『大阪・関西万博』開幕直前でも“中止”求める声 「ゴンドラ横倒し」「開催見送り」「将棋倒し」過去万博のトラブルはつきものだったが…

大阪・関西万博(正式名称:2025年日本国際博覧会)が4月13日の開幕(~10月13日)へ向け、いよいよカウントダウンに入った。だが、聞こえてくるのは軽やかで胸が高まるような音色でなく、非常ベルのようなピリピリした耳を刺激する不快な音だ。

「中止せよ」の理由は?

その最たるものは「万博中止」を訴える声。「いのちと安全最優先!あらためて大阪・関西万博の中止を求めます」と声を大にするのは、共産党大阪府委員会。その根拠は、万博会場となる大阪・夢洲の建設現場でのガス爆発事故だ。

事故は1年前だが、埋め立て人工島の同エリアはいまも爆発濃度のメタンガスが検知されており、「2820万人もの来場者を見込む万博会場として極めて不適切」(同前)というわけだ。同委員会はほかにも、防災対策、熱中症リスクなども理由とし、開催中止を強く求めている。

「フルバージョンで開催できるのか…」という不安の声も充満している。開幕直前になっても、未完成のパビリオンが目立つことがその根拠だ。

前大阪市長の松井一郎氏は、自身のYouTubeチャンネルでその理由について「海外のAタイプのパビリオンは参加国が全て建設するということになっている。それぞれの材料も参加国から日本に運んできて参加国の伝統的な建物を建てているということ」とし、万博ならではの難しさを明かしている。

アクセス面を心配する声も多い。EXPO 2025 大阪・関西万博公式Webサイトは会場へのアクセスについて、「大阪メトロ中央線と主要鉄道駅からのバス利用」の2つを推奨している。会場に乗り入れる鉄道が地下鉄1本となれば、もしも人が押し寄せた場合、ホーム内やその周辺でかなりの混雑も予想され、会場入りまでに一苦労という状況は十分考えられる。

鉄道は地下鉄1本のみ(Taisuke / PIXTA)

入場するための“手形”となるチケットについても、不満の声が漏れ聞こえてくる。その理由は「買いにくさ」だ。大阪・関西万博は、「並ばない万博」を目指している。その志やよしだが、結果、万博IDの登録を必須とし、そのうえで来場日時の予約、さらに各パビリオンの観覧予約も別々に必要な仕様となり、ややこしくなっている。

また、アンバサダーに就任していたお笑いコンビのダウンタウンが「活動休止中」を理由に、退任したことも想定外の逆風となった。

もはや、やることなすことケチをつけたくなるようなことばかり。それが、開幕直前の大阪・関西万博の実状だ。さすがに気の毒にもなるが、過去の万博を振り返れば、トラブルはつきものだったことがわかる。

過去の万博トラブル

1970年の大阪万博は人が押し寄せ、トラブルも発生した(てるさん / PIXTA)

今回の万博と比較されることの多い1970年の大阪万博。その会場建設では318件の労災が起き、17人が命を落とした。開幕2日目にはゴンドラが強風にあおられて突然横倒しになる事故があった。

さらに開幕3日目には動く歩道で、乗っていた人が将棋倒しになる事故が発生。会場完成が開幕ギリギリとなり、事故防止訓練が十分にされなかったことがアダとなったといわれる。会場内の食堂では食中毒も発生した。

1996年3月に開催予定だった東京臨海副都心の「世界都市博覧会」は中止された。都知事選の公約に掲げた青島幸男氏が当選し、就任後、それを果たす形で前年に開催見送りを正式決定した。

2005年の愛知万博は、会場候補地の環境破壊への批判が国内外から強く、当初の計画から規模の縮小を迫られ、テーマも「環境志向」に一転。開幕後は、数館の展示が間に合わず、事前予約システムが予約殺到で開幕2日目から約1週間使用できなくなるなどのトラブルが発生した。

このように、期間限定で世界各国からパビリオンが出展される万博は、計画通りに進めることが難しい側面もあり、ギリギリの状態で開催にこぎつけるケースが多い。加えて、開幕後には国内外から大量の見物客がなだれ込み、どうしてもトラブルが発生しやすい状況になってしまう。

開催および運営に莫大(ばくだい)な費用(大阪・関西万博への国費負担は1600億円超の試算)がかかることから、批判にもさらされやすく、そこに明確な意義や効果を感じられなければ反対意見も噴出しやすい。

大阪・関西万博の見どころは

「最大」の見ものはリングだ(EXPO 2025 大阪・関西万博公式Webサイトより)

それでも大阪・関西万博はあと2日で開幕を迎える。当初から注目されていたのは、1周約2キロメートルの世界最大級の木造建築物「大屋根(リング)」だ。3月4日には世界最大の木造建築物として、ギネス世界記録に認定されている。

会場の主導線の役割を担い、場内の移動を円滑にし、約12メートルの高さの屋上からは瀬戸内海や大阪の街並みを一望できる。歩いて一周するだけでもひとつのアトラクションとして存分に楽しめそうだ。

パビリオンでは参加の約160か国の文化を体験できるほか、国内パビリオンではAIやロボットなど最先端の技術を見て・触れることができる。多種多様なイベントも連日用意されている。

世論からの逆風がおさまる気配はないが、これもある意味、万博では“恒例行事”といえる。開幕まで待ったなしとなったいま、本番では事故やトラブルでなく、期待を上回るイベントの魅力で悪評を吹き飛ばし、話題を集めてもらいたいものだ。