児童手当の増額や大学等の無償化制度など、子育て世帯に嬉しい制度の拡充が進んでいます。とはいえ、それらの制度も正しい情報を知って活用しなければ意味がありません。具体的な事例をもとに詳しくみていきましょう。2人の子どもを私立中学に通わせる石川亜希子AFPが解説します。※プライバシー配慮のため、個人情報を含む一部情報は加工しています。

家計は火の車だが…教育費支援制度が長年“対象外”だったA家

横浜市に暮らすA家。Aさん(49歳)と妻Bさん(48歳)のあいだには、3人の子どもがいます。上から高校3年生の長男、中学2年生の次男、小学5年生の長女です。

Aさんの年収は約1,300万円あり、パートのBさんの年収約200万円をあわせると、世帯年収は約1,500万円です。賞与を除いた毎月の手取りは、夫婦合わせて70万円ほどになります。

しかし、A家の支出は家族5人の生活費平均を大きく上回っています。

総務省の令和6年家計調査※1によれば、家族5人の生活費は平均約36万円ですが、A家は約70万円の手取りギリギリか、赤字になってしまう月もあります。支出の大部分を占めるのは、住居費と教育費です。

まず、住宅ローン返済額は、管理費なども含めると月20万円近くにのぼります。また、私立に通う長男と次男の学費に加え、中学受験を控えた長女の塾代を合わせると、教育費もばかになりません。世帯年収1,500万円でも決して生活に余裕があるとはいえない状況です。

にもかかわらず、世帯年収が高いことから、児童手当など公的な補助の恩恵はまったく受けられません。長男は都内の私立高校に通っていますが、東京都の高校授業料無償化制度も対象外です。

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「児童手当拡充」のニュースに歓喜も…AさんとBさんの手痛い失敗

そんなある日のこと。Bさんはテレビのニュースを見て、思わず声をあげました。令和6(2024)年10月から、児童手当が大幅に拡充されるというのです。

「所得制限がなくなって、さらに子どもが3人以上いる場合は増額されるのね! これまでこういう制度は蚊帳の外だったから、うれしいわ~」

しかし、12月に入り、ママ友と立ち話をしていたときのことです。

ママ友「通帳見た? 数万円でも児童手当があると助かるわね~」

Bさん「うそ! もう入ってるの!?」

早速口座を確認するも、それらしい入金はありません。

焦ったBさんはなにかの間違いかと役所に問い合わせてみたところ、「児童手当認定請求書」を提出する必要があったことが判明。A夫婦は、お互いに相手が申請したと思い込んでいたのです。

深刻な夫婦喧嘩に発展しそうになりましたがひとまず慌てて申請し、その後なんとかA家も児童手当を受けることができました。