
血糖値は200を超えたら危険、という話を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。しかし、血糖値は測るタイミングによって差が出ることに注意が必要です。糖尿病専門医である大坂貴史氏の著書『血糖値は食べながら下げるのが正解』(KADOKAWA)より、52歳女性の事例をもとに糖尿病の診断基準となる「空腹時血糖値」について詳しくみていきましょう。
〈本記事の登場人物〉
横田みずほさん(52歳・女性)
1児の母。冷え性が悩み。夫の役職定年で自分の時間が減ったことで、日々のスイーツタイムが癒しの時間となっている。20代の頃から体重が変わっておらず、やせ型だからと安心していたが、健康診断でまさかの「再検査」に。
悩みは“冷え性”…健康診断でC判定がついた52歳女性
「きれいなラベンダー色で素敵ね。これにするわ!」
「ありがとうございます。ご自宅用でよろしいですか?」
「そう、私が使うの」
「では、こちらでお会計をお願いいたします」
会計を済ませ、マイバッグに入れて持ち帰った。買い物から帰ると、まずは“甘いもの”。お気に入りの籐のカゴに常備してある、洋菓子のアソートから3つをチョイス。今日はチョコレートがコーティングしてあるサクサクのパイと、定番のチョコチップクッキー、しっとり生地のバウムクーヘンに決めた。
たくさんは食べられないし、高級店のお菓子でもない。スーパーで買えるありきたりなものだが、この“ちょっと感”が贅沢な気持ちにさせてくれる。
息子は大学生になり、2年前から東京で一人暮らしをしている。子育てが一段落したところで、夫が役職定年を迎え、残業や接待などがなくなって定時に帰宅するようになった。そのため、夫の帰宅に合わせて、夕飯作りを開始しなくてはいけない。だから、気ままなスイーツタイムを今まで以上に幸せに感じるんだと思う。
これで太ってしまうならスイーツや間食を減らさなくてはいけないだろうが、幸いなことに、身長が154cmで体重は44kgとやせ型だ。多少は気になるシワが増えたが、50代の今も20代の頃と体重に大きな変化はなく、洋服のサイズも変わっていない。おかげで、友人たちからはうらやましがられる。
一方で、夫は変わってしまった。これまで会食で夜遅くに飲み食いをすることが多かったためか、若い頃と比べて20㎏近く増量している。
「夫のようにはなりたくない」
心の底からそう思っている。夕飯のおかずは肉野菜炒めなどが多い。ハンドルが着脱式になっているフライパンを使用しているため、 食卓に調理したフライパンのまま出すことができて便利だ。そこから、お互いに好きな量を取って食べている。
私が夫の分をよそうと「もうちょっと入れて!」とたびたび追加を要求されるので、面倒くさくなってフリースタイルにしている。私は肉が好きではないので、肉を外して野菜ばかりを皿によそった。
食事を終え、入浴後に今日購入したラベンダー色の例のやつを開封した。私は“冷え性”だ。「末端冷え性」というのか、特に手足が冷える。最近の気温の低下で足先がひどく冷えるので、もこもこして暖かそうな厚手の靴下を購入したのだ。これをはけば、録画してある“推し俳優”のドラマを冷えを気にせずに鑑賞できる。
しかし、私の体の問題は“冷え性”だけではなかった。健康診断で、血糖値が193㎎/dL、ヘモグロビンA1cが8.3%。 「糖代謝検査」の項目にC判定(要再検査)が付いたのだ。
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健康診断の当日。健診は午後からで、案内にあったとおり朝食を7時までに済ませて、指定時間にクリニックに向かった。問診票にも、朝食を食べたことを記載した。その日の朝食も、普段どおりにデニッシュとコーヒーだ。朝なんて食欲がないから、大した量は食べていない。
そして、いつものように身体測定やら血圧検査、採血、尿検査、大嫌いなバリウムを飲んでX線検査も受けた。そして、いつものようにB判定が1つ2つあっても、それ以外はA判定だと思っていた。しかし、「糖代謝検査」の判定欄には確かに「C」と書かれていた。
糖代謝ということは、「糖尿病」の疑いがあるということなのだろう。でも、糖尿病はたくさん食べたり、太っていたりする人がなる病気のはず。夫ならわかるけれど、私が「糖尿病」であるはずがない。症状だってないし。だから、この疑惑を晴らすために、私は「糖尿病外来」を訪れている。
受診は午前中。血液検査のために前日は21時までに夕食を済ませ、朝食は抜いてくるように言われたので、その指示に従った。そして最初に計測と血液検査、尿検査が行われた。
「横田みずほさん、診察室にお入りください」
「はい。失礼いたします」