
配偶者や親など、家計の柱となる家族を亡くした場合に受給することのできる遺族年金。しかし、遺族年金を受け取った人のなかにはその金額に驚く人も少なくありません。株式会社よこはまライフプランニング代表取締役の五十嵐義典CFPが、具体的な事例をもとに「遺族年金制度」のキホンと注意すべきポイントについて解説します。
年に1回くらいは旅行に…“余裕の老後”を迎えられるはずだった夫婦
――これなら、年に1回くらいは旅行に行けそうだな。
年収900万円・会社員の宏さん(59歳)と専業主婦の理恵さん(56歳)は、結婚30年目を迎える夫婦です。宏さんの定年が間近に迫るなか、この日は老後の資金繰りについて計画を立てていました。
「そうね。旅行先はどこにする? これまで忙しかったから、なるべくのんびりできるところがいいわよね。あなたが頑張ってくれたおかげで、ある程度ゆとりのある生活ができそうだわ」
宏さんは60歳の定年後も再雇用で働く予定ですが、年収は半分の450万円まで減る見込みです。とはいえ、これまで堅実な生活を送ってきていたこともあり、老後も夫婦で旅行に行くくらいの余裕はできそうでした。
ところが……。
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夫の急逝で資金計画が水の泡に
ある日、自宅にいた理恵さんは「宏さんが職場で倒れて病院へ搬送された」との連絡を受けました。
急いで病院に駆けつけた理恵さんでしたが、時すでに遅し。宏さんはくも膜下出血によりこの世を去ってしまったのでした。
あまりに突然のことに、茫然自失の理恵さん。悲しみも癒えぬまま、宏さんの急逝にともなう諸々の手続きに東奔西走しました。
その後、夫の預金2,000万円と生命保険1,000万円を受け取った理恵さん。ある程度まとまった金額を受け取れたものの、住まいが賃貸だったこともあり、家賃をはじめ日々の生活費や税金などで資産はみるみる減っていきます。
また、生活の支えとなる遺族年金額は月あたり約13万円であることが判明。このままでは貯金が底をつくのも時間の問題となりそうです。
夫婦には、東京に住むひとり息子の慶太さん(24歳)がいますが、進路や就職先のことをめぐって理恵さんと折り合いが悪くなり、ここ最近はあまり会話もしていません。
「息子にも頼れないし、どうしよう……」
八方塞がりの理恵さんは、ある日SNSで流れてきた家計改善の動画を見て「このままじゃだめだ」と一念発起。FPへの相談を決意しました。