
住宅ローンを組む際、強制加入となる団体信用生命保険。団体信用生命保険とは、住宅ローンを借りる際に金融機関で加入する生命保険の一種です。債務者が死亡した場合、金融機関が保険会社から死亡保険金を受け取り、住宅ローンが完済される仕組みとなっています。近年では、ローン返済免除の対象が死亡時だけでなく、ガンなどの三大疾病にまで拡大された商品も増えてきていますが、思わぬ落とし穴もあるようで……。
ここ10年で激太りしてしまったサラリーマン
大企業で部長職を務める52歳の山本信吾さん(仮名)は、月収95万円です。仕事で多忙な日々を送る一方、若いころからの飲酒と外食の習慣が抜けずにいました。以前は体型を気にする必要がなかったのですが、40歳を過ぎたころから体重が増加し始め、特にお腹周りの脂肪が顕著になってきました。
健康診断の結果は深刻。標準体重を20kg以上もオーバーし、血液検査の数値も悪化していました。健康状態について内心気がかりではあるものの、飲食の場での交流をなによりも楽しんでいたのです。
しかし、あるときを境に山本さんの体調には明らかな変化が起こります。階段を上る際に、以前には感じなかった激しい息切れを覚えるようになったのです。「年のせいだろうか……運動不足かもしれない」と軽く考えていたものの、体調は悪化の一途を辿ります。手足の冷え、不眠、深夜の咳、疲労感。朝、出勤しようと床に置いた荷物を持つために屈んだだけで息が上がるという症状まででてくるように……。
心不全と診断
その日は出張でした。帰宅すると、山本さんは激しい動悸に襲われ、翌日に病院を受診しました。診断結果は心不全。そのまま入院することに。
医師からは、手術が必要といわれます。さらに、当面のあいだは仕事をセーブするよう告げられ、山本さんは途方に暮れました。役職もあり、部下を引っ張っていく立場にあるため、いままでの仕事のパフォーマンスが保てなければ収入減はおろか、今後の出世レースから転落する可能性もあります。会社を解雇されることはないでしょう。しかし「ここまで頑張ってきたのに……」という深い失望に繋がったのです。
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不幸中の幸い…?
専業主婦である妻に収入が下がるかもしれないことを伝えると、「これから住宅ローンはどうするの?」と不安な顔をされました。
今後、収入が減少する可能性を考えると、妻が返済を心配するのも無理はないでしょう。山本さんは37歳のときに6,600万円の住宅ローンを組んでいます。15年が経過し、住宅ローンの残債は約4,500万円。毎月の返済額は約25万円です(ボーナス払い別)。山本さんはあることを思い出し、妻に話しました。
「確か、うちの団体信用生命保険は三大疾病保障付きにしていたはずだ。心疾患になれば、住宅ローンの残債はゼロになるはずだよ」
山本さんが加入していた団体信用生命保険は「三大疾病保障特約付き」でした。「心疾患だからうちの住宅ローンはゼロになるよ。収入は減るわ、手術するわで最悪な状況だけれど、これだけは救いだな」妻と安心して笑い合いました。
――ところが、金融機関に電話で確認すると、担当者から予想外の言葉が返ってきます。
「山本さんの症状は保障の対象外となる可能性があります」
「えっ、なにかの間違いではないですか?」山本さんは血の気が引いていくのを感じました。