
貯蔵がききにくい栄養素であるタンパク質は、毎食こまめに摂ることが大切です。肉や魚だけでなく、野菜からもタンパク質を摂取することができるといいます。糖尿病専門医である大坂貴史氏の著書『血糖値は食べながら下げるのが正解』(KADOKAWA)より、健康的な食生活のためのポイントについて詳しくみていきましょう。
〈本記事の登場人物〉
横田みずほさん(52歳・女性)
1児の母。冷え性が悩み。糖尿病の可能性があると診断され、食生活を改善していくことに。「サルコペニア肥満※」の疑いもあるため、いまよりもタンパク質を摂る必要があると告げられる。食が細いことで不安もあった横田さんだったが、医師が提案した食材は意外なものだった。
※サルコペニア肥満とは……加齢により筋肉量が減少し、筋力や身体能力が低下した状態の「サルコペニア」と、糖尿病をはじめ高血圧や脂質異常症などを悪化させる「肥満」が重なった状態のこと。
野菜でタンパク質の摂取量を底上げする
私は食が細いほうなので、タンパク質を増やせと言われても、少し不安になる。でも、先生は話を続けた。
「横田さんは野菜が好きですか?」
「野菜は好きです。皮をむいたり、切ったりという下処理が少し面倒ですが……」
「野菜好きと聞いて安心しました! 野菜にもタンパク質を含むものがあります」
「そうなんですか?」
「ブロッコリーや枝豆、グリーンピース、いんげんなどの豆類には、そこそこタンパク質が含まれています。アスパラガスやほうれん草にも含まれています。しかも、これらの野菜は、すでにゆでた状態で冷凍販売されているものがあります。こういった冷凍の野菜を活用して、手間をかけずにタンパク質を増やしていくのも手ですね」
「ブロッコリーにタンパク質が含まれているなんて、知らなかったです」
うんうんと、先生はうなずく。
「豆苗にもタンパク質が多いですね。キッチンバサミでカットして、みそ汁に加えるなどもできるといいですね」
「豆苗ですか。確かにそんなに火を加えなくても食べやすいですね」
「そうです! 鍋にも向きます。食べ終えたあとも、種の部分を水につけておくとまた生えてくるので、2度おいしいです。成長過程を見るのも、楽しいですよね」
「あはは、そうですね。育ててみようかしら……」
楽しそうに話す先生につられるように、私も思わず笑った。
「野菜には食物繊維も含まれるので、しっかり食べることで糖の吸収スピードを緩やかにもしてくれます。便秘の解消にも効果がありますよ!」
〈先生からの処方箋〉
ブロッコリー、枝豆、アスパラガス、ほうれん草はタンパク質が豊富な野菜。ちょこちょこプラスして
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ご飯を主食にするとヘルシーな献立になりやすい
「横田さんは、ご飯をどれくらい食べますか?」
「夕飯で茶碗に半分くらいでしょうか。昼はチャーハンで食べることもあります」
「先ほどもそうおっしゃっていましたね」
「はい」
「ご飯を主食にすることは問題ありません。むしろ、お茶碗1杯150gくらいは食べて大丈夫です。ただ、主食でアブラを摂取する頻度は減らせるといいですね」
「主食でアブラとは、どういうことでしょうか?」
「チャーハンもそうですし、デニッシュなども脂質が多いですね。食べてはいけないわけではありません。ただ、脂質を減らして“脂肪を増やしにくい主食”に置き換えると、筋肉が増えやすくなると思います」
「なるほど……」
「“ご飯の日”を増やすことですね。朝食にご飯が主食の日を作ったり、昼食のローテーションに冷凍の焼きおにぎりを加えるのもありかもしれません」
「ご飯って太りそうなイメージですが……?」
「確かに炭水化物が多いので、高カロリーになりやすいのです。でも、量を減らしたとしても、それをアブラで炒めたものであれば、さらに高カロリーになりますよね。食事全体に占める脂質の割合が増えると、摂取エネルギーが多くなりやすいんですよ」
「そうなんですね」
「それから、米にもタンパク質が含まれます」
「考えたこともなかったです」
「お茶碗1杯150gに対して、含まれるタンパク質は3.8gで多いとは言えません。それでも、1日に3食を食べれば、11gを確保できる計算です」
「パンよりもお米のほうがいいのでしょうか?」
「小麦にもタンパク質が含まれますが、米と同じようには食べにくいですね」
「というと?」
「食パンやロールパンをそのまま食べるならいいですが、バターやジャムを塗ってしまえば余計なカロリーや糖分の摂取につながります。あとは何を組み合わせるかによりますが、ウインナーやベーコンだと、さらに脂質が多くなります」
「確かにそうですね」
「その点、ご飯なら納豆や卵などと組み合わせれば、脂質は控えめな良質のタンパク質を上乗せしやすいです。かつお節やじゃこをのせても、タンパク質をプラスできますね」
「納豆やじゃこは好きなので、試してみます」
「ご飯だとみそ汁と組み合わせやすいのもメリットの1つです。野菜や海藻などの具は食物繊維が豊富なので、血糖値の上昇を緩やかにしてくれますし、みその原料は大豆ですから、タンパク質もプラスできます」
「だしをとるのが大変で……」
「市販の顆粒だしでいいと思いますし、具からうまみが出るので、だしを使わなくても意外とおいしくできますよ」
「やってみます!」
「米の“腹持ちのよさ”も魅力です。パンやうどんのように、いったんすりつぶされた小麦粉にしてから作られた食品と比べて、お米は細胞をそのまま食べます。そのため、消化・吸収に時間がかかって腹持ちがよいのです」
「腹持ちがよいことと、血糖値にどういう関係があるのですか?」
「特に昼食後の腹持ちが悪いと間食が欲しくなって、どうしても甘いものにつながりやすいですね。ここで甘いものを控えられたら、血糖値を抑えられます」
〈先生からの処方箋〉
ご飯を主食にすれば組み合わせるおかずの脂質を控えめにしやすい!
大坂 貴史
糖尿病専門医・指導医
総合内科専門医