
総務省統計局「労働力調査」(2024年)によると、高齢化が進む日本では、65歳以上の4人に1人が働いている現状です。就労者の内訳は、60代後半では約5割、70代以上でも2割弱。この背景には、高齢者の生活を支える公的年金がほとんど、あるいはまったくないという厳しい現実も一定数存在するようで……。川村さん(仮名)の事例を通してFP相談ねっと・認定FPの小川洋平氏が実情をみていきます。
金が入ったら、使って、また働いて…
川村信男さん(仮名/67歳)は、地方の市営団地で一人暮らしをしています。
川村さんは20代のころからずっと建設現場で日雇いとして働いてきました。朝早くに職業紹介所に並び、その日に空いている現場に向かう。昼過ぎに仕事が終われば、仲間と飲んで麻雀……。それが日常でした。
「その日暮らしが気楽でよかった。金が入ったら飲んで、使い切って、また働いて……。若いころは体も利いたし、それでやってこれた」
30代で結婚の機会が訪れたときは、責任を重たく感じて断ったといいます。40代を過ぎるころには、もうすっかり「一人が当たり前」になっていたのでした。生活は常にギリギリ。手元にお金が残ることはありません。そのため、国民年金保険料を1円も払ってきませんでした。
50歳になり入社した建設会社で厚生年金保険への加入が義務になり、勤務していた10年間だけ保険料を支払っていました。受給資格の最低条件である10年をギリギリ満たした程度で、65歳になって受け取ることになった年金は手取りで月額わずか3万円程度。
「飲み仲間にも『さすがに嘘だろ』と突っ込まれたよ。確かに、思ったより少なかったな……。でも、もらえないよりはマシか」
そういって川村さんは、塩昆布を入れただけのほとんど白湯の雑炊をすするのでした。
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自由奔放な生活が招いたギリギリの老後生活
川村さんの生活費は切り詰めても月に約10万円です。2万円の家賃に、電気・ガス・水道で1万5,000円。食費は質素に抑えても4万円はかかります。年金収入だけではとても足りません。
そのため、現在も週に5日、倉庫の荷物運びやイベント設営のアルバイトを掛け持ちして働いています。時給はどこも1,000円程度で、頑張って支出を抑えても手元に残るのは月に3万円程度。貯金しようにも思うようにはいきません。
そんなある日、仕事中に腰痛で動けなくなってしまいました。幸い大事には至らず、会社が労災を使わせてくれたので、休業補償を受けながら生活することに。しかし、これまでとのギャップに大きな不安を感じます。