診断方法と受診について
次に、受診する場合の流れについて説明します。
いつ受診すべきか
基本的にはセルフケアでの改善が期待できますが、以下のような症状が見られる場合は、早めに医療機関(皮膚科)を受診しましょう。
- 毎日の洗浄やケアを続けても、臭いが全く改善しない
- 強いかゆみ、水ぶくれ、じゅくじゅくした皮むけがある(水虫の可能性)
- 足の裏に、小さな穴がたくさんあいている(点状角質融解症の可能性)
- 臭いが異常に強く、日常生活に支障が出ている
- 糖尿病などの持病があり、足の皮膚トラブルが心配な場合
診断の流れ
多くの場合、特別な検査は不要で、医師による問診と視診(目で見て観察すること)で診断が進みます。
1. 問診で確認すること
医師は、診断の手がかりを得るために、以下のような質問をします。
- いつから臭いが気になり始めましたか?
- どのような時に特に臭いが強いと感じますか?
- 普段どのような靴や靴下を履いていますか?
- 1日にどのくらいの時間、靴を履いていますか?
- かゆみや皮むけなど、他の症状はありますか?
- これまでに水虫と診断されたことはありますか?
- 現在治療中の病気はありますか?
問診でスムーズに答えられるよう、ご自身の状況を整理しておくと良いでしょう。
2. 足の診察
次に、医師が足の状態を直接観察します。指の間、爪の状態、かかとの角質の厚さ、皮むけや水ぶくれの有無などを確認します。
3. 代表的な検査例
かゆみや皮むけがひどい場合など、水虫が疑われる際には、「顕微鏡検査」を行うことがあります。これは、足の皮膚の角質を少量こすり取り、顕微鏡で水虫の原因となる白癬菌(はくせんきん)がいるかどうかを確認する簡単な検査です。医師が必要と判断した場合に行われます。
受診時の準備
- 清潔な状態で受診する:ただし、受診直前に足を洗いすぎると、正しい診断の妨げになることがあるため、普段通りの状態で受診しましょう。
- 普段履いている靴や靴下を伝える:可能であれば、よく履く靴を持参するのも良いでしょう。
- 水虫の薬は使用しない:水虫を疑った場合、あらかじめ市販薬や家族の水虫の薬を使用してみたくなりますが、薬を使用すると「顕微鏡検査」をしても白癬菌が見つかりにくくなってしまいます。皮膚科に受診する2週間ほど前から水虫の薬の使用は中止しましょう。
- 症状のメモ:いつから、どんな時に、どのくらい気になるか、試したセルフケアなどをメモしておくと、医師に的確に伝えられます。
受診すべき診療科
足の臭いや関連する皮膚トラブルの専門は皮膚科です。どこに皮膚科があるかわからない場合は、お住まいの市区町村のウェブサイトや保健所の案内で、地域の医療機関を探すことができます。
足の臭いの治療法
治療方針の決定
医師は、問診や診察の結果から、臭いの原因が何かを判断します。単なる生理的な臭いなのか、水虫などの病気が隠れているのかによって、治療方針は異なります。生活習慣の指導が中心になることもあれば、お薬が処方されることもあります。患者さん一人一人のライフスタイルに合わせて、無理なく続けられる方法を一緒に考えていきます。
薬物療法
- 外用抗真菌薬:水虫が原因の場合に処方されます。かゆみが治まっても、菌が残っていることがあるため、医師の指示通りに塗り続けることが重要です。
- 制汗剤:汗の量が非常に多い「足蹠多汗症(そくせきたかんしょう)」と診断された場合、塩化アルミニウム液などの医療用制汗剤が処方(保険適応ではありません)されることがあります。
- 抗菌薬:まれに、細菌感染によって臭いが強くなっている場合(点状角質融解症など)は、抗菌薬の塗り薬が処方されます。
注意:自己判断で市販薬を使い続けると、症状が悪化したり、かぶれを起こしたりすることがあります。必ず医師の診断を受けてから、適切な薬を使用しましょう。
非薬物療法
- 角質ケア:皮膚科では、硬くなった角質を柔らかくする尿素配合のクリームなどが処方されることがあります。
- 爪のケア指導:爪の切り方や、爪の間の汚れを取る方法など、専門的な指導を受けられる場合があります。
注意:自分で角質を削りすぎると、皮膚を傷つけてしまう危険があります。特に糖尿病などの方は、自己処理は避け、医師に相談してください。
生活習慣による管理
治療の基本は、日々の生活習慣の見直しです。
- 正しい足の洗い方:殺菌成分配合の石鹸をよく泡立て、指の間や爪の周りまで丁寧に洗います。
- しっかり乾かす:洗った後は、清潔なタオルで水分を完全に拭き取ります。特に指の間は湿気が残りやすいので注意が必要です。
- 靴のローテーション:同じ靴を毎日履かず、2〜3足を交互に履き回し、履かない靴は風通しの良い場所でしっかり乾かします。
治療期間と予後
水虫などの病気が原因であれば、数か月単位の治療が必要になることがあります。一方、生活習慣が主な原因の場合は、セルフケアを実践することで、数週間程度で臭いの改善が期待できます。根気強くケアを続けることが、良好な予後につながります。

