
グローバル人材を育成するための教育プログラム「国際バカロレア」。導入するインターナショナルスクールも少なくありません。国際バカロレアのプログラムで教育を受けた生徒は卒業後、どのような進路を歩んでいるのでしょうか? 柴田巌氏の著書『未来をつくるインターナショナルスクール経営戦略』(プレジデント)を基に、グローバル人材育成に特化した教育について紐解いていきます。
「実社会の問題をどう解決するか」を学べる国際バカロレア
国際バカロレア(IB)は、幅広い教科を網羅するオールラウンドなカリキュラムを提供し、特に「実社会の問題をどう解決するか」に焦点を当てた学びが特徴です。
たとえば、「軽量で丈夫、スピードの出るスケートボードをつくりたい」と考える生徒がいる場合、素材の選定や形状設計を行い、数学的に実証するための実験を行います。数学の幾何、代数、三角関数、さらに物理学の知識が必要となり、生徒はこれらを学びながら、リアルな問題解決に取り組むことになります。
また、「バスケットボールのスリーポイントシュートを上達させたい」と考える生徒は、ビデオ解析を活用してシュートの角度や力を分析し、そのデータを基に最適なシュート方法を見つけ出します。このプロセスには、数学や統計学、データ解析のスキルが必要であり、国際バカロレア(IB)の数学教育は単なる公式の暗記ではなく、実際の事象を数値に置き換え、論理的に解決する能力を養うことに重点を置いています。
国際バカロレア(IB)はオールラウンドな教育を提供する一方で、卒業後に実社会で直接価値を持つ内容にも重点を置いています。
たとえば、高校課程のディプロマ・プログラム(DP)では、数学のカリキュラムの傾向が確率と統計に集中し、三角関数の高度な領域等は希望者のみが学ぶ選択制になっています。これは、日本の高校で数学Ⅲが選択制になっている状況に似ています。
ただし、国際バカロレア(IB)は広範な知識とスキルを提供するものの、特定分野に特化した才能を伸ばすには限界があるという指摘もあります。芸術やスポーツなど、特定の分野で突出した才能を持つ生徒には、それに応じた特化型のカリキュラムが求められます。
特定の分野で突出した才能を持つ生徒も育てる
アオバジャパン・インターナショナルスクール※では、創立者レジーナ・ドイ氏の音楽家としての背景もあり、文化や芸能分野で活躍する卒業生を多く輩出しています。高等部では、国際バカロレア・ディプロマ・プログラム(IBDP)に加え、独自に構築されたグローバル・リーダーシップ・ディプロマ(GLD)という選択肢も提供しています。
このGLDは、将来のキャリアを逆算して設計されたカリキュラムで、特定分野に強い関心を持つ生徒の専門性を高めるために構成されています。IBDPとは異なり、GLDは生徒の個別の目標に合わせた柔軟な教育を提供しており、個々の生徒のニーズに応じたサポートを行います。
アオバジャパン・インターナショナルスクールは、国際的な教育評価機関であるCIS(Council of International Schools) およびNEASC(New England Association of Schools and Colleges)の認定を受けており、卒業証書は国際的に評価されています。この認定により、生徒たちは日本国内だけでなく、世界中の大学へ進学する道が開かれています。
日本の大学も、これらの認定を受けた教育機関の卒業生に対し、大学入学資格を認めています。最近では、プロゴルファーを目指す日本人女子生徒がGLDを選択し、オーストラリアを拠点にゴルフツアーに参加しています。彼女は、将来アメリカの大学に進学してアスリートとしてのキャリアを積むことを目指しており、学業とスポーツを両立するためにGLDのカリキュラムを活用しています。
このように、GLDは生徒一人ひとりのキャリア目標に合わせた柔軟な学びを提供し、個々の成功を支援しています。IBDPとGLDはどちらもグローバルな視野を持つ教育を提供していますが、異なる強みを持っています。IBDPは幅広い知識とスキルをバランスよく習得するためのオールラウンドな学びを提供するのに対し、GLDは生徒の興味やキャリア目標に特化したカリキュラムを通じて専門性を高めることを重視しています。
両者はそれぞれのアプローチで生徒を支援し、グローバル社会で活躍するための土台を築いているのです。
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インターナショナルスクール卒業後の進路
インターナショナルスクールの卒業生は、国際的な舞台でその才能を発揮し、多様なキャリアを築いています。
アオバジャパン・インターナショナルスクールの卒業生も例外ではなく、それぞれが自身の情熱と目標に基づき、さまざまな道を歩んでいます。当校では、AI分野で起業を目指し、テクノロジーを活用して社会課題の解決に取り組む生徒や、日本の伝統工芸を世界に広め、文化交流とビジネスを融合させたビジョンを実現しようとする生徒など、多様な目標を持った生徒が育っています。
また、複数国に移住してきた経験やアオバ入学後も多国籍な生徒と学びをともにしてきた経験を活かし、異なるバックグラウンドの人々と協働しながら国際的なキャリアを追求する生徒もいます。さらに、当校のオンラインプログラムを利用しながら、オーストラリアでプロゴルファーを目指して活躍している生徒もいます。
このように、当校の学びの環境は、地理的な制約を超え、生徒たちが個々の目標に沿って自由に成長できるように設計されています。
当校の卒業生は、世界中の名門大学にも進学しており、タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)が発表する「世界大学ランキング」で高く評価される大学にも合格しています(図表)。
進学先は、理工系、医療、環境学、心理学などの科学分野から、ビジネス、法学、文学、教育などといった文系分野、芸術、スポーツ、料理、音楽といったクリエイティブ分野に至るまで多岐にわたります。生徒一人ひとりの興味や関心に応じて幅広い学びの場が提供されており、そのキャリアパスも個性と情熱に基づいて支援されています。
当校の教育方針は、単にランキング上位校への進学を目指すだけではありません。生徒がそれぞれの「Passion(情熱)」を追求し、自ら学び、将来の目標に向かって主体的に進路を選択できるようサポートすることが当校の目指す教育です。
この方針のもと、当校では生徒が自己表現力や探究心を磨き、卒業後も自分の情熱を反映した分野で成果を上げられるような環境が整っています。
柴田 巌
株式会社Aoba-BBT
代表取締役社長