
文具のとびら編集部
本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。今回は、今注目の筆記具を取り上げました。
第1回目は「KOKUYO WP」です。
(写真左からきだてさん、高畑編集長、他故さん)*2024年11月9日撮影
*鼎談は2025年2月25日にリモートで行われました。
紙を楽しむためのツール
「KOKUYO WP」(コクヨ) コクヨが提案する、書き心地やインクの表現にまでこだわったペン。砲弾型の樹脂製チップで、文字や図形、イラストを”軽やかに”書き出せるのが特徴の「ファインライター」と、粘度が低いインクと自重で書ける自由な書き心地が特長の「ローラーボール」の2種類をラインアップしている。
――今回は筆記具です。まずは「KOKUYO WP」から取り上げましょうか。新製品ではないんですけど、まだ1回も取り上げてないので。
【高畑】WPっていつ発売でしたっけ?
【他故】クラファンかなんかだよね。
――コクヨ公式ステーショナリーオンラインショップでの抽選販売の受け付けを2023年9月から開始して、一部店舗での取り扱いを10月から行っているみたいですね。それで2023年の12月から取扱店舗を拡大したんですね(*こちらの記事を参照)。
【高畑】だけど、世の中にあんまり出回ってない。未だに「クルトガダイブ」が手に入らないみたいな、そんな感じの流れじゃなかったかな。あんまり普通にお店で見てないけどね。
【きだて】最初に発売したときは、伊東屋とナガサワ限定!みたいな感じの販路じゃなかったっけ? すごい少なかったんだよね。
――確かそうですよ。
【高畑】あれはお店を限定してたんだっけ?
【他故】そもそも店が少なかったんだよね。
――最初は本当に少なかったみたいですよ。
【きだて】だから、12月の販路拡大でようやくって感じだよね。それでも、店頭で売ってるのをちゃんと見た記憶があんまりないな。
【他故】俺は有隣堂で見てるけどね。恵比寿の有隣堂は並んでた。でも、それぐらいかな。リフィルを買いに行く場所がないんだよ。
【高畑】俺も、リフィルを高崎のハイノートでしか見てないな。
――ホームページに取扱店一覧があるんですけど、やっぱり少ないですね。東京でも7店舗だけですね。
【高畑】だから、リフィルはネットで買ったもん。コクヨのECショップで買った。
【他故】俺もそうだったね。
【きだて】そうそう、それぐらいしかないのよね。都内でもそんなんだから、地方だともう通販しか手が無いケースも多いでしょ。
【高畑】地方だと、地域1番店みたいなところにしかないみたいな感じだね。
――各県1、2店舗という感じですかね。
【高畑】ああ、そういうことね。
【きだて】カラーリフィル欲しいんだけど、未だに買えてないね。
【高畑】新しく出た黒と緑でしょ?
【きだて】そうそう。
【高畑】最初に出たのが、緑にしか見えないブルーブラックでしょ。

【他故】緑っぽいやつね(笑)。
【高畑】ブルーブラックって言ってるけど、いわゆる万年筆のブルーブラックじゃなくて、ブルーグリーンっぽいやつ。
【他故】そうそう。
――皆さんは持ってらっしゃるわけですよね。ローラーボールとファインライターの2つありますけど、両方持ってるんですか?

【高畑】両方持っていて、多分僕と他故さんはそれプラスでウッドモデルを持ってるのかな?
