
2012年のワールドシリーズ・オブ・ポーカー(WSOP)で日本人初優勝を果たし、投資家としても大活躍している木原氏と、新進気鋭のエコノミストであり、日本ポーカーの祭典JOPTで2度の優勝経験を持つエミン・ユルマズ氏。本記事では、エミン・ユルマズ氏/木原 直哉氏による書籍『「確率思考」で市場を制する最強の投資術』(KADOKAWA)を一部抜粋・再編集して、今後の日本の景気動向の見解についてご紹介します。
インフレを追い風に日経平均30万円も?
エミン 僕は日経平均株価が1万円台だった2016年から、「2050年までに日経平均は30万円になる」と言い続けてきました。当時は笑われましたけど、現実は確実にそこに近づいているでしょう?
実際に10万円と言い出すエコノミストも、何人も出てきています。もちろんこれは、マイルドなインフレが続いていくことを前提とした数字です。大げさな数字を言っているつもりは全然なくて、むしろ保守的な予想だと思っているぐらいです。
日経平均が30万円に達するころには、新卒の月収は100万円ぐらいになっていると思いますよ。
木原 僕は毎年、WSOPに出場するために渡米していて、様々なものが値上がりしている状況を目の当たりにしているので、インフレがある方がむしろ自然だと感じています。
2050年に日経平均が30万円というのも、荒唐無稽な予想だとはまったく思いませんね。むしろ、その数字に対して上か下かにベットしろと言われたらかなり悩むぐらい、妥当な数字だと思います。
それにしても、誰もがインフレを実感している今ならともかく、日本全体がどっぷりデフレマインドに浸かっていたころから、エミンさんがそういう予想を出せたのは率直にすごいと思います。
エミン 僕が育ったトルコはハイパーインフレの国だから、もともとデフレマインドというものを持ち合わせていないんです。
教員だった母親は、給料を受け取ったら、すぐに使わないお金を全部金や米ドルに換えていました。子どものころから常に、モノがなくなるかもしれない、今日売っているものは明日同じ値段で買えないかもしれない、欲しいものは借金してでも早く買わないと手に入らない、という思いで消費と向き合ってきましたからね。
日本に来てもう30年近くなりますが、子ども時代をそういう環境で過ごしたので、デフレマインドに染まり切ることはなかったようです。コロナ禍でサプライチェーンが混乱したときも、モノがなくなることを恐れてすぐに車とパソコンを買ったくらいです。実際には警戒したほどのモノ不足にはなりませんでしたが。
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「デフレマインド」を脱却した日本が向かう未来
木原 日本人でインフレを経験した世代は、僕の親世代である70代以上でしょう。時間が経ち過ぎていて彼らも忘れているかもしれないし、それより下の世代にとっては、インフレは初めての経験です。どの世代も遅かれ早かれ、強制的にマインドを変えさせられることになるでしょうね。そうでないと生きていけませんから。
エミン 日本人は長いデフレに慣れきってしまっているから、突然インフレと言われてもピンとこないのは理解できます。ただ、本当は強制的に変えさせられる前に、いち早く自分でマインドを変えられたら、その方がずっと有利なんですけどね。
木原 結局、そういう人が得するんですよ。富は全体では増えることなく移転しているだけだから、インフレで困っている人がいたら、必ずどこかで得をする人がいる。
エミン インフレは、若い人には基本的に追い風です。インフレ下では賃金を上げないと人を採用できないので賃金は上昇します。しかし、働いていない人は賃金上昇の追い風を受けられないし、年金も賃金の上昇分ほどには増えないので年金受給者にとっては厳しい時代になるでしょう。
エミン・ユルマズ
エコノミスト、為替ストラテジスト
木原 直哉
プロポーカープレーヤー
※本記事は『「確率思考」で市場を制する最強の投資術』(KADOKAWA)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。記載内容は当時のものであり、また、投資の結果等に編集部は一切の責任を負いません。