公務員と聞くと、「安定している」「老後まで安泰」というイメージを持つ人も多いでしょう。実際、10年前までは公務員独自の年金制度があり“優遇されている”面もありました。しかし、制度が変わってこうした“公務員神話”は崩壊しつつあるのが実情です。元公務員の60代夫婦の事例をもとに、その理由と老後破綻危機を回避するポイントをみていきましょう。FP Office株式会社の山本志歩FPが解説します。

かつては“優遇”されていた…公務員の「年金制度」

日本の公的年金制度は「2階建て」を基本として、「3階建て」部分が付加される設計となっています。

1階部分は基礎年金、いわゆる「国民年金」と呼ばれる年金です。そして2階部分は会社員が加入する「厚生年金」となっていますが、公務員や私学の教職員はかつて、この2階部分が「共済年金」というものでした。この「共済年金」は民間企業のサラリーマンが加入する厚生年金とは別に運営されていたものです。

さらに、3階部分は一部の会社員の「企業年金」と、公務員全員が対象の「職域加算」となっていました。

しかし、平成27(2015)年10月から共済年金が厚生年金に一元化。これにより、公務員も厚生年金の加入者となっています。



[図表]被用者年金一元化前後の公的年金制度 出所:地方公務員共済組合連合会「1 公的年金制度」

一元化した理由は「共済年金の不公平性を正すため」といわれています。共済年金は厚生年金よりも保険料率が低かったため、優遇措置をなくしたのです。

また、年金制度の統一後は、被保険者の年齢制限が設けられました。共済年金は私立学校教職員共済を除き年齢の上限がなかったものの、厚生年金への統一後は70歳までとされています。

さらに、職域加算部分がなくなり「年金払い退職給付」が追加されました。「年金払い退職給付」とは、退職後に一定期間または生涯にわたって年金形式で受け取れるものです。

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定年後に悠々自適な老後を満喫していた60代の元公務員

中野さん(仮名・60歳)はつい先日、およそ38年間務めた市役所を定年退職しました。現役時代の年収は700万円で、受け取った退職金は2,000万円。65歳からの年金は月27万円を見込んでいます。

長いあいだ専業主婦として家庭を守ってくれた5歳年下の妻への感謝もあり、退職後は「妻と老後を楽しもう」と決意。資産はかねて計画していた夫婦での旅行や妻の習い事にあて、ときには自身の趣味を謳歌し、悠々自適な老後を満喫していました。

そんな生活を続けていれば、潤沢にあった貯金はみるみる減っていきます。

「そろそろ散財は控えなきゃな」

そう思っていた矢先、資産減に輪をかける出来事が起こりました。