【他故】そう、ウッドモデルと初期に買った2本。
【きだて】俺はウッドモデルを持っていない。
【高畑】僕も他故さんと同じかな。
【他故】僕はもうファインライターリフィルしか入れてないです。
【高畑】僕もそうですね。
【きだて】俺はこのローラーボール結構好きなんだけどね。
【高畑】実にローラーボールらしい、良いローラーボールではあるので。僕も複数本持ってるので、一つはローラーボールが入ってるんだけど、メインで使ってるウッドモデルはファインライターを使ってますね。
【きだて】WPを語るときって、どうしてもまずファインライターありきで語っちゃうじゃん。
【高畑】ローラーボールっていうもの自体は他にもあるからねってなっちゃうからね。それは確かにそうだね。
【他故】このファインライターの先っぽは、他の筆記具にはなかなかないんだよね。
【高畑】いわゆるサインペンタイプのものがあんまりないからさ。僕は割とサインペンで書くのが好きだから、サインペンはいっぱい持っているんだけど、多分、これまで世の中に出てきたサインペンの中で、1番まともな高級サインペンというか、まともな高級サインペンってこれぐらいしかないんじゃないって思った。
【他故】まともな(笑)。
【高畑】たとえば「フィラーレディレクション」があったじゃん。あれかなり重たい方に振ってるじゃない。
【他故】本体がね。
【高畑】「フィラーレディレクション」は、重量感のあるめっちゃ重たいボディで、なおかつエグゼクティブな指示棒として作ったわけじゃん。「Web会議で使います」みたいな使い方じゃん。ほかには、ぺんてるサインペンに伊東屋のカバーをつけるっていうのがあるんだけど。
――ペンジャケットですね。
【高畑】あれも確かにメタルボディになって、高級品っぽくはなるんだけど、元々あるやつに外側から被せてるから、ちょっと余計にでかくなるのと、あと前がプラスチックで後ろがメタルだから、後ろが重くなるんだよね。重量バランス的にはちょっと崩れるんだよ。
【きだて】そうなるよね。好みはあるだろうけど、正直、書きやすくはならない。
【高畑】それでいくと、サインペンのために設計された、ちゃんとした高級ボディのサインペンってこれぐらいしかないっていう気がするんだけど。
【他故】ああ、分かる分かる。
【高畑】「トラディオプラマン」とかもプラスチックの軸で、半分使い捨てみたいな感じだし。そう考えたら「ないね」って思って。
【他故】そうだね。
【高畑】個人的には、ファインライターがすごいなと思って、ウッドモデルにはファインライターを入れてるんだけど。とは言いつつも、きだてさんの言い分もよく分かる。これ面白いよね。ファインライターが面白いからついそれを語ってしまうけれども、確かにきだてさんが言うみたいにこれも個性のあるローラーボールだよね。
【きだて】そうそう。インクリッチというほどダクダクではないんだけど、インクの流れは感じられるレベルで、これがすごく気持ちいい。非常によくできたローラーボールだから、これを評価しないのはもったいないなと思って。
【高畑】確かにそれは分かる。
【きだて】あとサインペン系については、俺も文具王と一緒で、水性ボールペン以上に日常よく使うので、ちょっとこだわりがあって。サインペンに関しては「クリッカート」最強説を唱えてるんだ。
【高畑】軽くて細いボディがいい?
【きだて】それでノック式っていう。
【高畑】ああ、ノック式ね。
【きだて】アイデアのアウトプット用に「クリッカート」を使ってるんだけど、思いついたらノック一発で即書き出せるのが重宝してて。なので、WPの硬めのキャップをパチッと開けて……っていうのがちょっとまどろっこしくて、あんまり使わなくなっちゃった。
【他故】なるほどね。
【きだて】と言うてもそれは使い方の差なので、もちろんこのファインライターがいいのは当然分かってるんだけど。
【高畑】ローラーボールの方はどうなの?
【きだて】ローラーボールはそれこそ、ちょっと落ち着いて文章の構成を書き出すとか、そういう用途に使うことが多いので、キャップ式で全然不満はない。なのでWPでも使い方にマッチする。
【高畑】ちょっと言いにくいっちゃ言いにくいんだけどさ、ここに来て「ユニボール ゼント」もキャップ式のローラーボールなんだよ。
【きだて】そうなんですよ。
【高畑】というのと比べたりとかしちゃうじゃないですか。WPの方は3,000~4,000円ぐらいするんじゃなかったっけ?
