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●東京の西の際“庶民の盛り場『蒲田』”で60年近く愛されてきた「町中華」。人情味溢れる85歳のご主人が提供する「餃子」と「レバニラ炒め」、そして「肉天ぷら」。
東京の西の際、羽田空港にも近い交通の要所『蒲田』には、1904年開業の「JR蒲田駅」、1922年開業の「東急蒲田駅」の他、1901年開業の「京急蒲田駅」があり、多摩川や東京湾近くの工場で働く人びとや大学や専門学校の学生、そして近隣の大森や羽田に多く点在する公営団地の居住者などが集まる“庶民の盛り場”です。
また映画「蒲田行進曲」の舞台になった「松竹蒲田撮影所」は大正から昭和初期までこの地にあり、かつては「流行は蒲田から」と言われるほど活気にあふれた街でした。今もJRと東急、そして京急のそれぞれの蒲田駅周辺には、蒲田西口商店街、京浜蒲田商店街あすと、蒲田東口・あすと、蒲田東急駅前通り会などの商店街があり賑わっています。
人情味溢れる笑顔は、もはや“蒲田名物”
蒲田駅西口、東急線沿いの通称“バーボンロード”から“サンロード蒲田”のアーケードの端に向かった横丁にあるのが1967(昭和42)年創業の『味の横綱』。「町中華で飲ろうぜ」(BS-TBS)の他、民放各局の情報番組にも登場している蒲田を代表する昭和の香りただよう中華屋さんです。2代目ご主人の高瀬敏彰さんは1940(昭和15)年生まれで今年85歳。
毎朝6時にお店に入りスープをつくりランチタイム以外は“ワンオペ”でお店を切り盛りする“人生100年時代”を象徴するような元気な笑顔が印象的な“街の爺さん”です。
「お客さんの為に」が口癖。無料サービスの「餃子」と「炒飯」

昭和の大阪万博が開催された1970年よりも、さらに三年さかのぼる1967年からお店で中華鍋を振っているご主人の口癖は「お客さんの為に」。その気持ちが表れているのが料理を注文すると無償で提供される「餃子(3個)」と茶碗の盛られた「炒飯」です。取材時にいただいた「餃ビー」に併せて提供されたのが写真の二品。「餃子」はもとより「炒飯」もビールのあてになる美味しさです。
常連さんに人気の「レバニラ炒め」

夕暮れ時、仕事終わりに“一杯飲りにくる”常連さんに提供された「レバニラ炒め」に惹かれて当方も注文。85歳とは思えぬ“軽快な鍋さばき”で作られる逸品はハイボールや酎ハイなどとの相性が抜群です。ボリュームもあるので無償提供の「餃子(3個)」と茶碗の「炒飯」で“完璧なディナー”が完成します。

食材の仕入れ先は開店以来ずっと変わらないそうです。仕入れ先の肉屋さんや八百屋さんも代替わりするなか、変わらぬご主人の笑顔は、もはや“蒲田名物”と言っても良いのではないでしょうか。
“昭和感”漂うカウンター
そしてご主人のオススメの“御馳走”は「肉天ぷら」
サービス精神あふれるご主人が撮影用に特別に2人前でご用意いただきました
1000円以下のメニューが多いなか、2000円以上の“御馳走”の中でオススメをお願いすると「『肉天ぷら』がいいよ」とご主人。天ぷらの衣に豆板醬などの下味がしっかりついているので、そのままでも美味しいのですが、ご主人のオススメ“お酢を少しかけて”いただくとサッパリとしたアジア風の味わいになり、こちらもビールがすすむ一皿です。仕事の打ち上げなど祝杯をあげたい時などに相応しい“御馳走”です。
いつまでも君臨していて欲しい“街の横綱”
お店の開店当時(1967年)は高度経済成長期、今よりも周辺は町工場が多く、そこで働く工員さんのお客さんが中心で、また近隣の商店街には洋品店や下駄屋などが並び今とは違う賑わいだったそうです。JR、東急、そして少し離れて京急と三路線が集まる『蒲田』の街には都心にはない“庶民の盛り場”としての“穏やかな安心感”が漂っていると感じます。そんな街で60年近く続く『味の横綱』。ご主人に店名の由来を伺うと「横綱の上はなくて、あとは引退するだけ」と答えました。いつもまで君臨していて欲しい美味しい“街の横綱”です。
●SHOP INFO

味の横綱
住:大田区西蒲田7-63−5
tel:03-3736-6463
営:月・木~日曜 11:00-20:00
休:火・水曜
●著者プロフィール
芳賀威彦
広告会社でダイレクトマーケティング、出版社でデジタルコンテンツを中心に営業と制作を経験。横丁好きの元・居酒屋部長。
仙台市生まれ。
(編集:DRCマーケティング株式会社)