アメリカの税に関する裁判の難しさは日本の比ではありません。通常の確定申告に加え、複数の情報開示書類(Information Return)の提出が義務付けられ、怠れば高額な罰金、時には刑事罰にまで発展することもあります。本稿では、アメリカにおける海外資産申告制度の全容と、救済措置の仕組み、そして過去に実際に起きた判例をもとに、制度の厳しさと申告漏れのリスクについて詳しく解説します。

アメリカ人の複雑な海外資産・税務申告事情

アメリカでは、海外に何らかの資産を保有している場合、通常の申告書に加えて「International Information Return(国際情報開示報告書)」を提出する義務があります。これは、海外資産の活動状況を報告するもので、申告書と併せてIRS(内国歳入庁)に提出しなければなりません。

たとえば、アメリカ人(グリーンカード保持者を含む)が海外の投資資産をトラストを通じて所有し、そのトラスト名義で海外の証券会社に口座を開設した場合、以下の申告が必要になります。

・Form 3520:トラストへの資金の動きに関する報告

・Form 3520-A:トラスト自体の情報報告

・Form 8938:海外資産の詳細報告(FATCAに基づく)

さらに、アメリカ財務省には「FBAR(Report of Foreign Bank and Financial Accounts)」を通じて、海外金融口座の情報を開示する必要があります。これらのInformation Return(情報報告書)を提出しない場合は、それぞれに重いペナルティが科される可能性があります。

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救済プログラムの存在

とはいえ、一定の条件下では救済制度も用意されています。たとえば、単なるミスや不注意による提出漏れであり、意図的でなかったと認められる場合です。具体的には、会計士に依頼し、海外資産の存在をすべて開示していたにもかかわらず、その会計士が誤って「提出不要」と判断していたようなケースです。

このような場合、Streamlined Filing Compliance Procedure(SFCP)というプログラムを利用することができます。軽微な罰金が科される場合もありますが、過去3年間、海外に居住していた納税者であれば、罰金が免除されることもあります。