――税込で4,400円ですね。
【高畑】それで、ゼントが3,000円だっけ?
【他故】ゼントの「シグネチャー」は3,000円。
【高畑】ゼントの方が安いんだよね。なんだけど、水性らしさを楽しもうってなったら、ゼントってノック式に入れられるからかな、まあそれもあると思うんだけど、水性の伸びやかさでいくとWPの方が良い。「コクヨじゃん」って思っちゃうんだけど(笑)。
【きだて】まあまあまあ、言わんとすることは分かるよ(笑)。
【高畑】筆記具メーカーとしての立ち位置でいくと、「コクヨ」ってこれ以外となると、「KOKUYO ME」の元「エラベルノ」だったやつ。あのゲルもかなり書き心地いいんだけどさ。
【きだて】そうね、話題にならなくて勿体なかったけど、あのゲルは地味に良くできてた。
【高畑】だけど、そこからいきなり飛んでこれだからさ。思わぬところから来たなと思ったら、かなり良いというのはある。まあ、ちょい高いのと入手しづらいっていうのが未だにあるので、もうちょっと一般的になってもいいかなっていう気がするんだけどね。
【他故】それはそうだね。
【きだて】4,000円のこのファインライターとローラーボールはそれなりに価値はあると思うんだけど。これはプレゼントにしたら、結構インパクトあるでしょ。
【他故】うん、それはいいよね。
【きだて】ギフト需要でも、絶対目はあると思うんだけど、何かもったいないなというね。
【高畑】認知度的にも、いろんな意味で広がってない感じはするな。もったいなくはあるね。
【他故】もったいないね。
【高畑】今となっては、色々と物価も上がってるし。でも、万年筆を使ってる人からしてみたら、4,000円って別に全然高いペンじゃないじゃない。
【他故】うん。そうだね。
【高畑】その中で、こういうものをコクヨが出してきて。まあ、もちろん中身はあれでしょ、ローラーボールがオートだっけ?
【他故】確かオートだね。
【きだて】セラミックボールだからね。
【高畑】ファインライターがサクラクレパスだっけ?
【他故】サクラクレパスだね。
【高畑】潔いのは、そこも明記してるじゃない。これ多分、「ペルパネプ」のおかげだよね。多分、「ペルパネプ」を作った時に、紙に合うペンって何なの? みたいな話をして、プラチナの万年筆とかゼブラのボールペンとか、全然違うメーカーのものを入れてきた。筆記具専門メーカーじゃないからこそなんだろうな。専門メーカーから、自分が欲しいって思っているリフィルをもらえるっていうのは、コクヨだからできてるっていうところはあるじゃん。同じ1本なのにリフィルが2種類あって、全然違うメーカーから供給されてるってのもちょっと面白い。
【他故】そうだね(笑)。
【高畑】そこら辺を割り切っちゃう。サクラクレパスもオートも、めちゃくちゃちゃんとしたペンを作る会社じゃん。
【他故】そうそう。
【高畑】そこからリフィルは買ってきて、ボディは自分でこだわるよっていうことで。これって、ペンの作り方もちょっと考えさせられる部分があるし。結果出来上がったものがさ、筆記メーカーじゃないのに使ってみたら、何かめっちゃ良かったりするじゃないですか。
【きだて】うん、そうなんだけど、何度も言うけど、この知名度の広がらなさが本当に惜しいというか。
【他故】ちょっともったいないよね。
【きだて】文具好きの中ではさ、「『エラベルノ』って良かったんだけど、メジャーになれなかったね」っていう失敗例としてなんとなく記憶されちゃってて。
【高畑】うん、まあ確かにね。
【きだて】その辺でね、ちょっとあやがついてる気はするんだよ。もちろん知らない人にとっては、そもそもコクヨがそんなの出してること自体が全然知られてないし。どちらにしてももったいない位置にいるっていうのが、どうしても気になる。本当に惜しい。
【高畑】それでいくと、この間1周年の限定品としてさ、ウワミズザクラの木でできているウッドモデルが出て、でこれが300本限定で(*こちらの記事を参照)。

【高畑】それからあとアルミの削り出しボディ、結構厚みのある削り出しのボディのやつが700本限定で、合わせて1,000本限定なのかな(*こちらの記事を参照)。その限定品を出したんだけど、ウッドモデルが3万円で、アルミ削り出しが2万円とかだっけ?

