そもそもレジ袋が有料化したのはなぜ?
レジ袋有料化は、一人ひとりが環境問題に目を向けるための施策です。まずは具体的な内容を見ていきましょう。
環境問題改善のきっかけになる
地球温暖化や海洋汚染などの環境問題に対しては、以前から世界的に取り組みが行われています。日本でも、環境問題に取り組む一環として「レジ袋有料化」が始まりました。
もちろん、レジ袋を有料にすることで環境問題がすぐ解決するわけではありません。主な目的は「国民の意識を変えること」です。
マイバッグの持参は以前から推奨されていることですが、より多くの国民が環境問題に興味を持つためのきっかけづくりとして有料化が始まっています。
「これまで無意識にレジ袋をもらっていた」という人も、なぜ有料化になったのかを調べることでさまざまな地球の問題に気づけるはずです。
脱石油、脱プラスチック
プラスチックの原料は「石油」です。環境に影響を与えるとされる石油やプラスチックを使わず、エコな材質に切り替えていくことが望まれています。
プラスチックは、海や地中でもなかなか分解されません。海に漂うプラスチックは年々増えており、世界で年間800万トンともいわれる量が海に流出しています。
動物がエサと間違ったり体に絡みついたりと、生態系に大きな影響を与える存在です。
このような環境問題には世界で一丸となって取り組む必要があり、プラスチックの再生や再利用を推進していく構えです。
経済産業省|海洋生分解性プラスチック開発・導入普及ロードマップ
有料化の対象範囲をチェック
レジ袋は、すべてが有料化したわけではありません。対象となる条件はどのようなものか確認しておきましょう。
対象となる事業者
レジ袋有料化の対象となるのは、商品を販売する「小売業」を営む事業者です。
例えば、食品などを販売するスーパーやコンビニ、服飾品や電化製品を販売する店舗なども含まれます。
ホテル内の店舗や観光目的の牧場に併設されている店舗でも、レジ袋は有料です。
ただし、学生が文化祭で運営する模擬店や個人が不要なものを譲る目的のフリーマーケットなど、事業目的ではない場合は有料化の義務はありません。
対象となるレジ袋
対象となるレジ袋には、基準が設けられています。まず、持ち手がありプラスチック製の、商品を持ち帰るための特性を備えた袋であることが条件です。
条件を満たしたものに関しては、大きさや色・形などは問いません。一般的に小売店などで利用されるプラスチック製の袋はほぼ対象と考えてよいでしょう。
繰り返し利用することを想定せず、使い捨てで使われるレジ袋が有料になります。
ただし、素材が同じレジ袋でも事業目的以外など用途が異なると有料にはなりません。
対象外のレジ袋もある
紙や布の袋、持ち手がないものに関しては有料化の対象外です。
また、プラスチック製のものであっても「厚みが50マイクロメートル以上の袋」「海洋生分解性プラスチックを100%使用している袋」「バイオマス原料25%以上の袋」は有料化の義務はありません。
厚手の袋は繰り返し利用が可能であり、海洋生分解性プラスチックは海に住む微生物が分解できることが理由です。
バイオマス原料は植物性の原料ですが、二酸化炭素の量を変えない素材であることから温暖化防止につながります。
なお、対象外とされている袋でも、有料化するかは事業者にゆだねられています。対象外のレジ袋を無料で提供する義務はありません。
経済産業省|プラスチック製買物袋有料化 2020年7月1日スタート
レジ袋有料化のメリット・デメリット
レジ袋を有料にすると、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。日本政府のねらいや、一般人に関係するデメリットなどを解説します。
環境に対する意識が上がる
「袋を付けてもらうのが当たり前」という認識になってしまうとプラスチック削減ができません。無料の場合は、深く考えず「とりあえずもらっておく」人も多いでしょう。
レジ袋を有料にすることで、購入者側は「今本当に袋が必要なのか」を考える機会をつくれます。多くのレジ袋が1円単位の負担とはいえ「なんとなく」レジ袋をもらう人は少なくなるはずです。
レジ袋有料化につながるプラスチックの削減を通して、一人ひとりの意識を変えるきっかけとなるのはメリットといえるでしょう。
手軽に使えるごみ袋がなくなる
今までもらったレジ袋を取っておき、ごみ袋として活用していた場合は別途袋を購入する必要があります。
環境問題の視点では、このようなケースはレジ袋をもらわなくなってもごみ袋を有料で購入することになり、プラスチックごみの削減にはつながりにくいです。
有料化により、気にせず使えるごみ袋がなくなってしまうのはデメリットといえるでしょう。
子どもの未来にも関わる?海外のエコ事情
海外では、日本に先駆けてレジ袋有料化や使用禁止の政策が行われています。
それぞれ政策の内容は異なりますが、世界的に脱プラスチックの流れは加速しているのです。主な国々の政策や状況を紹介しましょう。
以下に挙げる国以外に、韓国やベトナムなどのアジア諸国でもレジ袋有料化や課税は開始されています。
早くから実施されている中国
中国では、2008年6月よりレジ袋の有料化政策が行われています。
日本とは異なり、厚みが25マイクロメートル以下の袋は製造や使用は禁止です。厚手の袋に限り、有料で販売されています。
人口が多い中国では、早くからごみ問題がクローズアップされてきました。毎日30億枚ものプラスチック製袋が消費されるともいわれています。
レジ袋の有料化により削減に成功した中国ですが、問題もあるようです。
政策が開始された当初は多くの店舗で有料化が行われていましたが、小売店など一部の店舗では無料で袋を配布するなど有料化が徹底されていないケースも見られます。
州ごとに定められているアメリカ
アメリカでは、国全体でレジ袋有料化や禁止に関する政策は行われていません。しかし、州ごとに独自の条例が定められています。
例えば、サンフランシスコでは2007年から薄手のプラスチック製レジ袋の使用が禁止されています。再生紙を含む紙袋または、再利用が可能な厚手のプラスチック製袋のみ配布が可能です。
2015年にはハワイのオアフ島でレジ袋が禁止となりました。原則、紙袋や再利用が可能な布製袋などが使われています。
2020年10月には、ニューヨーク州でもレジ袋禁止条例が開始されています。州により内容は変わりますが、違反回数ごとに罰金を課す方式を採用しています。
削減方法がさまざまなヨーロッパ
ヨーロッパでは2015年にEUでの取り決めにより、レジ袋削減に向けての目標が通達されています。
定められた期間までに「1人当たりのレジ袋使用数を削減する」目標と、「すべてのレジ袋を有料化する」目標の2種類です。
なお、フランスは2017年、イギリスは2015年にレジ袋有料化や禁止の政策が行われています。
フランスでは、薄手のレジ袋が全面的に使用禁止です。原料や用途により一部認められていますが、違反した場合は罰金が科されます。
店舗によってはレジ袋の配布を取りやめ、再利用可能な袋のみを取り扱っている場所も出てきています。
レジ袋の使用削減目指す改正指令が発効(欧州、EU) | ビジネス短信 - ジェトロ
まとめ
日本では2020年7月からレジ袋有料化の政策が開始されています。
海外では早くからプラスチックごみ削減に向けて取り組んでいる国が多く、日本でも国民の意識を変えるため始まった政策です。
対象の袋は限定されており、事業用に限られます。不便はありますが、できるだけ自然に影響を与えにくい材質へシフトしていくことが大切です。
レジ袋のことだけでなく、普段の生活を変えるためにも一度環境問題について考えてみましょう。