「子どもが熱性けいれんを起こしたら、5分間は様子を見るようにしましょう」
そう話すのは、東京都立神経病院 神経小児科部長の福田光成先生。
「子どもの急変した様子に時間の経過を長く感じることも多いでしょう。びっくりして周囲がパニック状態になってしまうものなので、難しいかもしれませんができれば携帯などを見て時間を確認できるといいですね」(福田光成先生 以下同)
発作が起きたら具体的に何をすればいい?
福田先生と公立学校共済組合四国中央病院小児科の日野ひとみ先生が、患者向け説明用リーフレット『小児科診療・2014年・11号』内で作成した「熱性けいれんマニュアル」によると、発作が起きてからの5分間にするべき対応として推奨される項目は以下の通り。あわてない、5分間の観察が大切だという。
・時間を見る(可能なら時計などで時間を確認)
・気道を確保するために子どもの体を横にする(吐物に注意)
・口のなかにものは入れない
・熱があるか確認する(触る、余裕があれば体温計を使用)
・けいれんの様子を観察する(目の向き・手足の動きに左右差はあるか、ガクガクしているのか、つっぱっているのか)
「このとき、お子さんが舌を噛み切ってしまうことを懸念して、口のなかに手を入れようとする保護者の方がいます。通常、けいれん中の歯を食いしばった状態では手は入りにくいものですが、もし入ると強く噛まれてしまう危険があるので入れないでください。発作で舌を噛んで少し出血することもありますが噛みちぎることはありません。ただし、嘔吐して口のなかに吐物が詰まっている場合は、呼吸を阻害しないようにガーゼなどを指に巻いて口のなかからかき出してあげてください」
また発作が収まったら、顔色や呼吸が正常かどうか、子どもの様子に異常がないか観察しよう。発作の後はそのまま寝てしまうことが多いそうだ。
余裕があれば、発作の様子を携帯の動画で記録しておくといい。どのような症状であったかは、後に受診する際に治療の必要のない良性の単純型か否かなどを医師が確認する参考にもなるという。熱性けいれんの多くが治療のいらない単純型だが、重篤な疾患が潜むケースがまれにあるため、念のため特に初めてのけいれんのときには受診をした方がいいそうだ。
「けいれんが5分以内に収まり、その後も異常が見られない場合は、慌てず翌日に受診するので良いと思います。たとえば、とても寒い時期の深夜などは無理に移動しないで、自宅で暖かくして休ませてあげた方がいいと思います」
5分以上続くようなら速やかに救急車を呼ぼう
けいれんが5分以上続く場合は、緊急搬送してもらい治療を受ける必要がある。けいれんは長く続くと止まりにくくなり、30分以上続くと、脳障害や後天性てんかんといった後遺症が残ることもある。5分以上けいれんが続く場合は救急車を呼び、なるべく近くの病院に連れていこう。
複雑型である場合に見られる症状は
てんかん、もしくは髄膜炎や脳炎による発作である場合、どのような症状が見られるのだろうか?
「体を硬直させてつっぱったり、ガクガクと震わせるけいれんが、全身ではなく左右非対称で起こるときや部分的であるとき、熱が高くない状態で発作を起こした場合は良性の熱性けいれんでない可能性もあります。そういった症状は医師に相談して必要に応じて検査を受けましょう」
もし熱性けいれんだけでなく、てんかんなどの神経系疾患になった場合、専門の医療機関で診察を受けたいと思う方も多いだろう。東京都立神経病院は、日本で唯一の神経系専門の病院だが、外来はないそうだ。子どもを受診させるにはどうしたらいいのだろうか。
「東京都立神経病院は外来やERがありません。都立小児総合医療センターの神経内科の先生方と一緒に我々神経病院のドクターも診療しています。熱性けいれんに限らず、発達の遅れやてんかんなどのけいれん性疾患などでご心配な場合には、まず都立小児総合医療センターの専門外来を訪ねてください」
「紹介状をお持ちになっての受診をお願いしていますので、かかりつけの先生に書いていただきましょう。大学病院や大きな総合病院もそうですが、紹介状なしで直接外来に来られると、特別な初診料がかかってしまいます」とのこと。熱性けいれんであっても経過が思わしくなく心配な場合には、専門の医療機関で診察や検査を受けておくと安心だ。
(取材・文:石水典子 編集:ノオト)