――そうです。桁が1つ違う。
【高畑】そうそう、別にラミーが作ったと思えばおかしくはない値段なので、別にそれはそれで構わないんだけど。でも、それも300本限定で即完売になって。僕とか他故さんも多分苦労して、抽選をくぐり抜けたりとか、お店に並んだりとかして手に入れるタイプのものだったんだけど。でもさ、これでいいのかっていう気はちょっとするよね。レジェンドだけ作って終わっちゃったらもったいないっていうか。いやいや、ちゃんと普及させようぜっていう感じはちょっとするんだけど。
【きだて】いや、普及してくれないと。筆記具って消耗品じゃん、リフィルの部分が。
【高畑】リフィルを作り続けてくれるかどうか。
【きだて】リフィルがいつか無くなるかもと思うと、やっぱり値段の高いものは買いづらいだろう。
【高畑】分かるな。それはあるよね。
【きだて】その辺もあって、難しいなこれ(苦笑)。
【高畑】元々としては、「ペルパネプ」あたりから、「良い紙を作ってるんだよ」というのをコクヨが言いたいというのがあるんだよ。「ペルパネプ」で色々な書き心地の紙を作りました、そうしたら筆記具にもこだわらないといけないよねと言って、「ペルパネプ」でいろんな筆記具を出した(*こちらの記事を参照)。それを「本気でやるとここまでできるんだよ」というのをやるために、こういったペンを作ったと思うんだよ。

【他故】うん。
【高畑】だとしたら、「ペルパネプ」とWPが総合的に、今でいうとモレスキンやロイヒトトゥルムみたいな感じで、ノートはノートでありつつの、ペンとしてはまあ見たことあるよねみたいな、それこそラミーとは言わないまでもそういう感じのブランドとして「これはこれでありだね」みたいな感じで。トンボの「ZOOM」が近いのかな。まあ、コクヨっていう名前がいいのかどうなのか分かんないけど。でも、「みんなペルパネプ知ってるよね」みたいな感じで残ってくれたら全然正解だと思うんだけど、ちょっとそこに行くためのステップが足りない気がする。中間がなくて、ポンって。
【他故】ああ。
【高畑】コクヨの「キャンパス」からここまで繋がる間がなくて、いきなり飛び地になってる感じがするので、もうちょっと何か。逆に言うと、その中間があってもいいのかもしれないし。まあ、3,000円じゃなくても、1,000円とかあってもいいのかな。
【他故】ちょっと高級ライン過ぎる気がするよね。
【高畑】リフィルだけで500円するからね。もうちょっと広がってほしいよね。
【きだて】これに関しては、「リッチな筆記具やりたい」っていう思いがまずありきだったのかな。
【高畑】うん、そうだね。
【きだて】ここからもう1つ下がったランクを作るっていうのも、難しいのかもしれないんだけどね。
【高畑】だとしたら、「ペルパネプ」の時に、真っ白いボディのいろんな種類の筆記具を出すっていうのをやってたじゃない。あの状態をもっとキープするとかさ。あそこはあそこでキープしといて、その上位グレードとしてこういうのがあるよっていう感じで。「ペルパネプ」の白表紙のやつと白ボディのペンたちで。あと黒表示のあのドイツ装のやつとペンみたいな感じのランクはあってもいいと思うんだけど。「ペルパネプ」のペンはもう見ないじゃん。
【他故】見ないね。
【高畑】白いノートはまだあるんだけど、ペンの方はあんまり見なくなっちゃったから、多分続けてないんじゃないかなって考えると、いやいやそっちも続けないと地続きにできないというか。囲碁だと、こう繋いでいかないとここが囲えないみたいな、そんな感じがあってもったいないなと思う。実物を見たらめちゃくちゃいいので、買えてよかったなとは思うけどさ。こっちのメタルボディもすごくいいよね。
