自民党総裁選で討論から逃げる小泉進次郎は「戦う一族」小泉家で異質な存在/倉山満

―[言論ストロングスタイル]―

自民党総裁選(10月4日投開票)も佳境を迎え、他候補をリードする小泉進次郎が戦後最年少で総理大臣就任の可能性が高まっている。しかし、討論を避け守りに徹するその姿勢は、政治家としての資質に疑問が残る。本来、小泉一族は代々困難に挑み続けてきた「戦う家系」だが、「進次郎氏だけは異質だ」と憲政史研究家の倉山満氏は語る(以下、倉山満氏による寄稿)。

◆小泉進次郎の資質は一言、物足りない

 先週号の本欄で、「総裁選の見どころは小泉進次郎氏がボロを出さないか否かだけ」と書いた。本項執筆時点で、大きな失速はしていない。TikTokを始めたら大荒れとなったが、まだ大勢に影響はない。

 永田町では、進次郎盤石の布陣とみられている。総裁選出馬の推薦人は、各派・衆参・老壮青・男女をバランスよく揃える。後見人が菅義偉元首相で、旧岸田派の木原誠二氏、麻生派の河野太郎氏ら幹部がつく。前回のライバルの加藤勝信財務大臣が選対本部長で、他に旧谷垣グループ領袖の遠藤利明氏に、野田聖子氏。出陣式には92人が集結。他の四候補が20~30人なので、圧倒的な勢いだ。党員からの支持も悪くない。

 さて、その進次郎氏。戦後最年少、そして伊藤博文に次ぐ史上2位の若さの総理大臣の座が近づいている。では、その資質はどうか。

 一言、物足りない。

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◆小泉家は強敵と戦う一族。進次郎氏は一人だけ明らかに異質だ

 あまり知られていないが、小泉家は強敵と戦う一族である。進次郎氏は四世議員だが、これまでの三人と明らかに異質だ。

 初代は、小泉又次郎。あだ名は、又さん。横須賀のとび職の親分で、堅気なのに背中に入れ墨をして、ヤクザと抗争していた。

 自由民権運動に身を投じ、政界へ。市議、県議から、衆議院議員へ。政界では一貫して、改進党~憲政会~民政党の反権力の政党に身を置く。衆議院副議長や党幹事長、そして民政党が政権を獲ると逓信大臣。「入れ墨大臣」と親しまれた。本人は「大臣になるなんて恥だ」とボヤく。

 又さんの娘婿が、純也。駆け落ちしたが、又さんに「代議士になるなら許す」と鹿児島県から立候補して当選。親子二人して、悪名高い大政翼賛会に抵抗していた。

 戦後、純也は野党改進党に入党、父の地盤の横須賀から立候補。自民党でも常に非主流派の地位にいた。

 特筆すべきは防衛庁長官時代。在任中に三矢事件が起きた。自衛隊が有事にどうするかを研究していたら、野党をマスコミが煽り「戦争の準備をしている」と集中砲火。(当時)佐藤栄作首相が防戦一方となる中、小泉長官は自衛隊を守り抜いた。