2025年春のセンバツで新しい風を吹き込んだのが、創部4年目で甲子園初出場を果たしたエナジックスポーツ高等学院(沖縄)だ。
「判断力を上げることで相手のスキを突き、試合を優位に」
1回戦で至学館(愛知)に8-0と快勝した。その野球スタイルは独特だ。神谷嘉宗監督はベンチからサインを出さず、打者と走者がアイコンタクトして盗塁、犠打、ヒットエンドランなどを積極的に仕掛ける。
2回戦は優勝候補の智弁和歌山(和歌山)に4-9で敗れ、ベスト8入りを逃したが、2回以降は毎回走者を出して6盗塁と機動力を発揮。ノーサイン戦法で相手を揺さぶる戦術は大きな可能性を感じさせた。
「ノーサインは監督に依存せずに選手の考えを尊重した形ですが、実際に機能するかというと非常に難しい。エナジックスポーツは選手の技術が高いだけでなく、コミュニケーションを密にとっているのでしょう。身体能力で劣っていても判断力を上げることで相手のスキを突き、試合を優位に進める。時代を先取りした野球で参考になる部分が多かったですね」(関東圏の高校の指導者)
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「『野球の専門学校』というわけではありません」
エナジックスポーツ高等学院はどんな学校なのだろうか。
21年に通信制の学校としてスタートし、野球部は翌22年に創部。1年生だけで出場した同年秋の県大会でベスト8に進出すると、昨年(24年)の春季県大会で初優勝を飾った。
同じ年の夏の沖縄大会は、決勝戦で興南に延長10回タイブレークの末にサヨナラ負けを喫したが、驚異的なスピードで沖縄屈指の強豪校となった。
ただ、通信制の学校というイメージが強いため、「野球しかしていない」、「子供の教育という観点でどうなのか」と批判の声が上がったことも。
スポーツ紙記者は
「誤解されている部分があります。現在は全日制が併設され、野球部員は全日制で朝から授業を受けています。英語教育に力を入れ、世界で活躍する人材の育成が教育理念にあるのできっちり勉強をさせている。『野球の専門学校』というわけではありません」
と指摘する。
昨秋のドラフトでは強肩が武器の龍山暖が西武にドラフト6位で指名され、同校初のプロ野球選手が誕生した。ノーサイン戦法を貫き、全国の頂点に立てるか。今後の戦いが楽しみだ。(中町顕吾)