【他故】うん、すごくいいよ。
【高畑】最初びっくりしたんだけどさ、ここの可動式のクリップがまたラミーみたいな削り出しかと思ったら、これプレスなんだよね。かっこいいの作るよね。
【高畑】僕としては本当にリフィルを出し続けてほしいんだけど。異色のサインペンみたいなものが出てきたっていうのは、すごいことだなって思ってるんだけどね。サインペンの地位が低いじゃん。
【きだて】そうなんだよね。日常筆記具としてのサインペンって、認知されてないというかさ。とにかく太くてドーンとした字を書くみたいな感じでしか思われてないじゃん。ぺんてるサインペンが基本的に強過ぎて、強調としてのサインペンしか使われてない感じ。強調と丸つけ用ぐらいにしか思われてないのがさ。日常筆記に使えば全然いいんだよっていうのを、もうもうちょっとみんなに広まってくれないともったいない。でないと、高級サインペンって言われても、みんなピンと来ないわけだよ。
【他故】そうだね。
【きだて】結局、「丸付け以外に何に使うの?」ぐらいな感じになっちゃうじゃん。
【他故】これで書くと気持ちいいんだけどな。
【きだて】その辺の文化的なバックボーンがないままに出し続けても、大分苦しいだろうな。どうしてもマニア向けの高級なものだけが残っちゃう感じ。本当に好きな人だけが買うみたいな。下支えがない感じはしちゃうよね。
【高畑】「プラマン」とかが好きな人はいるわけじゃん。あの「トラディオプラマン」の上ぐらいのところが何もないなって、WPが出てすごい思ったんだよね。それは世界的に見てもやっぱりないじゃない。海外ならあるのかっていったら、それもないじゃない。でも逆に、ここよく作ってくれたなって感じではあるんだけどね。
【他故】それは思う。
――これはぺんてるサインペンとかと比べると細書きなんですか?
【きだて】細いよ。
【高畑】細くてちょい硬い。書いていくとやっぱ潰れてはいくけど、ぺんてるサインペンとかに比べるとちょい硬い感じかな。ぺんてるサインペンみたいな潰れ方はあんまりしないっていうか。
【きだて】そうだね。
【高畑】ぺんてるサインペンって、書いていくと段々丸くなっていくんだけど、WPは長く使ってると若干目詰まり感が出てくる。サインペンって、中が見えないから終わりが分からなくて、リフィルの替え時はめっちゃ悩む。
【きだて】若干丸まって太くなっても書けちゃうから、まだもう少し書いたりとかそういうのもあるしね。
【高畑】あとインクが、最初はもっと並々とインクが出てた気がするんだけど、いやまだインク出るしみたいな。かすれるところまで書くと大分書き心地が変わってくるから、どこかで1回替えてるんだけど。
【きだて】変わるっていっても、グラデーション的に変わってくから、何か手が馴染んじゃってるんだよ。
【高畑】そうなんだよね。
【他故】僕はこれで日記を常につけてるんだけど、インクに関しては、明らかに新品と使い続けたやつは違うので。
【高畑】ちがっちゃうね。
【きだて】違うな(笑)。
【他故】もう如実に違う。
【高畑】だから、ちょっとずつ渋くなってくるよね。
【他故】そうね。
【高畑】書いてるときの角度が、寝かせたときにどこまでの角度で書けるかっていうのが、段々狭くなってくる感じがするんだよね。最初はね、寝かせても立ててもすごい気持ちがいいんだけど、だんだんちょっと渋くなってくるっていうのはあるんだよね。
