドライン【3.0版】41~42ページ 太字は筆者)
つまり、2022年4月から「お客さんからサインはもらわなくていいよ」とカード会社が啓蒙し続けてきた。それと同時に、クレカ利用者からサインを求める店が徐々に減っていった――そういう流れである。