仕事が速く精度が高い人や、いつも上司や環境に恵まれているように見える人は、一体、何が違うのでしょうか。このようなビジネスパーソンが意識的に行っていることについて、田中渓氏の著書『億までの人 億からの人 ゴールドマン・サックス勤続17年の投資家が明かす「兆人」のマインド』(徳間書店)より一部抜粋・再編集し、詳しく解説します。

「80/20の法則」で信頼度と仕事の精度を底上げする

富裕層でもビジネスパーソンでも、稼ぐ人はいつでも「80/20の法則」(パレートの法則)を意識しています。とくに、「仕事の成果の8割は、全作業時間のうちの2割の時間で達成される」という時間に関する「80/20の法則」を大事にしています。

日々の仕事でも、全体の8割の準備が済んだら、残りの2割を仕上げて10割にしてから次の段階に駒を進めるのではなく、8割の状態で次に行こうと決め、まず先に進めることを優先していきます。8割のものを10割にする作業は、8割の時間がかかることも多いため、スピード感を優先して見切り発車で進めていきます。

実際にはこれを応用して、さらに細かくスピード感をもって物事を進めて「信頼貯金」をつくるのがおすすめです。

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資料作成も完璧を目指さない

上司から資料作成を頼まれたとします。

まずはデッドラインまでの、1割くらいの時間で、骨子をつくってしまい提出。意見を求めてしまいます。上司は早速きちんと取り掛かっていることに安心し、またそのスピード感に驚きます。自分としても明後日の方向に向かわず、方向性が確認できるというメリットがあります。

次に3割くらいの時間で、半分くらいの進捗のものを出します。骨子とは違い、中身のテイストが入っているので、「全体的にこういうテイストがいい」などのそもそも論が出てきても、まだまだ修正がききます。

最後にデッドラインの半分くらいの時間で8割のものを出す。圧倒的な速さで上司からの信頼を勝ち得ます。残りの2割を詰めるべきか、どのように詰めるか、そこは上司に判断を仰いでしまい、余った時間を詰めに使うのか、別のことに使うのか、決めてもらいます。

「デッドラインの半分の時間なんて厳しいのでは?」と思うかもしれません。ですが、要所要所で大幅な軌道修正リスクは排除しているので、あれこれ悩みながら、最後まで作業して、一発勝負よりも格段に速く仕上げることができます。

上司から「あれどうなってる?」という確認が入るのは、信頼関係ができていない証左ですが、この方法で進めている限り、「あれどうなってる?」と質問を受けることはなくなります。「満足度=期待値-結果」ということを意識するとよいでしょう。

ゴールドマン・サックスでも「期待値コントロール」という言葉は繰り返しいわれてきたのは前述したとおり。結果がつねに100点であることに越したことはありません。

ただ、現実的にそれはなかなか難しいので、相手をがっかりさせないためには、入口の期待値を上げすぎない、ということです。仕事を「やります!」と食い気味に引受けることはいいことですが、そういう人の仕事が雑だったりすると、必要以上にがっかりされてしまいます。

デッドライン直前まで成果物が出てこないときも、「きちんと仕上がったものが出てくるのだろう」と相手は期待します。

ここで細かいところでもミスなどを見つけると、全体的に雑なアウトプットに感じてしまうことがあります。「まだ粗いのですが」「3割くらいの仕上がりですが」などと期待値を下げながら、その都度さりげなく方向性を確認していくのが「期待値コントロール」「満足度コントロール」ということです。

時間とエネルギーを浪費することを回避し、最速のスピード感をもって最大の利益を生む活動にフォーカスできる「80/20の法則」で、仕事相手と信頼関係を築きましょう。