【他故】俺、このペン先が潰れたこと1回もないんだけど。
【高畑】潰れてはない。立てたら絶対書けるんだけど。
【他故】そう。
【高畑】俺が万年筆持ちをしちゃってちょっと斜めになるので、だから斜めになるとインクの出が渋いなって感じになって、それで交換するみたいな感じかな。
【他故】もう書けなくなるまで書いていって先っぽが潰れなかったサインペンって初めてな気がするんで、ものすごく好きなんだけどね。僕にとっては筆記線が変わらずに最後まで行けるっていうか、むしろ最後の方が渋くなって線が細くなる。
【高畑】そうそう。最初の頃のツヤツヤとインクが出てくるのが、ちょっとなくなってくる。まあ、これに限ったことじゃないけど、サインペンは終わりが分かりづらいので。
【他故】思い切って替えるしかないんだけどね。
【きだて】寝かせ書きに関して言うと、これのローラーボールはめちゃめちゃ寝かせてもインクが出るんだよね。
【高畑】そう、そこそこ。
【きだて】筆記角度が30°を切っても、まだ普通に書けるのよこれ。
【高畑】これは、水性ボールの水性らしい良いところがそのまま出てますっていうボールペンなんです。
【きだて】そうそう。その辺は、さすがオートはいいの作るなっていう感じで。
【高畑】あと、このボディのバランスもすごく良くて。だからさ、ちょっと別のところでも言ってたんだけど、ゼントって別に水性らしくないじゃんって思うんだよね。
【他故】まあそうだね。
【高畑】水性の良さってこっちじゃんみたいな感じがするので、俺的にはざ・水性っていうかローラーボールの良さをちゃんと追求したかたちになってるなって思うし。先端に真鍮を使ってるのいいよね。ちゃんと重さがあって、書いたときバランスがすごい良い。俺はキャップつけない派なんだけど、バランスが良くて楽に書ける。
【きだて】そうなんですよ。これ本当にね、下重心がすごいので、グリップがツルツルしててもそんなに気にならなく書けるのよ。
【他故】お~すごい(笑)。
【高畑】きだてさん的にはこれツルツルグリップだもんね。
【きだて】そうそう。だから、握ってグッと筆圧つけなきゃっていうプレッシャーがないのよ。ファインライターもローラーボールも、とりあえずペン先が紙に触れてたら書けるじゃん。そこでさらに低重心だから、この三角形のグリップのところに指を乗っけてりゃ書けるわぐらいの感じ。
【他故】ああ、分かる分かる。
【きだて】そういう意味でも、本当にね使いやすいペンだとは思う。
【高畑】この間、ライブで書きながら「もはや水性、油性が分かんないよね」みたいな話をしてたんだよ。まずゼントって、どっちかって言うと水性よりゲル寄りな感じがしてて。ゼントが水性らしいっていうぐらいだったら、「シグノ307」とかの方がゲルなのに水性みたいだし。
【他故】緩い感じがね。
【きだて】307は特例過ぎるだろ(笑)。
【高畑】だから、「エナージェル」とか307とかはゲルなんだけど、水性っぽいし。三菱だったら「ユニボールアイ」があるじゃない。これは「Vコーン」と同じような水性だから。でも、ゼントはどっちかというとゲル寄りみたいな感じ。「ユニボールエア」は、もはやサインペンみたいな感じがするんだけど。何かそことも方向性が違う感じに、水性の良さをもうちょっと外に出した感じがするので。WPに関しては、本当にちゃんと水性の良さをちゃんと引き出してる感じがすごいする。オートだって、結構これと違うじゃん。「CR 01」も確かに水性の良さが出てるけど、それよりバランス良くない?
