元ジャンポケ斉藤慎二被告「不同意性交等罪」で在宅起訴、裁判の行方は…有罪なら“一発実刑”も?【弁護士解説】

お笑いトリオ「ジャングルポケット」のメンバーだった斉藤慎二被告が昨年7月、東京都新宿区の路上に止まっていたロケバスの車内で、20代女性に性的暴行を加えたとして書類送検されていた事件。

3月26日、東京地検が「不同意性交等罪」と「不同意わいせつ罪」で斉藤被告を在宅起訴したことが新聞各紙の報道でわかった。

SNS上では「有罪確定か…」「示談金が支払えなかったのでは」などさまざまな臆測を呼んでいるが、斉藤被告を待ち受ける裁判は一体どうなるのか。

「在宅起訴」とは?

まず、今回斉藤被告は「在宅起訴」されたが、通常の「起訴」と何が違うのか疑問を持った人もいるだろう。

刑事事件に多く対応する杉山大介弁護士はこう説明する。

「『在宅起訴』という言葉があることで混乱を生じさせていると思いますが、これが通常の起訴です。

逮捕・勾留(身柄拘束)されていない被疑者が起訴されるケースは、この世に山ほどあり、今回もその一つに過ぎません」

「示談成立」でも起訴されることはある

斉藤被告の起訴に関する一連の報道で、NEWSポストセブン(3月26日配信記事)は斉藤被告を知る芸能関係者のコメントを以下のように紹介している。

〈斉藤は被害を訴える女性側と示談を成立すべく、弁護士を介して交渉を続けていました。しかし、女性側から提示された額が斉藤側の想定した額と離れていて、斉藤も“この金額では示談できない”という考えになったようです。親しい人々から“示談しなければ起訴されてしまう”というような助言もあったようですが、斉藤は法廷で意見を主張したいと考えているようでした〉

記事にもあるように、一般的には起訴される=示談していないことが少なくない。

杉山弁護士も、本件においては示談をしていないようであると推測しつつ、「たとえ示談が成立したからといって、起訴されないとは限らない」とも話す。どういうことか。

「示談の成立が必ず不起訴を導くわけではありません。示談の際の内容によって、証言者が法廷で証言を行わなくなるなど、公判の成立余地がなくなるのであれば不起訴は固くなるでしょうが、あくまで減刑効果が認められるだけで起訴は可能な示談もあります。

示談というのは、特定の問題について、金銭を支払って民事的に解決をしたことを示す言葉でしかないのです」

いずれにしても「起訴」されてしまった斉藤被告。その意見は今後、公開の法廷で明らかにされることとなる。

有罪になれば“一発実刑”の可能性が高い?

冒頭のように、地検は斉藤被告を「不同意性交等罪」と「不同意わいせつ罪」で起訴したという。

現時点では斉藤被告の認否は明らかになっていないが、事件当初の報道にあったロケバス車内での性的な行為が事実と認められれば、より重い「不同意性交等罪」の法定刑で処断されるだろう。

不同意性交等罪の法定刑は5年以上の有期拘禁刑(※)である。

※2025年6月1日から懲役刑と禁錮刑が廃止され、拘禁刑に一本化されるが、斉藤氏の事件ではまだ懲役刑が適用される。

このような、法定刑が3年以上の有期拘禁刑では、原則として執行猶予がつかず“一発実刑”となる。

では、不同意性交等罪に問われた被告人が、情状酌量により刑が3年以下まで減軽され(刑法66条、68条3号参照)、執行猶予を得ることは現実的なのだろうか。

杉山弁護士は「証拠や事件記録を見ていないのでわかりません」とした上で、一般論として以下のように語る。

「そもそも、どういう不同意性交だったのか、行為態様とそれによって生じた結果、そしての行為の背景事情といった要素によって、量刑の『基軸』が決まります。それが懲役5~6年に相当するようなケースであれば、事前に被害者との間で示談が成立しているなど考慮できる要素があったとしても、執行猶予が付く3年以下に落とすのはほぼ不可能だと思います」

起訴後の有罪率は99.9%…主張はどうなる

2023年度に刑事裁判の判決が確定した人員は20万1990人。このうち無罪判決だったのは79人で、起訴された場合の有罪率は実に99.97%に上る(令和6年度版犯罪白書より)。

前述のように、現時点で斉藤被告の認否は明らかになっておらず、裁判上でどのような主張がなされるのかはわかっていない。

しかし、「無罪」を主張する場合、厳しい戦いになることは間違いないだろう。

杉山弁護士は斉藤被告の今後の主張内容について「事件記録の閲覧や当事者の話を聞いていない私には言及しにくいところですが」と前置きしつつ、「一般論として、他人に見られやすいなど、通常、性的な行為に及ばない場所での性行為に『同意があった』とするのであれば、それなりの背景事情が示されなければならないと言えます」と見解を示す。

「不同意性交で有罪になる場合、生半可な反省の主張や示談をしただけでは、実刑を回避できなくなっているのも現実です。仕事の復帰も絶望的な現状としては、リスクや困難さを承知でも、斉藤氏は事実を争う主張をされるのではないかと感じてはいます」(杉山弁護士)

その上で、事件と直接関係のない私たちが、今後、斉藤被告の裁判やその報道を受け止める姿勢について、次のように述べた。

「無罪主張がされるのであれば、裁判に関する推移を冷静に見守るべきというのが私の考えですが、見守るにしても、情報の偏りには注意が必要です。

というのも、報道機関の多くが、検察庁から聞いた話をそのまま横流しするような報道をします。裁判では、検察官の冒頭陳述のみを聞いて帰る記者も見ることがあります。

記者が検察からの情報ベースで書いている記事と、実際に裁判で受ける印象が異なるということはまま起きるので、『誰が主張している未確定の事実なのか』を気にしながら情報に接していただきたいと思います」