「すき家の牛丼」が再び注目を集めているようです。その背景には、柔軟なメニュー開発で知られる同社の戦略があります。約1950店舗を展開し、牛丼チェーン首位を走るすき家は、幾多の値上げを経験しつつも低価格を維持し、多様なニーズに応えてきました。2023年度のゼンショーホールディングスの売上高は約1兆円に迫り、外食産業の成長を牽引。さらに、ライバルの吉野家が定番にこだわるなか、すき家はいち早くチーズ牛丼などの斬新な商品で若者層を掴み、市場シェアを拡大してきました。東山広樹氏の著書『国民的チェーンめし研究 〇〇の△△はなぜうまいのか?』(カンゼン)より、すき家の魅力を紐解いていきましょう。

『すき家』の「牛丼」はなぜうまいのか?



[画像1]『すき家』の「牛丼」 出所:『国民的チェーンめし研究 〇〇の△△はなぜうまいのか?』(カンゼン)より引用
イラスト:蒼井すばる

『すき家』といえば、あの「チーズ牛丼」を世に送り出したことであまりにも有名だ。あのぶっ飛んだ商品がなければ「チー牛」なるスラングも生まれなかった。もとい、著者はその柔軟性が「牛丼」の味にも反映されているという。

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『すき家』との出会いとは?

正直に告白すると、『すき家』の近くに住んでいた5年前。よく通っていたのだけれど、それほど好きではなかった。でも、最近めちゃくちゃ好き。たまに「牛丼食いたいな」ではなく「すき家の牛丼食いたいな」って衝動に駆られることがあるレベルで好き。



[画像2]『すき家』創業/1982年、1号店/生麦駅前(神奈川県横浜市)※『ランチボックス』として。閉店。店舗数/約1950 出所:『国民的チェーンめし研究 〇〇の△△はなぜうまいのか?』(カンゼン)より引用
イラスト:蒼井すばる

『すき家』の特徴を断言するなら「柔軟性」。牛丼チェーン界で一番柔軟性がある。その柔軟性が「牛丼」の味わいにも反映されている。

・甘さ加減:普通

・うま味加減:強め

・醤油加減:普通

『すき家』は、もともと大手三大チェーンの中では甘めな印象だった。だが最近、再訪してみて味のバランス感がまったく変わっていることに驚いた! うま味をトップに据えながらも、甘みと醤油感のバランスを実にうまく取っている。うま味は昆布を思わせるグルタミン酸系のうま味がドシッと強い。甘さも感じるけれど強すぎるわけではなく、醤油もキレを感じるけれど強すぎない、そのバランス感がすさまじい。僕は『吉野家』推しだけれど、この神がかったバランス感に抗えなくなりつつある。

『すき家』といえば、「チーズ牛丼」をはじめとした“ぶっ飛んだ”変わり種牛丼メニューをたくさん世に送り出した功績が目立つ。そのスタンスはまさに“柔軟”。過去、頑固路線を貫いていた王者『吉野家』の対抗馬として、新興チェーンの『すき家』が柔軟なメニューを次々に生み出していくことにたまらなくワクワクした。

時代は流れ、令和は“多様性の時代”。柔軟性をもって多様なメニューを生み出してきた『すき家』が現・牛丼チェーン界の王者として君臨したのは時代の流れを先取りしていたからなのかもしれない。

東山 広樹
株式会社マジでうまい
代表取締役

蒼井 すばる
イラストレーター