【他故】なんか違うね。
【きだて】オートが、例えば1,500円ぐらいで、このリフィルの入る軸を作ってくれないかな。
【高畑】分かる分かる。オート「CR 01」が、間に入るっちゃ間に入るみたいな感じではあるんだけど、でもボディが全然違うから。これは本当に、どっちも不思議な魅力があるっていうか。油性やゲルで勝負してないところが、多分下手に勝負してもなんか変な比較されるだけっていうのはあるからとは思うんだけど、あえてなかったのがむしろ良かったのかなっていう気がする。
【きだて】WPが出るまでしばらく、まあオートはともかくとして、水性ボールペンがちょっと空いたじゃん。新しいものがそんな出てなかったというか。
【高畑】そうだよね。オートの「CR」とかは、まあモデルチェンジっていう感じで。
【きだて】下手すると、その前って「Vコーンノック」だったんじゃないかぐらいの感じ。
【他故】そうかもね。国内ではそうかも。
【きだて】なので、ちょっと注目して欲しいな。
【高畑】あと、ローラーボールっていうと、どうしても海外メーカーのものが多い。シュナイダーとかそういうところのやつだったり。
【他故】ヨーロッパ系のイメージがあるね。
【高畑】ヨーロッパ系のがちょっとちょこちょこあるんだけど。でも、それもそれでさ、プラスチックボディの比較的300円から500円までの間みたいなのが多いから、なんか全然違う方向に来たっていうのは、上手い感じだし。
【他故】良いペンなんだよね。
【高畑】良いペンなんだよ。だからマジで一つ心配なのは、さっききだてさんが言った通りで、これはリフィルがないとどうしようもならないやつだし、買いだめしたってサインペンなんて枯れるから、もうずっとやり続けてもらうしかないジャンルだから。ここだよね。
【きだて】だからやっぱね、継続のためにもオートとサクラでそれぞれの軸を作ってくんないかなっていう。リフィルを生かすために。
【高畑】このリフィルが入る軸を作って、リフィルを作り続けるってことね。
【きだて】そうそう、そういうこと。
【高畑】俺はこのケースが気に入ってるから使いたいんだけど、これは多分、コクヨ専用リフィルだものね。
【他故】多分そうだと思う。
【きだて】他ないでしょ。だって、サクラもこんな形のリフィルを使うサインペンなんか作ってないじゃない。だから、4,000円まで行かなくていいから、もうちょっと廉価なタイプでも使えると嬉しいなっていう。
【高畑】そうだね。
【きだて】それで書き味を覚えて、ちょっとずっしりした、もっとい軸が欲しいねっていう人がWPに行くっていう流れが、多分美しいんじゃないのかね。今の状況だと。
【高畑】それをコクヨが出してくれれば、それはそれでいいんだよね。
【きだて】まあ、それもそうなんだけど。
【高畑】でも、オートはかたちが似てるね。
【きだて】本当だね。
【高畑】「CR 01」と同じかもしれない。だから「CR 01」に入れられるかもしない。
【きだて】詰め替えができそうな感じするな。
【高畑】一応いけそうだね。だから、なくなったときに「CR 01」のリフィルを買ってきて入れるのはできるかもしれない。ただ、サインペンは他にないもんね。
【他故】まあ、サインペンはこれしかないからね。
【高畑】それは確かに困った問題ではある。
【きだて】ローラーボールも、「CR 01」と全く同じじゃないでしょ?
【高畑】インクの色が違うから分かんないだけで、同じ仕組みかもしれない。黒で比べたら同じかもよ。もしかしたらね。逆に、新しい可能性としては、「CR 01」をサインペン化できることに気が付いた。
【他故】そうだな、できるできる。
【高畑】同じだったら、入っちゃえばいいんじゃない。キャップ閉めて先端が潰れなければ…いけますな。「CR 01」でもサインペンいけるなあ。ちょっと新しいことに気がついてしまった。
【他故】ははは(笑)。
【きだて】じゃなくて、「リフィルがないとどうしようもない」って話をしてんでしょ(笑)。
【高畑】だから、コクヨが撤退してもオートが、でもオートじゃないんだ。サインペンの方はサクラか。
【きだて】だから、ダメなんだって。
【高畑】コクヨが作り続けてくれないことにはね、だから頼むから作ってくれっていう感じだね。
【きだて】とはいえ、メーカーももう売れないやつはやっぱり切っちゃうじゃん。
【他故】そりゃそうだよ。
【きだて】まだ単価が高いものだから、もうちょっと粘ってくれるとは思うんだけど。
【高畑】作った責任はあるからねって言っても、何十年も責任を取ってくれるかどうかは分かんないからね。
【きだて】こっちは、気に入った物を何十年でも使いたいんだっつうの。
【他故】うん、それはそうだ。
【高畑】そういう意味で万年筆ってすごいなと思うのは、別にメーカーがやめても、違うインクで対応できたりするけど。
【他故】リフィルものは厳しいね。
【高畑】厳しい。まあでも、今から心配するぐらい残ってほしい感じがする。マジで、これはよくできてるから、やめないで欲しいぞっていう。やり始めたんだから、ちゃんとやってくれよっていう感じ。
【他故】とりあえず、リフィルを買いやすくしてほしい。そしたら、ある程度買い支えるから。
【高畑】ネットで買うしかないから、送料もかかっちゃうからね。僕は今、ちょっとしたネタ出しの落書きに使うペンがもうこれなので、メインの筆記具になっちゃってるんですよ。なので、すごいお気に入りですね。これ、ちょっと軽いんだよね。
【他故】そうだね、木軸は軽いからね。
【高畑】あと、滑る・滑らないでいくとこっちの木軸の方が滑らないっていうのもあるので。
【他故】あと金属軸は冬触りたくないっすよ。
――金属軸は冷たいから(笑)。
【他故】そう、木軸を手に入れて本当に良かったと思ってる。私も毎日、日記でこれを愛用してるので、もう片時も離せない。
――他故さんは結構使ってるから、結構インクがなくなっちゃうんですかね。
【他故】リフィルはもう3本目ですよ。やっぱり、減りが早い。
――まとめて買うしかないですね。
【他故】まとめで買った3本を使ってしまったので、また買いに行かないと。
――これは、品川のTHE CAMPUS SHOPに売ってるのかな?
【他故】あ、あります。私はこれキャンバスショップで買ったんですよ。
――じゃあ、そこに行けばリフィルも売ってるんですかね?
【他故】あるはずです。
【高畑】いやでも、コクヨはいい筆記具を時々作るよね。「リサーチラボペン」も最高にいいからさ。最近ちょっとコクヨを見直してます。
【きだて】うん。
【高畑】これは作り方も新しくていいんじゃないかな。餅は餅屋的な感じがあって。全然いいと思います。
――高額なペンだし、あまり販路を広げ過ぎず、大事に売っていこうっていう感じなんでしょうかね。
【高畑】元々そうですよね。俺が思うに、多分コクヨ的には筆記具メーカーになりたいわけじゃなくて、紙を楽しんでもらうとか、紙の良さを知ってもらうっていうブランディングの一つだと思ってるので。「ペルパネプ」なりなんなりのノートがもっと売れていくために。あと最近、アイデア出しのためのパッドみたいなのとか出してるよね。
【他故】ああ、あるね。
【高畑】ああいうのがちゃんと売れてくれないといけないっていう、多分最終的にはそっちだと思うので。だから、あくまでもコクヨの紙を楽しむためのツールだと思うので。うまく広がってくといいなって感じだね。
【高畑】そうそうそう。で、ペンと紙の相性とか言ってるのに、自社にペンがないのはやっぱ良くないっていうので、だったら最高のやつを作ろうとかすごいちゃんとしてるので。だからどこかのタイミングでコクヨの万年筆の高級バージョンが出たって別にいいとは思うんですよね。他の油性とかゲルとか出てもいいとは思うんですけど。それで、全部提携先が違ってたりとかしても全然俺はいいと思うんだけど。そういういいとこ取りできるのもいいとこだねと思うので。
*次回は「LAMY safari JETSTREAM INSIDE」です
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